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巻き込まれ令嬢の相談室  作者: 水田侑子
2/7

相談2 想定外の想像以上

「セレスティア・モース嬢、私とクリフもお茶会に参加していいかい?」


(今一番会いたくない人が来てしまった)


不敬であるとは思いつつもセレスティアはそう思わずにはいられなかった。






セレスティアが父であるアレックスに相談をした3日後、学園長に呼び出され噂の詳細について改めて聞かれた。とは言ってもあまり詳細は知らず、アレックスに話した内容とほとんど同じことを学園長にも話すことになってしまった。

学園長は悩んだ様子を見せたのち、脇に控えていた秘書に何かを耳打ちするとセレスティアに今後も何か噂に進展があったり急激に広まっているような様子が見られたら報告してほしいと依頼をした。

学園での時間をほとんど温室で過ごしているセレスティアには難しいと思ったが、学園長のお願いを断ることもできないと考えしぶしぶ了承し、念のため会話の録音ができる道具をもらった。


「今日または明日には陛下から殿下にお話があると思う。…もしかしたらそのあとにセレスティア、あなたのもとを訪れるかもしれない。そのときもどんな話があったかをぜひ聞かせてほしい」


勘弁してほしい、そのときセレスティアは心の中で息を吐いた。




「…ええ、もちろんでございます。殿下とダスペル様のお好みのお茶があるとよいのですが」


学園長とのやりとりを思い出していたために会話に少し変な間が生じてしまったが、そのことを2人が気にしている様子はない。

温室の中央にある椅子と机がある場所に2人を案内し、お茶の用意をするからと少し待っていてもらうことにした。案内している最中にどんなお茶が好きか聞いたが、2人ともセレスティアが飲むものと同じでよいというのでとても困ったが、もうそういったからには責任は取らない!と思い本当にセレスティア自身が今飲みたいものを用意することにした。


「お待たせいたしました。ジャスミンのお茶をご用意いたしましたが、よろしかったでしょうか?」


「うん、私もクリフも大丈夫だよ。ね、クリフ」


「はい。モース嬢が用意されたお茶でしたらなんでもおいしいことでしょう」


(それじゃあ2人とも飲めなくても飲むってこと?!)


一気にセレスティアの緊張感は高まるが、それを表に出さないようレイとクリフォードのお茶を用意する。まずは恐らく毒見の意味もこもっているのだろう、クリフォードがお茶に口をつけた。その様子を見届けたレイはそれに続いて飲み始めた。


「うん。実はジャスミンのお茶は初めて飲んだのだけど、おいしいねクリフ」


「はい。やはり予想通りおいしゅうございます」


2人の反応にほっとしたところでセレスティアも自身の分のお茶をカップ注ぐ。頻繁にここでお茶会をするテオは甘いものをあまり好まないので茶菓子を常備していなかったことを後悔する。

まさか本当にレイがセレスティアのもとにやってくるだなんて思ってもいなかったのだ。


「では、本題に入ってもよいだろうか?あなたは聡明だから私がやってきた時点で何の話かは想像がついているだろうが…最近噂になっているらしい私とペイトリアン嬢、タミガット嬢のことについてあなたに相談させてほしい」


来た。出た。しかも直球で。勘弁してくれ。そういいたくなる気持ちをぐっとこらえて淑女の微笑みでレイに対応する。我慢だ。我慢のときなのだセレスティア。


「私でよろしければお話をお伺いすることはできますが…お役に立てるかは分かりません」


「大丈夫。あなたが話を聞いてくれるだけで私の中ではすっきりとするものだよ。幼い時から舞踏会で何度か挨拶は交わしたことはあるけれどこうやってきちんと話をするのは初めてだろう?だから少し舞い上がっているが許してほしい」


セレスティアは入学前、アレックスからレイ殿下は優しい言葉と甘い言葉を相手に投げかけ、それに対してどんな反応をするかで相手を見極めている、という話を聞いたことがあったため、なるほどこれが聞いていたやつか…と感心をしていた。


「承知いたしました。ですが、ここでお話していただいたことは内容によっては学園長や私の父、陛下のお耳にも入るかもしれませんがよろしいでしょうか」


「かまわないよ。正直言って、それが目的だったりするんだ。父上は私が言っても大して気に留めないことでもモース嬢が報告したことなら耳を傾けるらしいからね。全く、父上があなたのことを気に入りすぎて困ったものだよ。…まあ、その話は置いておくとして、とにかくその点については問題ないから大丈夫」


その後のレイの話をまとめるとこうだ。噂通りレイは現在カレンに言い寄られている。尋常ではないほど激しく。テオの時と同じように待ち伏せは当たり前、話したこともないようなレイの好みなどを知っておりお茶をしないかと誘われる。学園の休日に騎士団の訓練に同行するために城から出るとそこにはカレンがいる。付きまとわれているだけではなく、少しでもレイと親しそうにしている令嬢を見かけると「私の殿下に近づくな」と攻撃をするのだ。そのことを聞きつけたレイがカレンのもとを訪れ「ほかの令嬢に危害を加えるな」と言えば「ほかの令嬢のことなんか気にしなくてもあなたしか目にはいらない」と都合のいいように解釈され、あれよあれよという間にカレン自身の手で噂が広げられていくのだという。


「もうね、私がなにか手を尽くそうとすればするほど手に負えなくなっていくんだよ。時には私ではなくクリフが注意をしたこともあったんだけど、そうするとクリフもペイトリアン嬢に気があるということになってしまうらしい。困ったものだ」


そう言うレイは苦笑いをしているが目はひとかけらも笑っていない。相当参っている様子がうかがえる。


「ペイトリアン嬢にここへ来る前に何か言われませんでしたか?」


「いや、実はテオが彼女に絡まれている隙をみてここへ来たんだ」


なるほど。それならば大丈夫だろうがセレスティアは心の中でテオに謝罪をした。今度テオの文句をたくさん聞いてあげよう。




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