第三章 『今語られる旧校舎の七不思議』⑦
『旧校舎の七不思議 その六』
今度は怖いから、覚悟してね。
旧校舎三階の図書室は、校舎の一番東になるんだけど、その反対側、西の端にはトイレがあるの。プレートがあるから分かるんだけど、向かって左が男の子用で、右が女の子用よ。
……でもね、この二つ、時々入れ替わっていることがあるの。
おしまい。
「……先生、その話のどこが怖いんだよ?」
美奈先生大好きの颯太も、これにはさすがに呆れ顔になる。
対して、美奈は心底驚いた様子だ。
「え? 颯太君は怖くなかったの? トイレが入れ替わっているのよ。もし気づかずに入ったら、颯太君のエッチ、って言われちゃうのよ。最悪、そのままずっと、エッチマンなんてあだ名で呼ばれ続けるかも知れない。それって、凄く怖いことだと思わない?」
「怖い、の意味が違うって。それに、その話、単にプレートが落ちて入れ替わっただけなんじゃないの?」
「そんなこと……。あ、そうかも」
がっかりした様子で、美奈は力なく蝋燭を吹き消した。
「さて、残りは一本。どうする?」
充が誰にともなくそう問いかける。
とはいえ、美奈以外に語る者がいないことは彼にも分かっていた。それでも聞きたかったのである。
「美奈先生しか、おらんやろ」
理沙がそう答えた。
「では、旧校舎の七不思議最終話を、美奈先生、お願いします」
優冴が促す。
ところが、美奈は黙ったまま。何も語り出そうとはしなかった。
皆して怖くないなどと言うものだからいじけたのだろうか? そんな考えがミスクラメンバーと真中の頭によぎったその時、おもむろに美奈が口を開いた。
「……ないの」
「はい?」
全員が首を傾げる。
その一人ひとりを見ながら美奈は言った。
「だから、旧校舎の七不思議って、実は、六つしかないの」
「う、嘘」
颯太が目を見開いた。
「本当よ。七不思議は、“七つ目を知ると不幸になる”って言われているから、西桜小にはそれがないの。……ごめんなさい」
「いや、それは先生が謝ることじゃないよ」
颯太が当然の如くフォローする。
そこに充が、
「なるほど。旧校舎の七不思議は、六不思議だったってことか。それで、どうする? 優冴」
と彼に意見を求めた。
「うん。六不思議でも計画に支障はないと思うから、続けていいんじゃないかな?」
「そうか。じゃあ、予定どおりに」
「計画? 予定?」嫌な予感が胸に広がり、真中が思わず尋ねた。
「ねぇ、優冴君。計画って、何なのかな?」
すると、彼はさらりと答えた。
「もちろん、『第二回、真中巡査の弱点を克服させよう会』の計画ですよ。内容は、今日話に出ていた旧校舎の六不思議についての現場検証。集合日時は、七月三十一日の午後八時です」
「七月三十一日って、君たちは夏休みの最中じゃないか。クラブ活動の時間じゃなくていいのかい?」
「はい。本来ならばそれが理想なんですが、実は、昨年の年度末に旧校舎の取り壊しが決定しているんです。その工事開始が八月一日。だから、旧校舎に入ることができるのは、七月三十一日までなんです」
「へぇ、そうなんだ。でも、僕にも予定があるからな」
どうにかして会に参加せずにすむよう企む真中。
しかし、そんな彼よりも優冴は一枚上手だった。
「あ、真中さんのご予定は大丈夫です。権田さんにお願いして、空けておいてもらいましたから」
「そ、そうなんだ。そ、それは、……楽しみだなぁ」
真中は、そうと答えるしかない返事をした。
こうして、一本の蝋燭が消されずに残る中、『第一回、真中巡査の弱点を克服させよう会』は終了したのだった。
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今話で第三章が終了、次話より最終章へと移ります。
最終章初回更新は、9月17日(月)を予定しています。
明日から、三連休ですね。皆さんは、休日のご予定、立てられましたか? こちら、九州福岡は、雨が続くみたいです。




