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ミスクラ! ~旧校舎の六不思議~  作者: 直井 倖之進
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最終章 『今明かされる旧校舎の六不思議、七番目の真実』⑤

 六人は図書室に入った。旧校舎だとはいえ、室内には、大きな木製のテーブルが六台と四十脚ほどの椅子がまだ残されていた。

 適当なテーブルを選び、それを囲むように椅子に座るミスクラメンバーと真中。

 その中で、颯太だけが、

「あ、そういえば、百科事典はあるかな?」

 と、朱音の制止も無視して図書準備室を見に行った。

「もう、颯太はいつも勝手なんだから。だいたい、昔からあの子は……」

 姉の愚痴が終わらぬうちに弟は戻ってきた。その手には、百科事典よりもずっと薄い本が握られている。

「百科事典なんかなかったぞ。あったのはこれだけだ」

 颯太は手に持つ本をテーブルに置いた。

 それは、十一年前の、旧校舎最後の六年生の卒業アルバムだった。

「それって……」

「ちょっと、見せて!」

 優冴と理沙が同時に手を伸ばし、アルバムを開く。六人の頭がテーブルの中央に集まった。

 学校の全景から始まる卒業アルバムは、校長先生を始めとした先生たちの紹介を経て、クラス写真へと続く。

 六年一組の集合写真で、その中のひとりを颯太が指さした。

「あ! これって、美奈先生じゃないの?」

「そうみたい。ここに名前があるもの」

 下に記された室瀬美奈の氏名を朱音が照らし合わせた。

「今とあまり変わってないな。すぐに分かるよ」

 そんな颯太の感想とともに(ページ)はめくられ、六年二組の集合写真になった。

「ねぇ、見てん」

 今度は、理沙がアルバムの一部分を指さす。

 それは、集合写真の左上。撮影の日に欠席した子たちが載る四角形の枠だった。

 そこには、二人の少女の顔写真が。名前は、伊勢崎香名と海原波となっていた。

 続けて優冴がアルバムをめくる。クラブ活動の紹介のページだ。

 優冴と理沙は、真っ先に園芸クラブの部員を確かめた。その顔は、……室瀬美奈だった。

「美奈先生」

 やるせない思いで優冴は彼女の名前を口にした。

 そこに朱音が口を開いた。

「ねぇ、そろそろ教えてくれないかな? 二人の推理」

 そんな彼女に小さく頷くと、優冴は話し始めた。

「十一年前の香名さんの殺害、それからひと月後に起きた波さんの行方不明事件。その二つの事件の犯人は、美奈先生だ」

「え?」

 息を呑む朱音の隣で颯太が怒鳴った。

「いい加減なことを言ってんじゃねえぞ、優冴兄! 美奈先生が人を殺すはずないだろ!」

「……いや、これは……事実よ」

 言葉にしづらそうに、理沙が割って入る。

「何だよ! 理沙姉まで優冴兄の肩を持つってのか? ちゃんと説明しろ!」

 ますます声を荒げる颯太に、優冴は答えた。

「分かった、説明するよ。先ず、この事件を解決するためには、六不思議の中の、充君の話を思い出してみる必要があるんだ」

「俺の話?」

 充が首を傾げた。

「そう。あの時充君は、『イヤナヤツとイヤナヤツ、二人合わせてミナゴロシ』という話をした。でも、あれってちょっとおかしいんだ。だって普通、二人が死んでもミナゴロシとは表現しないだろう? ミナゴロシって言葉が使われるのは、最低でも三人が同時に死んだ時だ。つまり、ミナゴロシは、香名さんと波さんの相打ち死を意味するわけじゃなかったってことなんだ」

「じゃあ、どういう意味だったんだ?」

 続く充の問いには、理沙が答えた。

「ミナゴロシは、皆を殺す“皆殺し”という意味やなくて、美奈先生を殺す“美奈殺し”やったとたい。そして、イヤナヤツは、美奈先生のことを“嫌な奴”だと思っていた香名さんと波さんのこと」

「え? ということは、『イヤナヤツとイヤナヤツ、二人合わせてミナゴロシ』の本当の意味は、『香名さんと波さんが(けっ)(たく)して美奈先生を殺す、“美奈殺し”をしようとしている』だったのか」

 そう充がまとめると、それに優冴が頷いた。

「うん。でも、実際に殺されてしまったのは、香名さんだった」

「だからって、それが、美奈先生がやったって証拠になるのかよ?」

 涙声で颯太が訴える。

 しかし、それにも優冴は冷静に返した。

「証拠ならあるよ。トイレのプレートと踊り場にある黒い影だ。本当ならば、その両方に“ついているべきモノ”がなかったんだ」

「“ついているべきモノ”って?」

 朱音が尋ねる。

 優冴は答えた。

「“埃”だよ。この旧校舎は、十一年前に閉鎖になり、それよりあとはずっと使われていなかった。そのため、“埃”がびっしりとたまっていたんだ。ところが、踊り場の黒い影にはそれがついていなかった。これは、黒い影が、誰かによって最近塗られたという証拠なんだ。それと、トイレのプレートほうは、“埃”がはがれ、代わりに手形がついていた。誰かが触ったんだよ、“埃”の上から。警察の鑑識に依頼すれば、指紋が出るんじゃないかな?」

「それが美奈先生の指紋だと言うのかよ? もし、万が一そうだとしても、それは、美奈先生が最近旧校舎に入ったって証拠で、殺人の証拠にはならないじゃないか!」

 颯太がなおも食い下がる。

 優冴は、小さく頷いて見せた。

「そうだね、殺人の証拠にはならないよ。でも、多分、これで十分だと思うんだ。だって、美奈先生は、僕たちミスクラに、いや、颯太君に逮捕されたいと願っているんだから」

「俺に、逮捕?」

「うん。そうじゃなかったら、わざわざ六不思議になぞらえて、プレートや壁に細工をする必要なんてなかったんだ。四月から今日までに“遺体を移動させよう”と思えば、チャンスはいくらでもあったんだから」

「遺体? 遺体って?」

 颯太が、意味が分からないという顔をする。

「行方不明だとされている波さんの遺体だよ。六不思議で颯太君が話したA子さん。実は、あれは波さんのことだったんだ。もちろん、波さんはA子さんのように自分勝手だったってわけじゃなく、校長先生に殺されたわけでもない。波さんを殺害したのは美奈先生だ。夏休みに『お仕置き部屋』とされる小部屋から聞こえたあの音は、美奈先生が波さんをそこに埋めるために土を掘っていた音だったんだ。つまり、旧校舎の七不思議を解くための最後の鍵は、颯太君、君が持っていたってことなんだ。恐らく、今、美奈先生はあの小部屋で颯太君を待っているはずだよ」

「先生!」

 ひと言そう叫び椅子をひっくり返して立ち上がると、颯太は図書室を飛び出した。

 ご訪問いただき、ありがとうございました。

 次回更新は、10月2日(火)を予定しています。

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