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ブクマ、評価ありがとうございます!
やる気が出てきたので全力でふざけていこうと思います。
勝手に湯を沸かして風呂に溜めていく。これ追加料金とかあるのかな?払うの私じゃないからいいんだけど。じゃぶじゃぶと大量のお湯を堪能しながら、体を洗う。あ~贅沢。たらいとえらい違いだ。
それにしてもこの宿泊費は経費で落ちるのだろうか。結構迷いなく一番いい部屋を選んでいたけど、クロード様の領地は資金が潤沢なのかな。下僕ABの自腹だったらどうしよう。まずかったかな。
風呂を満喫していたら、浴室のドアがノックされた。
「・・・何してるんですか?食事買ってきたのでどうぞ」
「あ、ありがとうございます。今行きます」
適当に拭いて、カバンに唯一入れた夜着がわりのシャツを羽織って出る。つーかコレ叔父様が捨てるっていうからもらったおっさんシャツなんだけどね。基本古着しか持ってないんだ!
アデリーヌなんかはスケスケふりふりの超かわいいネグリジェをたくさん持っていたけど、絶対にそれは古着として回ってこなかった。ああいうエロい夜着は生涯着ることはないだろう。つーか寝るだけなんだから、おっさんシャツで十分だ。
ドアを開けて洗面所から出ると、下僕AとBもテーブルについてサンドイッチを食べていた。
「「ぶほぉっ!」」
私を見た下僕ABが揃ってサンドイッチを吹き出した!ええー!なにやってんの?!
「あっ・・アンタなんていうカッコで・・」
「は?恰好?私の唯一の寝巻ですけど?男爵の古着ですけど何か文句ありますか?」
そういうことじゃねえええ!と男二人がじたばたしだした。うるさいなあ、口きかないとか言ってたくせになんなの?
「なんで男物のシャツを着てるんだ!あと、下に何か着ろ!婦女子が足を晒すとか何考えてんだ!」
「ああ・・なんだそんな事・・これしか無いんだし仕方がないでしょ。大きいからちゃんと足は隠れてるじゃない。人を露出狂みたいに言わないでくれます?それより私の分どれですか?今絶対ツバふきかけましたよね?それ食べるの嫌なんですけど」
「おっお前コッチくんな!ちょっ、もう勘弁してくれ・・」
おい、ゴキブリみたいな扱いされておるぞ。
近づくと下僕ABが逃げ惑うのでちょっと面白くなってきた。
調子に乗って『カバディカバディカバディ・・』とつぶやきながら追いかけてみる。よく屋敷の使用人達とやっていた遊びで、コレがめちゃくちゃ盛り上がるのだ。ちなみに庭師のジローが格闘技とミックスした独自ルールになっているので割と危険。
「なんなんだお前は!こんなのクロード様に見せられない・・うわあああコッチくんなあああ」
「はいキャーッチ!!!」
捕獲は全力でタックルして捕まえるのがジロールールです!下僕Aに体当たりをかましひっくり返す。素早くマウントポジションを取る。兵士のくせに簡単にひっくり返されるなんてヘタレだのー。
「やめっ・・うわっ乗っかるな!」
「はい、私の勝ちー下僕Aの負け―。やーいやーい」
「下僕Aってなんだよ!頼むからもう降りてくれ!お前とんでもない恰好になってるぞ!」
なんだようもうノリ悪いなあ。屋敷のみんなには鉄板で必ず盛り上がったのに。
とはいえ、まったく打ち解けていないのにいきなり悪乗りしすぎたかもしれない。本格的に嫌われて食事もらえなくなったらどうしよう。やりすぎたかもしれない。
「・・・ずいぶんと楽しそうだな」
そこへ第三者の声がした。ん?誰?と思い振り返ると。
ドアが開いて噂のクロード様その人が立っていらっしゃった!!!
「ひいいいいっ。クッ、クロード様ぁ?!なぜこちらに?!」
下僕ABの叫びで私も震え上がった。王都に向かわれた辺境伯様ではありませんか!なぜここに?!そして凄まじい殺気を放ってらっしゃる!もう禍々しいオーラみたいなの漂わしちゃってる!現れて早々何事ですか?!
