第二章 『優冴VS転校生 推理勝負!』①
第二章 『優冴VS転校生 推理勝負!』
先ずは、学級の発表と担任の紹介。所属学級が決まれば、学級目標を決めて、係や掃除当番、給食当番を決める。四年生以上はクラブ活動、高学年は委員会も決める。学校行事は、“一年生を迎える会”と“遠足”がある。さらに、これらと並行して通常の授業も行われるのだから、とかく四月は忙しい。そのため、クラブ活動の初顔合わせが行われたのは、ゴールデンウイークもすぎた五月十日のことだった。
活動内容によってクラブは、グラウンドや理科室、家庭科室など、場所が様ざまに分かれる。その中でミステリークラブには、颯太の教室でもある四年二組が割り当てられていた。
五時間目終了後、教室最後尾の自分の席でひとり退屈そうに待つ颯太。そこに朱音が入ってきた。隣には、六年生でも彼女と同じクラスになった優冴もいる。
二人の姿を目に留めた颯太は、茶化すように言った。
「お、両人揃ってのお出ましだな。でも、いくらクラスが別になってしまったからって、充兄を置いてくるなんて、酷いぞ。朱音姉」
ところが、朱音は何の返事もしない。いや、それどころか、何故だか怒っている様子でさえある。
心当たりのない颯太は大いに慌てた。混乱する脳内であれこれ理由を考えているうちに、彼女は机の前までやってきてしまった。
「ど、どうしたの?」
戸惑いを露わに問う颯太の目の前に、朱音は一枚の紙を突き出した。
「これ、何よ?」
「ん?」
ぶら下がる紙に颯太が目を凝らす。そこには、“ミステリークラブ入部試験”とのタイトルが銘打たれていた。
「いったい、何のつもりなの?」
紙の向こう側で眼光を鋭くする朱音に、颯太はさらりと答えた。
「何のつもり、って、見てのとおりの入部試験だよ。全十問の推理テストで、全問正解者だけがミステリークラブのメンバーになれる。もちろん、俺たちは無試験でメンバー決定だ。問題ある?」
「大ありよ。入りたいと思う人が誰でも入れるのがクラブ活動なの。それなのに、希望者にこんな難しい推理テストをさせるなんて。私なんか一問も解けなかったのよ」
「それは朱音姉が馬鹿なだけだろ? 優冴兄は全問正解したぞ。十五分で」
「じ、十五分? 本当なの? 優冴君」
驚きで朱音が目を見開く。
「うん、……まぁ」
優冴は、控えめな態度ながらそう頷いた。
「な、分かっただろ? 朱音姉に合わせて低レベルな奴らを入れていたら、それこそミステリークラブの看板に傷がつくんだよ」
「失礼ね、何が低レベルよ。あのね、優冴君は特別なの。そのレベルに合わせて入部テストなんてしていたら、クラブに入れる人がいなくなっちゃうじゃないの」
いつものように言い争いを始める橘姉弟。
そこに、
「それが、そうでもないんだな」
教室の入り口からそんな声が聞こえてきた。
「遅いぞ、充兄」
颯太がその名を呼ぶ。軽く手を上げてそれに応えると、充は三人の傍へと歩いてきた。
「充君、何がそうでもないの?」
朱音が尋ねる。
彼は言った。
「いたんだよ。優冴と同じ、いや、それ以上の推理力を持った奴が」
「本当? 誰なの?」
「俺たちのクラスに今日転校してきたばかりの理沙って子なんだけど……。まぁ、説明するよりも会ったほうが早いな」
「ここにきてるの?」
「あぁ」
朱音にひとつ頷いて見せると、充はドアに向かって呼びかけた。
「おーい。理沙、入ってこいよ」
……すると、
「はい、はーい」
元気な返事とともに、ひとりの女の子が教室内へと駆けてきた。
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次回更新は、8月9日(木)を予定しています。