大魔王降臨 2
「ぅひゃぁっ!!」
その人間であろう女は、私と目が合い奇声を上げながら後ろに下がる。
お尻を床に着けた状態で、上手いこと器用に手と足で後ずさりした。
その声に僕も思わず驚き声が出た。
「あ、ああああなたなんですか!? その頭の角はなんですか!?」
どうやら人間の女は、僕の姿にどうも驚いているようだ。
元々、人間には角がない。だが魔族はに、角がない者のほうが逆に珍しい。
そんな中、僕には三本の角がある。ちなみに魔族の中でも三本は珍しい。
どうやら彼女は、僕に三本角があることに驚いているのであろう。
「ああ、これですか? 僕には生まれつき三本角があるんです。父達と同じバフォメットのような角と、あとこのユニコーンのような角は魔族では珍しいらし――」
「『魔族』!? あなた魔族なの?」
「え、ええ、まあ一応。」
「・・・フ。」
「あ、あの・・・どうされました?」
「フフ・・・フフフ。 やったぁ―!!
じゃあ早速だけど、何か命令聞いてもらおうかしらね!」
「へ、え・・・? ど、どうしてですか?」
「だってあなた、私に召喚されたんだから当然でしょ?」
「召喚って・・・でもここは・・・。」
「んー。 どんな命令にしようかな。
・・・ってここどこ?」
キョロキョロと辺りを見渡す人間の女。
ここがどこなのか理解できていないようだ。この場所にどのように来たのかわかないようである。
だがそれは僕も一緒で、突如として現れた彼女にこちらとて驚いている。
目も眩むほどの光。巻き起こった風。そして彼女の下にある光った魔法陣。
そして彼女は辺りを見渡していたはずだったが、いつの間にか床に向いたまま止まっている。
「この『魔法陣』、私が書いたものと同じだ・・・。 あなたが書いたの?]
「いいえ。 父が書いたもので僕は召喚などの黒魔法系は苦手で・・・。」
「ここは・・・どこなの?」
「あ、ここは魔王城です。
そしてここは『謁見の間』です。まあ用も無ければここに来る人はいないので、今では『無駄部屋』とも言われています。」
「なるほど。 魔王城ね・・・って、ええぇぇーっ!?」
彼女はとても驚いた様子で、こちらを疑い凝視している。
しかしすぐに立ち上がり、スタスタとこちらに近づいてくる。
彼女の身に着けている衣類はあまり見かけない。いや私は初めて見るものだ。
黒色の長い髪に合った、首から手首と足首まで覆う黒色の衣類。身体に緩くもなくきつくもない、ほど良い感じ。肩から手首にかけてと腰から足首にかけて、白色の模様があしらわれているところがこの衣類の装飾なのだろう。上半身と下半身で別れているようで、若干僕たちの着ているものと似ている。
色合いといい、装飾といいシンプルだがよく見ると良質な素材のようで、機能性にも優れなかなかモダンなセンスが良く、何と言ってもナウい。
そして彼女は、僕の正面まで来て立ち止まった。
目線の位置は同じだが身長なら僕のほうが確実に、いやだいぶ・・・きっと大きいに違いない。そうだ、目線の位置が同じでも、僕には角の高さがあるから僕のほうが大きいはずだ。・・・そう信じたい。