第7章 極寒の雷撃1/3
自分の家で寛いでいるアビス。
そこに、村長がやってきて
ある話を持ちかけてくるのだった。
そしてやる気の無い目つきの
太刀使い、フローリックと共に
柔白竜の討伐に向かうが……。
「うぁ~~……」
ようやく村に戻ったアビスは大欠伸をかきながら自分の家のベッドにその身を投げ出す。
見てるだけで危険極まりないあの連中とのリオレイアとの戦い。
そして、再び現れた殺人ハンター。そして、救出するも、突然殴ってきたミレイ。
ただでさえ深緑竜の討伐だけで体力を使い果たしていたのだから、もう今日はきっと彼はまず外に出る事は無いだろう。
外は既に太陽が沈み、闇がこの大地を支配する。しかし、全てのハンターがこの闇に従い、眠りに入る訳では無い。
この時間から酒場で仲間同士で飲む者、また、同じく酒場で狩猟の手続きをし、闇が支配する狩場へと足を運ぶ者もいるのである。
しかし、アビスにとってはもう夜は夜そのものである。疲れきった体ではもう闇の世界を歩き回るのはもう不可能であろう。
瞼が徐々に重くなり、同時に全身に倦怠感が走る。自由に動かない手を何とか動かして防具を脱ぎ捨て、それをしまいもせず、そのまま床に放置したまま、ベッドに倒れ込んだ。
「疲れた……もう無理……」
アビスはうつ伏せになりながら枕に顔を押し当てる。そして数分、意識が完全に睡魔に取り付かれるその時、睡眠を邪魔するかのようにドアからノックの音が聞こえた。
「誰だ……、こんな時間に……」
夜にしてはまだ遅い時間では無いのだが、今のアビスにとっては既に夜中のようなものだ。
本当ならばそのままノックをする者を迎えないでそのまま寝てしまいたいと思っていた。だが、今は実際にはまだ睡眠の段階には至っておらず、一応起きてはいる為、嫌々ながらもドアへ近づく。
「あれ? 村長。どうしたの? こんな夜に……うわぁ~……」
ドアの前に立っていたのはこの村の村長だ。アビスは大欠伸をかきながら目を擦った。
「寝てる所を邪魔して悪かったかな?」
欠伸をかいて涙を拭いているアビスの様子を見て村長は睡眠――実際はこれから寝ようとしていた所――を邪魔した事に対し、やや淡々とした態度で詫びる。
普通ならば人が寝ている所を無理に起こした場合は、それ相応の詫びをし、そして用事を次の日に持ち越すであろう。よほど急な用事では無い限り。それに、まだ遅いとは言い難いが、人間達が眠りにつく一般的な時間帯、夜なのだから。
だが、村長にはそのような様子はあまり感じられない。逆に、何か重要な物を持っているような、そのような雰囲気が感じられるかもしれない。
「いや、いいよ。まだ寝てた訳じゃなかったから。とりあえず中入ってよ」
村長はアビスにとっては一応目上に当たる存在だ。わざわざ自宅にまでやってくると言う事は何か大事な話でもあるのかもしれない。そう思ったアビスは眠気を理由に村長を追い払おうとせず、自室の中央に置かれたテーブルへと案内する。
「んで、村長。なんか話あんの?」
アビスはある程度自分が眠いという事を外に漏らさないように振舞ってはいるが、やはりどこか眠たそうである。
「今のハンターとしての生活はどうだい? 何か不安があったり、物足りないとか、そんな心境に見舞われた事は無かったかい?」
突然ハンター業の話をし出す村長。だが、ハンターが生業であるのが一般的なこの村では重要な話と言えばそれしか無いのかもしれない。
「ん~そうだなあ、別になんかやばい事があっても俺はいつも上手く切り抜けてきた事だし、それに何か足りないと言えば……いや、別にそんな事意識した事無いから、分かんないよ」
今までアビスがやってきた狩猟が今、彼自身の頭に過る。
青鳥竜から鱗を剥ぎ取っている最中、黄甲蜂に背後から刺され、麻痺で倒れている最中に偶然通りかかった猫人輸送隊にキャンプ場へ運んでもらった事。
