体温と熱の関係について
彼女(ということにしておく)の家らしい木造の薄暗い部屋の中には、少々我慢して腰かけることにした。
暗いので、なんだか畳が汚い気もするし、だいたい自分の部屋はフローリング使用である。
ジーパンでよかったなあと考えていると、彼女はいなくて隣の部屋かわからないが、なにやら物音がしていて、お茶でも入れてるのだと思って顔を上げた。
天井には口が炎の物体が、目玉の飾りを自分に向けていた。
目玉が炎に照らされて光っているのは絶対に生きてるからではないと頭を振った。
「あったかいお茶を飲みなさい」
「ありがとうございます・・・」
お茶は温かいので、彼女の手は熱くはないのか気になった。
ジーパンでの正座は辛いが、彼女がお茶をすすっているのに興味が惹かれる。
着物は簡素なもので、髪の毛はそういえばよく見ていなかったことに気付いた。
長いのか?
うまくも不味くもないお茶を飲み終えるタイミングで彼女が大きな口を開いた。
「あなた、人間?」
「はい」
え?
あれ?
こんなときって、どう答えるのだろうか?
彼女は人間ではないのはもう見ただけでわかるのだ。
だが彼女のオーラ的な中身はたぶん、その鋸のような歯とは関係なくて優しいのだろうなと思う。
彼女は可愛らしく小首を傾ける。
「あなた、変だわ。冷静なのね?」
私は手元の空になったお茶碗を見る。
吃驚しすぎて冷静になったのだろうか。
彼女は天井を向いた。
「あなたもそう思うわよね」
「おう、俺様を見ても何も感じないのかよって、そういや聞いてなかったなあ」
名前、なんていうんだい。
そう質問されたのだった。