とある荒れた街路にて
がたん、と車体が揺れて目を覚ます。
馬車を操るその温和そうな雰囲気の青年は、眠そうに欠伸をし、目元を擦りながら辺りを見渡すが、相も変わらず果てのない殺風景な草原と、整地がおろそかな一本道しか目に入らない。恐らくは馬車の車輪が何かに乗り上げたのだろうと、馬車の後ろを覗き込んでみると、彼はまた、大きく欠伸を漏らす。
と、そこで彼は人の視線を感じて振り返った。くたびれた幌馬車の荷台から、黒いローブで全身を覆った人物が目元だけを覗かせて恨めしそうに彼を睨んでいる。彼と同じように寝ていたのか、それとも単に揺れに気分を害しただけなのかはわからないが、とにかく機嫌を損ねたのは確かなようだった。
「ごめんごめん。この陽射しがあんまり気持ちいいものだから」
困ったように笑いながら頭を下げる彼に、黒ローブはふいっと顔を背ける。彼は苦笑しつつ前を向き、空を見上げた。
「でも今日は本当にいい天気だよ。次の村に着く頃には日は落ちてるだろうし、君も今のうちに出てきてこの陽射を味ってみたらどうだい?」
「断る」
顔も向けず、不機嫌を隠す気もない声色でにべもなく即答した。
「そう、残念。でもまぁ安心しなよ。場所が場所だけあって随分と道が荒れてるけど、ここからはちゃんと手綱を握ってるから」
と、言った傍から前方に結構な深さの窪みを見つける。彼は両手でしっかりと握った手綱をくいっと引いた。
その結果、馬は進路を微調整し、車輪は見事に窪みに直行。がたんと大きな音を立てて馬車が跳ね上がった。
「……」
「ごめん、今思い出したけど、僕は馬を御するのが下手なんだ」
刺々しい視線が突き刺さるのを感じて、頬をぽりぽりと掻きながら乾いた笑いを上げる。荷台の黒ローブは、片手で頭を抱えながら、初めて彼に顔を向けて言葉を放つ。
「……しっかりしろよ、『勇者様』」
彼……『勇者様』は、困ったように小さな苦笑いを返し、黒ローブは呆れたように大きな溜息をついた。
今から8年ほど前……『その日』と同時滅びた、かつて大陸を統治していた大国の暦では538年の秋、2月目の半ば頃。世界に突如として魔王が現れた。
何の前触れもなく現れた彼に全世界の魔物は支配された。凶暴化した野獣、神話にしか出てこないような怪物、どこからともなく現れた誰も知らない異形達は、土地の大小、人の多寡に構わず、手当たり次第に人を襲った。
当然、人間もそれらに対抗したが、生憎と人は魔物よりも弱かった。それでいて魔物は、いくら倒してもどこからともなく沸いてくる。その上、倒すたびに強く、賢くなっていった。
最後の希望とばかりに魔王暗殺に精鋭を送り出す事6度。その全てが体の一部分のみにされ、魔王の署名が刻まれた状態で、滅ぼされた大国に代わり当時戦を主導していた各国の王に届けられた日、人類は一度生存を諦めた。
その日に、滅びが何の前触れもなく現れたのと同じように、突然一人の青年が現れた。
彼は剣一つで全ての魔物は生きたまま捻じ伏せ、ただ一人、一匹の命すらも奪う事なく。現れてから僅か一月で魔王を討ち、人類を救った。
その武勇に、人々は彼を勇者と呼び崇め、その偉業を称えて彼の現れた日を新たな新年と定めた。
現在は新暦1年。世界を救った勇者は、一度も血を浴びた事のない剣と帰路で得た古びた馬車だけを持って、まだ旅を続けている。
あー、始めまして。身内ではシリアスラブストーリーとディフェンスに定評のあると言われているネキアです。嘘です。そんな評価された事ないです。というかシリアスラブストーリーとか書いたことないです。全部嘘です。下手したら名前も嘘です。普段は納豆混ぜてごはんにかけて日常を過ごしています。
そんな私ですが今日このたび、まだ短い拙作ではあるものの、晴れて小説家になろうデビューを果たす事ができ
面倒になったのでとにかくこれからよろしくおねがいします。




