「法王庁概論」 Ⅰ
【ライン基本法 第一条】
第1項 力は、知恵者に与えられる。
第2項 知恵者は、真の知恵者によって律せられる。
『交付契約説』は、ライン基本法第一条一項の『知恵者』を『法王庁律法師』と解し、同条第二項の『真の知恵者』を『法王』と解することを出発点とする見解である。
同説は、『力=魔法』は、森羅万象を司る全法秩序最高の存在である『法源』から、特定の選ばれた者にのみ『交付』され、その者は、法王庁の定めた方法、即ち、『契約=秘蹟』を受けることによって『力=魔法』を使うことが許されるとしている。
同説に拠るならば、法王庁が魔法を独占することを正当化できるばかりでなく、法王庁律法師以外の者が魔法を使用することを禁止することが可能なため、法王庁の公定見解となっている。
長い間、同説が法王庁が持つ強大な権力を背景に、唯一無二の支配的見解となっていたが、法王庁による魔法の独占が長期にわたるにつれ、かかる法王庁の魔法独占体制に対して疑いを抱く者達が現れるようになった。
しかし、魔法は、選良である法王庁律法師しか使うことができないという意識が支配していた当時においては、彼らの言葉が力を持つことはなく、彼らの殆どは異端者として、法王庁によって「処理」されることとなった。
人々は、法王庁の教えに反して魔法を使用しようとした者がどうなるかということを知っていたのだ。