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第一話


俺、杉村(すぎむら) 亮二(りょうじ)はトラックに轢かれて死んだ。

だが気が付くと、ベッドの上で横になっていた。

自分は助かったのかと思ったが、違うと断言できた。

それは何故か。

こういうのを転生っていうのだろうか。

記憶があるのだ。

「杉村 亮二」としての記憶とは別に、「ゼジル」という青年としての記憶が。

そして俺は「ゼジル」という人物として生まれ変わったらしい。

ゼジルの記憶が追体験したかのように思い出せるのだ。

ゼジルを乗っ取ってしまった形になるが、俺は良かったと思っている。

このゼジルという青年の記憶。

なんとも見るに耐えない物ばかりだった。

奴隷商人見習いをやっているのだが碌に仕事も覚えず、奴隷たちに暴力を振るい、泣き叫ぶ様子を見て楽しむという鬼畜極まりない行動ばかり。

ゼジル本人は躾けだと言っているが、自分の嗜虐心を満たす為にやってるとしか思えない。もしかしたら奴隷というのはこういう扱いが普通なのかもしれないが、日本人としてこれは許せない。


そしてこの世界は地球ではないようで、長寿で耳の長いエルフや、人間に耳と尻尾を生やしたような容姿の獣人というのが存在してたりする。

奴隷たちはほとんど獣人のようだが、顔や名前がよく思い出せない。

おそらくゼジルが微塵も興味無かったからなのだろう。


記憶を整理していると部屋の扉がコンコンとノックされる。

誰だろう。

思い当たる人物は・・・一人しかいない。

ゼジルの父親が流行の病で亡くなって、店舗と(ゼジル)を引き取ってくれたエルフ。

名前はたしか・・・。

ガチャと扉が開き、ライトグリーン色の髪をした爽やかなイケメン青年が部屋に入ってくる。

返事するのを忘れてた。

ベッドの上で上体を起こしたままの俺と目が合う。


「おや、ゼジルくん、起きてたんだね。入っていいかな?」


俺が起きていると思わなかったのか、驚きながら入室の許可を求めてくる。

一応ここは俺の部屋なんだが、奴隷を除いて俺とこのエルフさんの二人しか住んでない。

家主はこの人のような物だ、遠慮せず入ってくればいいのに。


エルフさんが話してる言語が日本語ではなかったがちゃんと意味は理解できた。

そしてエルフという事は・・・耳が長い。

ゼジルとしては見慣れた物かもしれないが、俺として見るのは初めてだ。

ちょっと感動。


碌に仕事を覚えようとしないクズな俺を、今まで見捨てず面倒見てくれた恩人だ。

感謝してもしきれない。


「ゼジルくん?」


おっと、目の前の状況を忘れていた。

どうしよう。

杉村亮二の性格のまま話すと絶対に怪しまれる。

かといって俺は役者でもないのでゼジルの性格を演じきる自信はない。

それに今までのような恩知らずな態度を取るのは心が痛い。

正直に話した所で頭がおかしくなったと思われるかもしれない。

ここは申し訳ないが、嘘を付かせてもらおう。


「えっと・・・誰ですか?」


自分の声じゃない音声が脳内に響くのはちょっと違和感。

まぁ慣れていくしかないだろう。

日本語じゃない言葉がすらすら話せるってのも変な感じだ。


「・・・覚えてないのかい?」


「・・・はい」


吃驚した様子のエルフさん。

というかこの人の名前が思い出せない。

ゼジルの記憶を探るが、完全に忘れているようだった。


というか、部屋の入り口に立たせたままだった。


「入っていいですよ。座ってください」


「あ、ありがとう、失礼するね」


俺の変わり様に困惑してるようだ。

エルフさんは部屋にある椅子に座った。


「えっと・・・本当に何も覚えてないのかい?」


「はい・・・よろしければ名前を伺っても?」


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