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大いなる  作者: Y.Y
3/6

黙示録第二章 『声』

 大きな造りの、光をよく取り込みやすくなっている食堂。

昼食の席は、令書の内容のことがすぐさま取り上げられた。


「やっぱり、罪人なのかなぁ。その子。」

 隣のロナが、玉子焼きが刺さったフォークをくわえながら言った。

 こちらの修道士の食事は、魚以外の肉は禁止されている。

「国王陛下がじきじきに、でしょう?無難なのはそのくらいよ。」

 あと、食べてから言いなさい。フォーク銜えながら喋るの、行儀悪いわよ。

クリーフィが白パンを一つちぎる。

「案外、そうでもないかもよ・・・」

「「!」」

 いきなり後ろから聞こえてきた声に驚いて、クリーフィがちぎった物を落としそうになり、ロナは食べていた玉子焼きが喉につかえた。

「驚かせないでよ・・・フェテス。」

 クリーフィはむせかえるロナの背中をさすりながら、疲れた声で後ろを向く。

そこにいたのは、灰色の髪がちらりと出た、かなり大人びた少女。

ごめんなさいね、とフェテスは軽く頭を下げた。

「隣、いい?」

「ええ。」

「ありがとう。」

 テンションが低い彼女達の会話は簡素だ。ロナはそう思った。

「・・・で、そうでもないって何が?」

 やっとつっかえが取れたロナが、フェテスに聞く。

「うん・・・隠し子とか、国が秘密にしている人物だとか。」

「・・・最初はともかく。その線もあるけど・・・もうやめましょこの話は。」

 首を振ってため息をつきながらクリーフィが二人に言う。

「え〜何で〜?面白そうじゃん。」

 ロナが頬を膨らませて怒る、というか駄々をこねる。

「実際見つけなきゃ意味ないでしょう?無駄に時間が―――――」

ロナを一蹴したその時。



 クリーフィが、その場で硬直した。

そして瞬間、いきなり頭の中で『声』が―――


《汝 大天使に仕えし者よ》



「・・クリーフィ?」



《地下に眠る 迷えし子を 救えよ》



「・・ちょっと〜?・・・クリーフィ〜?」



《さすれば 汝――――》



「クリーフィ!」

「!」

 ロナの声に、クリーフィはハッと顔を上げた。

見れば、目の前にロナの顔が、心配そうにこちらを見ている。

「・・ちょっと大丈夫?朝の祈りで寝不足なのなら、寝てきてもいいのよ?」

 深刻そうな声音でロナが話しかけてくる。

それに答えるか、のようにクリーフィの目が伏せがちにされた。

 だが今は、頭が霧がかかったようにボンヤリしていて、ロナの声が酷く聞き取りづらい・・。

魂が抜けたように、何も考えられなくなっていて、意識も少し朦朧もうろうとしている。

貧血になったようなクリーフィを、真剣な表情で見つめていたフェテスは

「ロナ、ちょっといいかしら。」

「え?あ、うん。」

不意にロナを下がらせた。

そうすると、戸惑うロナを横目に、後ろから、虚ろな表情になっているクリーフィの肩を持って同じ目線になり。

静かに彼女の頭の後ろで、

「大丈夫?」

そう、囁いた。

 するとクリーフィが驚いたように息をのみ、目を見開き、表情がハッキリしたものになる。

それを見て、安心そうにフェテスが再度

「大丈夫?」

と声をかけた。

だがクリーフィは先ほどの表情のままで

「――――」

・・・今何かを呟いたように唇が動いた。

 それに気付いたフェテスが、眉をひそめた。



と同時に。



「・・・っ行かなくちゃ・・!」



 苦しそうにそう言い残し。

クリーフィは勢いよく立ち上がり、走り去って行った。


「っクリーフィ!?」

 ロナはそれを見て、クリーフィを追おうとした。

が。

それはフェテスの腕がスッと伸び、前へ出ようとしたロナを押し留めた。

 フェテスは深刻そうな表情のまま、クリーフィが走っていった方向を見ていた。


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