第二章 『優冴VS転校生 推理勝負!』⑥
二十分後。西桜小学校内交番の電話が鳴った。
それは、「無事に解決した。黒田理沙の協力に感謝する」との権田巡査部長からの報告であった。
家に乗りこんだ際、ちょうど犯人は刃物を被害者に突きつけようとしているところだった。それを柔道三段の権田巡査部長が一本背負いで投げ飛ばし、あっという間に取り押さえたのだそうだ。
交番内に安堵の空気が流れる中、誰よりも大きく息をついたのは理沙だった。
そんな彼女に、
「そろそろ教えてくれないかな? どうして、犯人が被害者宅にいると分かったんだい?」
と、真中が先ほどの問いを繰り返した。
「えっと、それはね……」
おもむろに語り始めようとする理沙。
ところが、何を思ったか彼女は、一度そこで言葉を切ると、優冴へと体を向け直して宣言した。
「優冴君。ミスクラ部長の座をかけて、推理勝負よ!」
「え? このタイミングで?」
これにはさすがの優冴も驚きを隠せない。
だが、それでも理沙は自らの提案を引っこめるつもりはないらしく、
「そう。これからウチが今回の事件に関する問題を三つ出すけん、答えて。もし、全問正解ならば部長は優冴君。ひとつでも間違えたらウチが部長ってことでどうね?」
と、試すような視線を彼に投げつけた。
「何よ、それ。圧倒的に優冴君が不利じゃない」
間髪を容れずに朱音が苦情を言う。
しかし、優冴は、
「うん、いいよ」
と、あっさりとこれを承諾した。
「ちょ、ちょっと、優冴君」
戸惑いうろたえる朱音。そんな彼女をよそに、優冴と理沙の推理勝負は始まったのだった。
理沙は、右手の人差し指を立てると勢いよく前へと突き出した。
「そしたら、早速、第一問。先ずは、真中さんも質問していた事件の中心となる問題から。“どうして、ウチは、犯人が被害者の家にいると分かったのでしょうか?”。はい、答えて」
出題する理沙やそれを疑問に感じていた真中だけでなく、その場にいる全員が優冴に注目する。
その中で優冴は、『“ウンテンドー3DS”盗難事件』の時と同様、さらりと自分の推理を話し始めた。
「理沙ちゃんは、たったひとつの違和感から、“犯人は被害者宅にいる”と判断したんだ。それは、“真中さんが公衆電話から電話した際、十円玉が返却されなかったこと”だよ」
「うん。確かに十円玉は返ってこなかったよ。でも、それがどうして変なんだい? “お客様がおかけになった電話番号は、現在使われておりません”というアナウンスは流れたわけだから、十円は、それに対して支払われた代金じゃないのかな?」
そう真中が意見する。
優冴は首を横にふった。
「いいえ。留守番電話などと違って、番号が使われていないというお知らせ、つまり、番号不使用通知への料金負担は、発生しないんです」
「無料ということか。じゃあ、どうして僕の十円は返ってこなかったんだい?」
「つながっていたんですよ。被害者の家に」
「え? でも僕は、この番号は使われていない、というアナウンスを間違いなく聞いたよ」
「それは、その時既に被害者宅にいた犯人が仕組んだことだったんです。恐らく犯人は、番号不使用通知のアナウンスをあらかじめレコーダーなどに録音しておき、それを受話口から流したんです」
「どうしてそんな面倒なことを? 電話なんて、無視すればすんだだろうに」
「被害者からの通報を悪戯だと錯覚させるためですよ。“殺される”と告げてきた電話にかけ直してみた時、相手が出なかったらどう思いますか?」
「それは、何かあったんじゃないかと疑う、……あ!」
真中は大きく手を打った。
「そうです。怪しんだ警察官が家へと踏みこむことを犯人は避けたかった。そこで、そんな手のこんだ方法を実行したというわけです」
「なるほど。僕は、まんまとその罠にかかったということか……」
真中は悔しそうに唇を噛み締めた。
「残念ながら、そういうことになります。真中さんに番号不使用通知のアナウンスを聞かせたのは犯人です。だから、理沙ちゃんは、犯人は被害者宅にいると判断したんです。そうだよね? 理沙ちゃん」
優冴が問いかけると、理沙は、
「……正解」
と悔しそうに返事をした。
「やった! さすが優冴君!」
朱音が手を叩いて喜ぶ。
「ふん。まだ一問正解しただけやん。勝負は、これからたい」
負けじとそう言い返すと、理沙は次の問いを出題した。
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次回更新は、8月24日(金)を予定しています。




