魔王の戦い 6
「僕は魔王ですので金はいりません。交渉決裂ですね。」
「じゃ、じゃじゃあ大陸をもう一つ渡そう! 一つでは狭かろう!」
「そう思っているのならなぜ、今まで渡そうとしなかったんですか?」
「そ、それは・・・。」
「どちらにせよ、あなたを倒せばすべての大陸が手に入る。ですので、残念ながらこれも交渉決裂ですね。」
「な、ならば娘たちを渡そう! スタイルもよくて気立てのいい娘じゃぞ!
少なくとも、お主の付き人の者たちよりはよかろう。」
「僕は二人を形式上は付き人としているが実際はそう思っていない。あくまで仲間だと思っている。
娘だって付き人だって・・・心も意志も夢だってある。なのにそれを・・・王といううだけで同じ人間風情が未来を決めるなっ!!」
「で、でででは何が欲しいのじゃ!? 何を渡せば見逃してくれるのじゃ!?」
「平和の象徴。」
「へ・・・?」
「平和の象徴といっているんだっ!」
「ひ、ひぃ!」
僕はいつの間にか口調が強くなっていた。
いつもなら丁寧な敬語を使うのだが、どうやら脳のリミッターが解除されていた。
だがさすがに王様の発言には耐えられなくなっていたから、丁度良かったであろう。
こうしてわざわざ後ろに回って脅していなければ、マシロかアリスが殺そうと企てていたであろう。
なのだから王様にはたっぷり感謝していただきたいものだ。
と言ってもこの王様では理解できないだろうから諦めている。
「わ、わかった! 協力しよう! だから首から手を離せ!」
「わかりました。では、僕の話は終わりですのでマリーさんは連れて行きますね。」
「ちょ、ちょっと待て! なぜそうなるのじゃ!?」
「彼女は人質と思っていただいて構いません。それに彼女は――」
「魔王様。そこからは私の問題ですので私からお話しします。魔王様はお怪我の手当てをしてください。」
「では魔王様、お部屋にご案内しますのでこちらへ。」
僕たちは謁見の間を出て客室に戻ることにした。
怪我くらい、と思っていたがだいぶ血を流したようで左手の感覚が無くなってきた。
客室に行き椅子に座ってすぐに回復魔法をかけようと右手をあげたら、アリスが目の前に来た。
「私が回復するから。」
アリスは単簡に言った。
あげかけていた右手を掴み下におろす。
「待ちなよ。王様がこんなことたんだから私が責任取るよ。
私が回復するからアリスちゃんは見てなって。」
そこへマイさんが加わる。
二人とも気を使ってくれるのは有難いが、やってくれるのであればなるべく早くやってほしい。
「いい。だからこそ魔王軍の私がやる。私は人間は信用しない。」
「それは本当にすまないと思っている。だから少しでも力になりたいんだ。」
「とか言って、ただ単にエルに近づきたいだけでしょ?
私たちが人間のために倒れるまで力を使って街を守って、マリーさんの意思まで酌んであげたのにその仕打ちがこれじゃない。」
「だからそのために力になりたいんだ!」
「私は魔族じゃないし、この世界の人間じゃないからはっきり言って第三者。
その身から言うと、今の人間って魔族より悪魔のように見える。」
「いや、すべての人間がそういうわけでは――」
「たとえあなた達やマリーさんのようにそう思ってなくても、人の上に立つ人間がそれだと街は、いや国や世界はそうなってしまうのは当たり前。
実際のところ、今のこの国がそうだし。」
「・・・で、でも・・・。」
「マイ、みんなの言うとおりよ。アリスちゃんに任せなさい。」
「・・・はい。」
マシロの言葉が核心を突いた。
アイさんがマイさんを諭して喧嘩は収束に向かった。
僕はそこまで気にしていたわけではないが、王様は確かに話の分からない人だった。
ただ、人間がすべてそうだとは思っていない。
だから僕はいつかは、人間と魔族が共存できればって思っている。
なんだかんだ言って、マシロもアリスも王様を攻撃しなかったところは感謝している。
もし攻撃していたら、今頃どうなっていたことか・・・。
それよりも先ほどから思っていたのが、『アリスってやっぱり回復魔法苦手なんだな』ってしみじみ思った。




