黙示録第一章 教会・礼拝堂にて
ピチュ、ピチュ・・・ピチュ
静かな、穏やかな風景。
外では涼やかな小鳥の声が聞こえる。
冷えた空気を感じながら、金髪の修道服の少女―――クリーフィは祭壇で祈りを捧げていた。
「っ・・・」
ステンドグラスの窓が作る光の彩りに、耐え切れず目を開ける。
ゆっくりと開かれたその先には、神々しく光に包まれる、窓を中心にそれぞれ横に立つ石像の姿が見えるのである。
そして一歩、祭壇から離れると、彼女は雄雄しいその姿に、自然と跪いた。
大天使とされる、火を司るミカエル。風を司るラファエル。
それを信仰し、崇め、その代わりに加護を受ける【アーク教】は、二大宗教と呼ばれる程の大きな宗教だ。
クリーフィも、【アーク教】の信者の一人である。
「?、騒がしい・・何かあったのかしら。」
先ほどから聞こえる、ドタバタとした足音が多い。
気分を害され、彼女は思わず少し眉をひそめた。
「あ、クリーフィ!此処にいたのね。」
小走りで入り口へと駆け寄って来たのは、同じ信者のロナだ。黒髪が光を反射する。
「・・何かあったの?」
朝からここにいたので、外の事も気にせずやっていたせいで、事態がまだよくわかっていないクリーフィに対して、何かって・・、と呆れ顔のロナ。
「国のお偉いさんから令書が届いたのよ!本堂の方よ、急いで!」
「・・・ふむ、全員、揃ったようだな。」
ネルフ神父が、大きな祭壇から、修道士達を見回した。
先ほどクリーフィがいたのは、別の比較的小さな礼拝堂で、こちらは本堂と呼ばれる。
「先ほど、国王陛下からの令書が、このエルシュの教会に届いた。」
国王陛下、という言葉に、皆が一斉に騒がしくなる。
国王からのじきじきな、というのは、珍しい事態であり、由々しき事態を指す。
「嗚呼、静まって、静まって・・・・うむ。それで、この令書には、こう書かれてある。」
神父の言葉に、誰もが静まり、耳を澄ました。
「・・・『銀髪の少年を発見次第、即座に国へと引き渡すように』・・」
「?・・・少、年?」
事態に対してずいぶんとあっけらかんとした内容に、またザワザワとどよめきが走る。
「保護の間違いじゃなくて・・国に引き渡すの?」
ロナがおずおずと呟く。
「ならその子、罪人なのかしら・・。」
クリーフィがロナの言葉に相槌をうちながら、静かに答えた。
「・・聞こえたかな、皆。では、昼食にしようかね。さあさあ、食堂に行きましょうか。」
神父が、場をまとめるために軽く手を叩きながら、高らかにそう言った。