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ミスクラ! ~旧校舎の六不思議~  作者: 直井 倖之進
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最終章 『今明かされる旧校舎の六不思議、七番目の真実』③

 その昔、「殺人現場に、リンゴが落ちていた」という歌詞の歌があった。

 だが、殺人現場である花壇に苺は落ちていなかった。いや、それどころか、そこが花壇であるのかもよく分からない始末だ。十一年も放置されていたせいで、完全に雑草で覆われている。

「苺なんてどこにも無いじゃないかよ」

 周囲を見回し愚痴る颯太の隣で、朱音が優冴に尋ねた。

「ねぇ、苺の収穫時期って、やっぱり冬なのかな?」

「違うよ。確かにクリスマスケーキに使うから、十二月が旬だと思っている人が多いけど、露地栽培された苺の収穫時期は、初夏。五月から七月の初め辺りなんだ。それをハウスで促成栽培して、クリスマスの時期に合わせているってわけさ」

「なるほど。じゃあ、やっぱり、殺人事件があったのを六月とする理沙ちゃんが見たブログの記事は、正しかったってわけね」

「疑っていたの?」

 優冴が少し驚いたような顔をする。

「ううん。そうじゃないけど、六不思議の中にある嘘を見極めて真実を暴こうと考える以上は、一度、全てを再確認してみる必要があるのかなと思って」

「凄いな、朱音ちゃん。探偵みたいだよ」

 優冴が感心したような声を上げると、朱音は笑って答えた。

「探偵だったら優冴君のほうがお似合いよ。私は、それを支える助手。ずっとついて行くからね」

「え?」

 思いの外に動揺する優冴。夜でなければ、苺のように赤くなった顔が、はっきりと分かったことだろう。

「……優冴君」

 彼に寄り添おうと、朱音が一歩を踏み出す。

 すると、

「朱音姉。ここには何もないみたいだから、もう行くぞ」

 颯太が彼女に声をかけてきた。

 「邪魔してんじゃないわよ!」心の中でそう叫び、朱音が鬼面の表情を弟に向ける。

「な、何怒ってるんだよ、朱音姉」

 恐れおののきつつ、颯太はその身を震わせた。

「何でもない。行くよ!」

 そう一方的に告げ、朱音がずかずかと音を立てて歩き出す。

「何だよ、どうして怒ってるんだ?」

 颯太は慌ててそのあとを追いかけた。

 こうして、花壇には何もないことを確認した五人と真中は、正面玄関へと戻ったのだった。


 正面玄関に着きはしたものの、まだそこに美奈の姿はなかった。ただ、先ほどと違ってガラス扉の先の警備ランプが青く光っている。

「そのうちに先生もくるだろうし、先に中に入っていようぜ」

 そんな充の言葉に促され、真中が預かっていた鍵を使って玄関を開ける。

「さぁ、行こうか」

 真っ暗な旧校舎の中へと、今、六人はゆっくりと足を踏み入れた。


「どうせ明日は壊すんだから、靴なんて脱がなくてもいいよな」

 そう言いながら、颯太が土足で玄関を通り抜ける。

「あ、待って。明かりがないと危ないぞ」

 真中が懐中電灯を颯太に向けると、次の瞬間、突然玄関と廊下に蛍光灯の明かりがついた。

 「ひえっ!」飛び出しそうになる悲鳴を飲みこみ、きょろきょろと辺りを見回す真中。

 そこに、スイッチを入れた本人である優冴が教えた。

「自動警備になっているということは、電気がきているということです」

「あ、あぁ、そうか」

 納得しながら真中は、今日一番の安堵の表情を見せた。

 颯太が勝手に選んだ方向、玄関から向かって左手の廊下を進む。明かりはあるが、外はもちろん、職員室、保健室などどの部屋も暗い。何となく外界から遮断されたような不安を感じつつ、六人は、やがて廊下の最奥にある小部屋の前へとやってきた。

「ここが、『お仕置き部屋』ね」

 緊張した様子で朱音が呟く。

 そう。ここは『お仕置き部屋』。六不思議の時の颯太の話では、一学期の終業式から約四十日もの間、A子が閉じこめられていた場所である。

「今は夏休みだけど、土を掘る音なんか聞こえないよな。真中さん、開けてみてよ」

 平然と颯太が依頼する。

「でも、鍵がかかっているんだし、無理だよ」

 真中は遠まわしに拒絶した。

「そんなことやってみないと分からないじゃないか。いいから開けてみてよ」

「わ、分かったよ。やるよ」

 繰り返される言葉で意を決し、真中がドアノブへと手をかける。

 すると、――カチャリ――小さな音とともに、あっけなくそれは開いた。

 真っ暗な小部屋に、真中が懐中電灯の明かりを向ける。

 しかし、そこには六畳ほどの板間が広がるだけで、別段変わった物は何ひとつなかった。

「板張りで窓の無い小部屋ってのは正しいが、さすがに、ここに人が閉じこめられていたとは考えにくいな」

 部屋を覗きこみ、充が言う。

「実際に殺人があっとるとは香名さんの事件だけやけん、当然やろ」

 そう理沙が答えると、彼は、

「まぁ、確かに。じゃあ、次は三階に行ってみるか」

 と、上階を指さした。

 六人は、小部屋のあるほうの階段から三階へと向かうことにした。

 ご訪問いただき、ありがとうございました。

 また、昨日掲載しましたブログ2周年記念掌編小説『嫌忌者』、お目通しいただいた皆さんにおかれましても深く御礼申し上げます。

 作品完結が前後してしまいましたが、本作のほうはもう少しだけ続きます。

 次回更新は、9月26日(水)を予定しています。

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