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ある朝トイレに入ったら便器がきれいに消えていた  作者: 烏川 ハル


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2/2

後編

   

「すぐ返すから、バレないと思ったのになあ。まさか、返却現場を見られてしまうとは……」

 ハハハと軽やかに笑う彼に対して、俺は叫んでしまう。

「うちのトイレ狭いんだから、男二人も入れねーよ! 用が済んだら、早く出てけ!」

 本当は、もっと他にツッコミを入れるべき点があったのだろう。

 例えば、男が着ているのは、体にフィットしすぎたピチピチの銀色スーツ。まるで、昭和のSF漫画に出てくる未来人か宇宙人の姿だった。

 今だと、むしろ「コスプレ?」と言われそうな格好だが……。

「ああ、そうですよね。ちょっとトイレ借りただけなんですけど……。いや本当に、少しの時間だけでしたから。気にしないでくださいね。それじゃ!」

 全身銀色の男は、相変わらず軽い感じで挨拶。

 再びのザーッという異音と、一瞬の景色の歪み。それらを伴って、男は姿を消してしまう。

「昔のSF映画で見た転送装置って、こんな感じだったっけ……」

 独り言を口にした俺は、同時に、尿意をもよおしていたことも思い出すのだった。



 その後。

 あの銀色スーツの不審者とは、二度と遭遇していない。

 また、この話を誰かに口外することもなかった。どうせ信じてもらえないだろう、と思ったからだ。


 ただ、トイレに入る時――特に漏れそうな時は――、つい身構えてしまう。便器がなかったらどうしよう、と。

 そして、ふと思うのだった。

 未来人だか宇宙人だか知らないが、彼らは、俺たち人間の習慣を微妙に誤解していたらしい、と。

 彼が口にした「ちょっとトイレ借りる」という言葉は、そういう意味ではないのに、と。




(「ある朝トイレに入ったら便器がきれいに消えていた」完)

   

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