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こじらせ騎士と王子と灰色の魔導士  作者: 有沢真尋
第十一章 友達とか家族とか(前編)

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再会

 魔王(生存)と魔王を殺した魔導士(生まれ変わり)。


 偶然知り合い、行動を共にしている。魔王ルーク・シルヴァには現在、人間に対する敵意はない。クロノスは転生時にステファノから引き継いだ記憶に混乱があり、実姉に相談しに行くところ。

 かいつまんで話はしたものの、ラナンとヴァレリー、ロザリアの反応はどうにもぱっとしない。ヴァレリーに至っては「すっ飛ばした内容に何か重要な事実でも?」と明らかに疑ってかかっていたが、それもクロノスの体調不良により追求はひとまず棚上げ。

 行き先が同じだというのなら、ひとまず目的地まで行きましょう、という結論に至る。 


 よれよれのクロノスを「お姫様抱っこ」もしくは「背負う」とルーク・シルヴァが言い出し、クロノスが全力で拒否しているうちに、ヴァレリーが面倒くさそうに言った。


「こっちは進みたいんですけど、ステファノさんと魔王を無視して進むわけにはいかないです。おとなしく運ばれてくれますか? 通常なら俺が運ぶって言いたいところなんですけど、ステファノおじさんが足手まといになって、何かあったときにうちの二人を守りきれないと困るので。そっちはそっちの二人でどうにかしてください。今の段階では、魔王も信頼して良いかわからないし」


(もう置いて行って欲しい)


 反論しようにも力はなく、諦めてクロノスは荷物のようにルーク・シルヴァに背負われることを了承する運びとなった。

 そこで、ヴァレリーとルーク・シルヴァが話し合い、街道を歩いて進むことになる。

 理由は、ヴァレリーの飛翔術では連れの二人を運ぶことができないが、「何をするかわからない」魔王から目を離したくないし、里に先回りされるのは心理的な抵抗が、という。

 ルーク・シルヴァが「それもそうだな」と謎の寛容さで受け入れて、結局五人で徒歩で里へ向かうことになった。

 勝手にしてくれ、とクロノスはルーク・シルヴァの背でふて寝しているうちに、本格的に寝落ちた。


 * * *


 目を覚ましたら、かなり久しぶりに自分の部屋にいた。

 久しぶりどころではない。

 二十年、三十年という間が空いての帰還。木材むき出しの天井は傾斜がついていて、壁は丸太を重ねたような作り。簡素なベッドに、擦り切れた赤系の絨毯。隅に衣装箪笥があるだけの、狭い部屋。

 目の奥が痛くなるほどの、既視感。


(俺の、ステファノの部屋だ)


 窓からの光はすでに、夕暮れ時が近いように思う。そんな時間にこの部屋で寝ていたことなど記憶に無い。

 いつもは、暮れるまで外にいた。病気でもなければ昼間にベッドで寝ていることなんてなかったが、病気であれば人目につくところに置いておかれた。すなわち工房の中。うるさくて寝られたものではないし、ときどき何かが爆発して危険もあったというのに。

 人の出入りが多くて騒々しい家。

 耳をすませば、人の話し声や生活音が――

 音を追いかけようとしたそのとき、ぱたぱたという軽い足音がいくつも近づいてくるのが聞こえた。子ども、それも複数とあたりをつけたところで、どかん、とドアが開かれる。


 三人ばかり、戸口に折り重なるように小さな人影が現れていた。

 ベッドから起き上がった姿勢のまま固まっていたクロノスをよそに、一人が「起きてるー!!」と声を上げた。


「伝説の魔導士、起きてる」「ふつうのひとに見える」「ふつうのおじさん」「おにいちゃん?」「このひとも工房のひとなの?」「王子様だって」「どのへんが」


 三人の後ろからさらに三、四人の顔が見える。わちゃわちゃとひとかたまりになって前列が押し出され、部屋の中へと数人が侵入してきた。騒ぎは遠慮なく、うるさい。


(王子様に見えないおじさんだけど、気持ちはお兄ちゃんで伝説の魔導士……。いや、ステファノの年齢を加算したらおじさんだ。正しい)


 危険はないと知っているのか、子どもたちはだんだんにじり寄って、円になり距離を詰めてくる。

 どうしたものかと思いながら、クロノスは「こんにちは」と声をかけた。

 途端、子どもたちの動きが止まる。


(なんだ? なにに怯えてどうしてそういう反応に? 俺が何をした、だいたいこの子どもたちはなんなんだ)


 小さな生き物のことはわからない、と思ったとき、戸口にようやく大人の人影。

 そちらを見て、クロノスは固まってしまう。なかなか言葉が出ない。

 声をかけてきたのは相手からだった。


「うちの孫だよ。どうしても見たいっていうから、別に取って食われはしないだろうよって言ったら急いで出て行きやがった。起きてたんだね。ステ……、クロノス殿下なんだっけ」


 ぶっきらぼうな調子で呼ばれた名前。耳に流れ込んできた声に、全身が反応している。懐かしい、と。

 クロノスは震える声で応えた。


 姉さん、と。


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