最終章 『今明かされる旧校舎の六不思議、七番目の真実』④
明かりがつくスイッチを探しつつ、ゆっくりと階段を上がる。彼らは三階へと辿り着いた。
この旧校舎三階は、六不思議の四つが密集している場所だ。ここから一番近いのは、美奈の話に登場したトイレだった。
さしたる期待もできないが一応は見ておこうと、六人はトイレの前にやってきた。
「……あれ?」
プレートを見上げて朱音が首を傾げる。それもそのはず、美奈の話と異なり、右が男子で左が女子になっていたのである。
「ん? 逆になっているな」
気づいた颯太が、姉の「エッチマン」の言葉にも耳を貸さず、さっさと左のトイレへと入って行く。
そして、すぐに、
「やっぱり、プレートが逆になっていただけだ」
と言いながら戻ってきた。
それを聞いたとたん、優冴が大きな声を上げた。
「真中さん。プレートを外してみてください。端のほうだけを持って、そっと丁寧に」
「あぁ、分かったよ」
別に怖いことではないからお安い御用だ、と、真中は軽く背伸びをしてプレートを外した。
「これでいいのかな?」
「ありがとうございます」
プレートを受け取ると優冴は、その表面に目を凝らした。
「……まさか」
小さく彼が声を漏らす。
それを耳に入れ、朱音が尋ねた。
「何? 何か分かったの?」
「うん。……でも、もう少しだけ待って。確信が持てたら、全て話をするよ」
優冴は、心底悲しげな顔でそう答えた。それは、長年彼を見続けてきた朱音でさえも初めて目にする彼の表情だった。
「先に、行こうか」
気を取り直したように告げると、優冴は誰の返事を聞くこともなく廊下を東へと歩き始めた。
真っ直ぐに前を見据える彼の瞳には、大粒の涙が溢れていた。
廊下の途中で、六人の最後尾を行く充が下を向いて独りごちる。
「ここが、五年二組前の廊下か。俺の六不思議の話がガセでなかったら、血痕があるはずなんだよな。……無いか」
そのまま廊下を通り抜け、六人は図書室の近くまでやってきた。
「あの壁に大鏡が設置されとったとやね。……おや? 確かに、黒い影があるみたい」
階下を見下ろしてそう言うと、理沙は踊り場へと駆け下りた。
見上げる白い壁には、水彩絵の具を水で薄めたような薄黒い影がついている。暫くそれをまじまじと見つめていた彼女だったが、やがて、はっとした様子で優冴の許へと走り寄った。
「ねぇ、優冴君。あの……」
理沙が何かを耳打ちする。
彼は、
「うん。僕もそうだと思う」
と、淡々とした口調でそう答えた。
「そうなん。やっぱり……」
理沙が顔を伏せる。
「どうしたの? 何が、やっぱり、なの?」
二人に交互に視線をやる朱音の問いに、優冴が図書室を示しながら返した。
「僕たちの推理は、そこで話すよ」
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今話で最終章のタイトルにもなっている“旧校舎の六不思議、七番目の真実”に辿り着くことができます。
伊勢崎香名殺害の犯人は? 海原波行方不明事件の真相は?
旧校舎の六不思議と現場検証から導き出された優冴と理沙の推理、いよいよ次話明かされます。
次回更新は、9月29日(土)を予定しています。