「ジオは何故ニーナに組み敷かれているのかな?ニーナもずいぶんとあられもない姿だが、これから何をするつもりだったのか私に詳しくおしえてくれないか?」
ジオと呼ばれた下僕Aさんががばっと起き上がり、すばやくクロード様の足元にひれ伏した。
「申し訳ありません!クロード様が懸念されているような事は何も!何もございません!私も何故こうなったのか・・」
「ほう、ではニーナがお前を誘ったと?そういいたいのか?私ですら頭突きで拒まれたというのにお前はニーナのほうからせまられたと、そう言いたいのかな?」
「いいいいいえ!!!そのような事はございませんん・・!」
突然登場していきなりめちゃくちゃねちっこいイビリが始まった!それにしても辺境伯様なにいってんの?本当にこの人部下に慕われる名君なの?私だったらこんなパワハラ上司絶対嫌いになるんだけれど。
ぶるぶる震える下僕A改めジオさんを見ていてなんだか不憫になってきた。私が悪ふざけしたせいで、ジオさん雨の日の子犬みたいになっちゃってる。しょうがないので私も謝ろうか。別にクロード様にごめんと思う気持ちは微塵もないんだけど。
「あのー、ごめんなさい、つい悪ふざけしすぎました。そこのジオさんとやらは悪くありません。それにしても何故ここにクロード様がいらっしゃるのですか?王都へ行かれたのではないのですか?」
クロード様の眉がピクリと上がった。超不満そう。なんでだ。
「ニーナは私がここへ来て何か都合が悪いのか?王都で陛下との謁見は済ませてきた。あとはくだらん晩餐会だの夜会だのがあるだけだ、出なくてもよい。そんな雑務は執事にまかせてきた。
・・・ニーナが男と逃げようとしたと、早馬で連絡をもらったからな。単騎で戻ってきたのだ。どういうことか是非ニーナの口から聞かせてもらおうと思ってな」
クロード様!もう黒いオーラが可視化してますけど?!怖い怖い!隣にいる下僕Bも殺気にあてられて縮み上がっているけど、私も怖いので下僕Bの背中に隠れる。おい、自分らの上司だろう。なんとかしてくれ。
「おっ、おい!俺に触らないでくれ!俺はまだ命が惜しいん・・うわわわわっ」
わああああ下僕Bがアイアンクローされてるううう!成人男性をアイアンクローで持ち上げられるってすごいね!初めてみたよ!
下僕Bをぺいっと投げ飛ばすと、クロード様は私に近づいてきた。ぼ、暴力はんたーい!
「ニーナは情を交わした男がいたのかい?知らなかったな、男爵は君にそんな相手はいないと言っていたのだがね。家を捨てて駆け落ちするほどその男が好きだったのか?それとも逃げ出したいくらい私の事が嫌だったのかな?」
「はあ・・?マークには確かにプロポーズされましたけど、駆け落ちなんかじゃないですよ。屋敷を出たのは追い出されたからです。先日の不始末の責任を問われる形で、縁を切られたのです」
家を出たのはあなたのせいですよ、と言外に匂わしてみたけど別に自分のせいとか思わないんだろうなーこの俺様遊び人辺境伯は。ていうかなんで私責められる形なの?もう捕獲されているのに。
「プロポーズ・・されて、手を握り合っていたと報告を受けたぞ。ニーナは受けるつもりだったのか?相手の男は単なる見習いのコックなのだろう?私よりそんな男のほうが魅力的なのか?全くもって理解できない・・」
マークをバカにされたようでイラッとした。見習いだからとか何の関係があるんだ?女を力ずくで好きにしようとした横暴鬼畜遊び人よりよっぽど魅力的に決まっているだろう。
「そうですね、何の相談もなく押し倒してきた挙句誘拐するような男より、真摯な言葉でプロポーズしてくれる男性のほうがよっぽど魅力的なのは当然だと思います」
むかついたので睨みつけて言い返す。どうせもう失うものなどない。このままいいようにされるくらいなら言い返すくらいいいだろう。
すると何故かクロード様はにっこりと笑って私を立ち上がらせ手を握った。
「なんだ、そんなことか。ニーナはプロポーズされたかったのか?ではニーナ、結婚しよう。私の妻になってくれ。これでいいか?」
「「はあああああ?!?!?!?」」
あっ私より先に下僕ABが叫んだ。えっ?これなんの冗談?
ジローカバディはあくまでジロールールです。実際のものとは大きく異なります。
カバディ競技者の皆様もうしわけありません。
ジロールールで遊びたい方はエイまでご連絡ください。
・・・嘘です冗談ですごめんなさい。