1 プロローグ
「このたび棋士を引退することにしました」
会見の場でボクが言ったんだよね
「7冠でありながら無責任ではないのですか?」
集まった取材陣から速攻で非難されたんだよね
さすが将棋番の記者なんだよね
将棋への愛が相変わらずハンバないんだよね
・・・その情熱を将棋にぶつけたら今からでも棋士になれるんではないかと思うのはボクだけじゃないんだよね
でもね
そのうち寝癖が酷い天才棋士やら
駒が高速移動する棋士やら
中学生なのに一気に7段まで駆けあがる棋士とかが出てくるんだよね?
そんな天災、もとい天才相手してられないんだよね?
とっとと退場するのが最善手だと思うボクは悪くないんだよね
これが本当の『逃げるのは恥だが役に立つ』なんだよね
人間、普通の会社に就職するのが一番なんだよね
小学生で奨励会に入って4段になって9年間、将棋界はとんでもない世界だと実感したんだよね
なにせ常に上を目指さないと落ちていく一方だというアリ地獄同然なんだよね
TVや雑誌で見ている限り華やかだけどやってみるとマジで地獄なんだよね
あのさわやかなコメントに騙されているんだよね
いや本当の話なんだよね
・・・知らないってことは幸せなんだよね
それにあのチート、いや天才達の近くにいたら絶対に記念対局にひっぱり出されるんだよね
本当の本当に絶対に!なんだよね
リアルな生活を詰め将棋のように追い込むなといいたいんだよね
そして出たら最後、ボコボコにされるんだよね
そんな不吉な未来しか想像できないから逃げるんだよね
そんなわけでボクはここで引退させてもらうんだよね
・・・物語はこの16年前から始まるんだよね
次話から本当の
将棋をしよう!
なんだよね




