最終章 『今明かされる旧校舎の六不思議、七番目の真実』①
最終章 『今明かされる旧校舎の六不思議、七番目の真実』
七月三十一日がやってきた。時刻は午後七時四十分。現在、ミスクラのメンバー五人は、西桜小学校内交番にて待機中である。
交番内には、五人の他に真中がいた。午後八時に警らから戻ってくる権田巡査部長と交代で、旧校舎へと向かう手筈となっていたのである。無論、今はまだ到着していないが美奈も一緒だ。
出発の時をじっと待つ六人の中で、理沙が口を開いた。
「ねぇ、旧校舎に行く前に、ちょっと聞いてくれん?」
「どうしたの?」
優冴が問う。
「ウチね、視聴覚室で六不思議の話を聞いてから、自分で色いろと調べてみたったい。そしたら、とんでもないことが分かって……」
「とんでもないこと、って?」
「うん、あのね、この西桜小では、本当に殺人事件があっとったと」
「……殺人」
優冴は、目をすうっと細めた。
「そう。今から十一年前の六月に。しかも、それからひと月後の七月には、児童の行方不明事件もあっとる」
「二件連続ってこと? でも、そんなことどうやって調べたのさ?」
颯太がそう尋ねる。
「あ、それはインターネットで。殺人事件を専門にまとめとる個人ブログがあったけん、そこで。どうする? ブログに書かれとった内容を、簡単に説明することもできるけど」
「時間もあることだし、お願いするよ」
優冴が頼むと、理沙は、
「分かった。任して」
と首を縦にふり、続けて話し始めた。
「さっきも言ったばってん、殺人事件があったとは、十一年前の六月。旧校舎の中庭にある花壇の前で、当時小学六年生の伊勢崎香名さんが殺害されとった。死因は、毒物の付着した苺を食べたことによる毒死。花壇には他にも多くの苺の果実があった。ばってん、毒物は、香名さんが食べた苺だけに付着しとった。これにより警察は、香名さんを狙った殺人事件と断定、捜査を開始。当時園芸クラブに所属しとった女子児童とその担当教諭に事情を聞くも、明確な回答は得られず捜査は難航。そのまま十一年の時を経た今も、犯人追跡の糸口すらつかめとらん。これが、西桜小で起きた殺人事件の概要たい。……さて、ここまでで、何か思い出すことがあるやろ?」
理沙は全員に、特に朱音と充にその視線を送った。
二人とも気づいたことがあったようだが、代表して充が答えた。
「あぁ。被害者の伊勢崎香名さんは、六不思議で俺が話をした“カナミ”のカナと同じ名前。亡くなった場所は、朱音の話に出てきた旧校舎中庭の花壇、しかも、苺に毒が塗られていたということまでが同じだ」
「そう。そして、さらに驚くことがあるとよ」
「さらに驚くこと?」
「うん。これは警察内だけの情報で一般には出とらんとやけど、香名さんが亡くなった時、一緒に彼女の友だちもおったらしかと。友だちの名前は、海原波さん。七月に行方不明になったっていうとは、その人よ」
「波、だって? “カナミ”のナミと同じだ。それに、海原って苗字は、美奈先生の話の中で出ていたぞ」
はっとしたように、充が少し大き目の声を上げる。
「うん。つまり、十一年前の香名さん殺害事件と波さん行方不明事件、それと、西桜小旧校舎の六不思議は、全部つながっとるということになるったい」
「確かに、少なくとも無関係だということはなさそうだね」
理沙の言葉に優冴も同意する。
そこに、腑に落ちない顔をして真中が尋ねた。
「それにしても、理沙ちゃんはどうしてそんなに詳しいんだい? 当時の警察が内部の情報を簡単に漏らしたとは考えにくいんだけど……」
「あぁ、それは、フラワーショップの店員さんから。その人、店のホームページを作っとらして、プロフィールを見たら西桜小出身の二十三歳の人やったとたい。亡くなった香名さんと同じ年やけん、もしかしたらって思って直接話を聞きに行ってみたと。そしたら、色いろと教えてくれんしゃった」
「なるほど。事件当時に被害者と同じ六年生だったってわけか。だったら、詳しい話も知っているだろうな」
納得する真中に、急に思い出した様子で理沙はつけ足した。
「あ、そうそう。その店員さん、香名さんと同じクラスやったとやけど、波さんも一緒やったってよ。六年二組やったって。しかも、当時は二年に一回しかクラス替えはなかったってやけん、香名さんと波さんは五年生でも同じクラスやったってことになる」
「え? ちょっと待てよ。すると、俺がした“カナミ”の話は、でたらめだったってことか」
充が困惑した表情を見せる。
理沙は答えた。
「まぁ、そもそも香名さんも波さんも六年生になっとるとやけん、五年生の時に廊下で刺し合ったってことはない。ばってん、充君の話を含めて、六不思議の全てがでたらめやったとは言えんとよ」
「どうしてだ?」
「だって、少なくとも登場人物の名前は現実におった人たちと同じやし、朱音ちゃんの話みたいに、その殺され方が同じというものもある」
そんな理沙の解説を聞き、優冴がまとめた。
「つまり、旧校舎の六不思議には、真実と嘘が混ざっている。その嘘が洗い流されれば、最後の不思議である“殺人事件の犯人”に辿り着くということだね」
理沙は頷いた。
「そういうこと。そして、香名さん殺害の犯人が分かった時、西桜小旧校舎の七不思議は完成する」
「やるか?」
充がメンバーに問う。
「もちろんよ。それに、波さんの事件も解決しないとね。颯太は?」
「朱音姉を放ってはおけないからな、つき合ってやるよ」
颯太は朱音に微笑みかけた。
今、ひとつにまとまるミスクラの五人。その姿を見つめながら真中も、「怖いけど、事件は解決しなければ」と警察官としての正義に燃えるのだった。
ご訪問いただき、ありがとうございました。
前回、「この連休中、福岡は雨」なんて書いていましたが、殆ど降りませんでした。
まぁ、そのお陰で、掃除がはかどり助かりはしましたが……。天気予報、あまり当てになりませんね。
次回更新は、9月20日(木)を予定しています。




