私の知らない世界のページ 5
「マシロっ!」
どうやら彼らは私のことに気づいたようだ。
すぐにアドルフさんが、私の飛んでいる位置まで跳んできて抱きかかえてくれた。
地上に戻ったが、悠長に会話を楽しむわけにはいかない。
「マシロお嬢様、後程詳しくお話をお聞きします。このまま掴まってていただけますか?」
「わかりました。ありがとうございます。」
「では行きましょう。」
すごい速さで彼が動き出した瞬間、木の陰からたしかに見えた赤いマフラー。
「あ、待って!」
思わず声をだし止めてしまった。
その声にアドルフさんは止まった。
アドルフさんも木陰にいるアンデットモンスターに気が付いたようで、私とピエロを地上に下ろした。
周りには、他のアンデットモンスターはいない。鎧もしていなく、武器も持ってない。
「アドルフさん・・・あのアンデットモンスターは・・・。」
私の話を聞く前に、アドルフさんは彼に近づいていった。
アンデットモンスターの目の前で立ち止まった。
突然、アンデットモンスターは膝から崩れ落ちるように前のめりに倒れこんだ。
アドルフさんが攻撃したいように見えた。
だが、アンデットモンスターは頭を地面につけどけ座するような状態になっている。それもアドルフさんに対して。
あれは・・・先ほどのアンデットモンスターだ。
片腕が無く赤いマフラーをしていて、洞窟の中で私にいろいろ教えてくれた。
だけど、自我が無くなってしまって私を襲ってきた。
でも、そのアンデットモンスターがアドルフさんに対して土下座をしているように見えてしまう。
「・・・どういたしまして。」
かすかに聞こえたアドルフさんの声。
アドルフさんがそう言うと、アンデットモンスターは動かず砂のように宙に舞っていった。
暗い夜のような世界のはずなのに、キラキラと輝きそれはまさに夜空に流れる天の川のような天に繋がる星の川のようだった。
アドルフさんは、こちらに戻り私を抱え上げすぐに出発した。
そして一瞬にして先ほどまでの位置から離れすぐに見えなくなった。
いつのまにか周りは太陽のある世界に戻っていた。アドルフさんに抱えられて見える世界は、新幹線のように景色が流れていく。
「アドルフさん・・・さっきのアンデットモンスターは何か言ってましたか?」
私の問いに対して、何かを飲み込むような間が少しだけ流れた。
そのあとにアドルフさんは口を開いた。
「ずっと昔に、王都の城下町で通行の邪魔をしてしまいました。
彼のお父さんも大戦で私たちが殺してしまって、彼の食べ物まで台無しにしてしまいました。
・・・彼、大きくなっていましたね。」
その言葉を聞いた瞬間私は、涙がこぼれてしまった。
何も関係ない私だが、アドルフさんの優しさ、そしてあのアンデットモンスターの無念が晴れたことに対して嬉しかった。
心なしか、アドルフさんも泣いているように見えた。
安心したためか急に睡魔が襲ってきた。
昨晩は本を読んでいたせいかあまり寝れなかった。
魔法を使ったせいもあるだろうか。お腹も減った。そういえば今日の朝食はなんだろう。
さっき、私にはアドルフさんの声しか聞こえなかったが、あのアンデットモンスターはお礼を言えたのだろうか。無念が晴れて成仏したのだろうか。
気になるが聞いたら野暮だろう。
それに今はなんといっても眠い。
アドルフさんの腕の中は落ち着く。ちょっとだけ、ちょっとだけでいいから寝させてもらおう・・・。
「アドルフさん・・・ありがとう・・・。」




