黙示録第四章 先にあるのは
薄暗い空間に、足音だけが響く。
蝋燭の光に照らされて、闇の中からたくさんの墓標が浮かび上がる光景は、
この上なく不気味で、だがそれでいて・・・取り込まれそうな感覚がある。
クリーフィは歩みを止めながら、軽く掲げている燭台を、時折あたりに向けた。
この部屋は元々、教会内で死者を埋葬するために出来たのだが、今ではそのような依頼は少なくなり、結局墓標だけが取り残される形となった。
もう先ほどのような焦燥感はない。
ここにきて妙に落ち着いた心で、クリーフィは前方に位置する、
最も大きな大十字架のあるはずの場所、を見上げた。
あと見ていないのは、ここだけ・・。
ほぼ全ての墓標の群れを見てまわり、最後に残った場所だ。
クリーフィは、あくまでもゆっくりと、そこへと歩み寄った。
小さな段差を、上る。
「・・・?」
今、足の先に、何かが当たったような感覚が・・。
確かな確信が、足から伝わってきたのを感じて。
そしてクリーフィは、大十字架へと蝋燭の灯りを向けた――――
「!」
驚きの表情を浮かべた後、思わずクリーフィは上りかけた段差を急いで降りた。
蝋燭の灯りを再び向ける。
そこにいたのは・・・少年、だった。
年はクリーフィとほぼ同じか、ひとつ下くらいの少年が、
大十字架の小さな段差の上に、もたれかかるようにして倒れていた。
そして灯りに照らされたその少年の髪の色は。
「白い髪の、少年・・・!」
「っう・・・」
ほのかな明るさに気が付いたのか、少年は小さな声を出したと思うと、
虚ろにも見てとれるとろんとした瞳で、ふとこちらを見た。
(神よ・・・貴方は私に・・・)
(何をさせようと・・・?)
「アナタは・・・?」
少年の問いかけに、クリーフィは戸惑ったように相手を見た。
何と言おうか迷っていたが、少ししてから、こう切り出した。
「・・私の名は、クリーフィ。貴方の名は・・・?」
「僕の・・名・・・。」
クリーフィの言葉に、考えるように目を伏せた少年は、少したつと顔を上げて「・・いなる」と、何かを呟いた。
「っえ・・・?」
クリーフィは目を開けて、もう一回聞こうとかがんで同じ目線になる。
すると少年は、今度はしっかりとした声で言った。
「【大いなる】・・・」