表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ミスクラ! ~旧校舎の六不思議~  作者: 直井 倖之進
10/28

第二章 『優冴VS転校生 推理勝負!』③

 颯太以外の四人も彼の席の周辺にある適当な椅子に腰をかける。

 ところが、三分待っても先生はこない。五分待ってもやっぱり現れない。

 さすがに変だと感じ、誰にともなく充が言った。

「なぁ、ミスクラ担当の先生って誰なんだ? まさか、忘れているなんてことはないだろうな」

 いつの間にか「ミスクラ」と呼ぶようになっている彼の問いに答えたのは、隣の席に座っている颯太だった。

「忘れてはいないと思うよ。先生は忙しいものなんだから、もう少し待ってあげようよ」

「どうしたんだ? 教師をかばうなんてお前らしくないじゃないか。さては、お前、担当の先生が誰なのか知ってるな?」

 充が怪しみの眼差しを向けると、颯太はあっさりそれを認めた。

「あ、ばれた?」

「やっぱりか。で、誰が担当なんだ?」

「俺たちのクラスの担任、()()先生だよ」

「美奈先生? それって確か、今年先生になったばかりの新任教師だよな?」

「そうだよ。五月五日生まれの二十三歳で牡牛座のA型。ラムネが大好きで、(イチゴ)が嫌い。少しおっちょこちょいなんだけど、超美人で凄く優しい。そんな(むろ)()美奈先生だ」

 颯太は、まるで自分のことのように得意がった。

「なるほど、まだ学校に慣れていない先生だから遅れているってわけか。それはそうと、颯太、お前、美奈先生のこと好きだろ?」

「な、何で分かったの?」

 図星をさされ、颯太は慌てた。

「何で、って、その話ぶりで気づかないと思っているのは、お前ぐらいだよ」

 充が苦笑すると、颯太は、

「充兄、分かってると思うけど、朱音姉の時と同じでこれもばらしちゃ駄目だからね」

 そう言って自分の口元に人差し指を当てた。

「……お前、そのうち秘密だらけの男になってしまうぞ」

 充が颯太を心配する。

 直後、

「何、何? 颯太君って、そんなに秘密だらけの男の子なの?」

 二人の背後からいきなり誰かが話しかけてきた。

 音もなく忍び寄ってきたその人物に、慌てて五人がふり向く。

 続けて、

「美奈先生!」

 颯太が驚きと喜びの入り交じった大声を上げた。

「遅くなっちゃった。皆、ごめんね」

 後ろでひとつに結んだ長い黒髪を揺らしながら、美奈は五人にぺこりとお辞儀した。

「もう、本当に遅いぞ」

 先ほどの秘密に触れられたくない颯太が、むくれた風を装って頬を膨らませる。

 すると、美奈は、

「……ごめんなさい」

 と急にしゅんとし、今にも泣き出しそうな顔になった。

 「これは、拙い」そう思った颯太がしどろもどろになりながらフォローする。

「い、いや、いいんだよ。ほら、先生って忙しいものなんだし、き、気にしないでよ」

「じゃあ、許してくれる?」

 ちらりと颯太を見ながら美奈がそう聞くと、

「も、もちろんだよ!」

 彼は何度も頷いた。

「そう。よかった!」

 美奈はとたんに笑顔になった。

 「いや、よくはないだろう」、「大丈夫なの? この先生」颯太を除く四人の子供たちが各々そんなことを感じて不安になる。

 だが、当の本人である美奈は、何事もなかったかのように話し始めた。

「えーと、今からミステリークラブを始めるんだけど、私、ミステリーってよく分からないの。推理小説は読まないし、都市伝説にも興味がないし……。そこで、色いろと考えた結果、ある人にお手伝いをお願いすることにしました」

「ある人って?」

 颯太が尋ねる。

「それは、まだ秘密。でも、もう了解はもらってるから、これから皆でご挨拶に行きましょう」

 そう告げると美奈は、五人についてくるよう促した。


 四年二組の教室を出て、美奈のあとに続き廊下を歩く五人の子供たち。途中告げられた彼女のヒントでは、手伝いをしてくれる人は何でも一階にいるらしい。

 二階から一階へと下りる階段で、一番後ろを歩いていた朱音が隣の颯太に小声で聞いた。

「ねぇ、美奈先生って、普段もあんな調子なの?」

 すると、少し伏し目がちに颯太は答えた。

「いや、普段はもっと酷いよ。今回は、手伝いを頼む人を事前に準備してくれているだけましだ」

「そうなの。大変ね」

 朱音が哀れむような目を向ける。

「まぁ、ね。いつも優しいのはいいんだけど、そのせいでクラスのやつらが調子に乗っちゃってさ。給食の準備や掃除とか、時間内に終わらないことも多いんだよ。だから、俺や四郎はいつもその(しり)(ぬぐ)い。まったく、忙しすぎて悪戯する時間もなくなっちゃったよ」

「あら、それはよかった。颯太のために私が頭を下げずにすむんだから」

 「同情して損した」とばかりに、朱音は嫌味を口にした。

 しかし、颯太は聞いていない。

「でも、美奈先生を喜ばせたら、アレをしてくれるからなぁ。いいんだよなぁ。……アレ」

 横を向き、そんなことを独りごちている。

「アレって、何?」

 気づいた朱音がそう問うと、颯太は、尋常ではないほどに(ろう)(ばい)しながら大きく首を横にふった。

「い、いや、な、な、何でもないよ!」

「何でもないわけがないでしょう。アレって何よ、アレって。答えなさい!」

 姉の強みか朱音が厳しく追及する。

 颯太は、完全に(きゅう)()に追いこまれた。

 だが、ちょうどそこに、救いの女神である美奈先生の声が聞こえてきた。

「皆、着いたよ」

 それに釣られて朱音が辺りを見回す。

 そこは、新校舎一階の角部屋。西桜小学校内交番だった。

 ご訪問いただき、ありがとうございました。

 次回更新は、8月15日(水)を予定しています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