砂泳竜を何とか砂から音爆弾で引き摺りだそうと、勢い良く投げつけたが、間違ってペイントボールを投げてしまい、結局逃げられてしまった事。
翠牙竜の長を充分に弱らせ、予め仕掛けておいた捕獲用の麻痺罠に見事引っ掛け、いざ捕獲しようと捕獲用麻酔弾を投げたつもりが、また間違ってペイントボールを投げてしまい、あたふたしてる間に罠が壊れ、結局討伐難を逃れた事。
蜂の巣の下に零れ落ちているハチミツを採取している最中、いきなり上空に空の王者である通称火竜と呼ばれる飛竜が現れ、慌てて岩陰に隠れ、火竜に見つからないよう、ずっと震えながら隠れ続けていた事。
あげれば切りが無い今までの狩猟の思い出が次々と浮かんでくる。
だが、今アビスはここにいる。理由は明白である。これらのピンチは全てアビス自身、或いは何らかの外部の力で回避出来ていたからである。
ハンターの世界ではピンチという言葉は命と密接な関係を持つと言っても過言では無い。どこからともなく、或いはハンターの何らかの行動でやってくる予測不可能な危機は、それを瞬時に解決出来ない未熟者のハンターを悉く黄泉の国へと送り届ける。
「なるほどねえ」
明らかに「自分は大丈夫だ」みたいな事しか言わないアビスであるが、それを聞いて村長はただ頷くだけであった。
「んでさあ、それが何かあったの?」
いまいち村長が何を伝えたいのか、アビスにはよく分からなかった。
「ここら辺の村じゃああまりハンター達が集まらないから、結局ここでの狩猟で学べる事と言ったら、ただの狩猟の方法だけだろう? それに……」
その後、村長は狩猟と、そして仲間について長々と、そして真剣にアビスに話し出した。
単独での行動では全ての状況を全て自分1人で解決しなければいけない。それはそれで狩猟そのものの能力は向上するかもしれない。
しかし、ハンターが相手にしているものは、強大な力を持つモンスターだ。特に大型の種に属する飛竜がその気になれば、噛み殺すのも、蹴り殺すのも、或いはその巨体を投げ出して圧殺するのも非常に容易い事だ。
それにこの村の周辺はモンスターが少なく、何体ものモンスターをいっぺんに相手にすると言った事態はまずあり得ない。
だが、村の向こうの世界にはこの村が受付しているクエストとは比べ物にならないくらいの過酷な世界が広がっている。
数で襲われれば人間は強大なモンスター相手に為す術も無くなるであろうし、1対1でも、もし人間側が負傷すれば息が残っていたとしても逃げる術が無くなり、そのまま餌と化するのがオチだろう。
その時に大きな助けとなるのが、間違い無く仲間であろう。自身の背中を守ってもらえる事は、どれほど心強い事か。通常全方向を常に細見出来ない人間――飛竜も恐らく同じだろうが――は背後からの攻撃が一番問題視される事である。
纏めて相手にしているハンターにとって死角からの襲撃は極めておぞましい事だ。数を相手にしている場合はどうしても目の前のモンスターばかりに気を取られがちだ。それが小型のモンスターならまだいいかもしれない。
しかし、一撃必殺の能力を誇る飛竜に囲まれれば視界からその飛竜がいなくなると同時にどこから攻められるか把握が難しくなる、或いは出来なくなる。それは同時に、死の宣告を受ける事にもなるのだ。
仲間の存在によって死角を消せるだけでは無く、大型のモンスター相手に1人だけで戦っていては、体力にも不安が残るはずである。
それも仲間達と協力し合う事によって十分カバー出来るものだ。
助けられても決してそれは恥とは言えない。助けられたら後で助ければいいだけの話だ。
「確かに今までは殆ど1対1で戦ってたさ。たまにちっちゃいモンスターどもの邪魔もあったけど……。でも……やっぱり仲間無しじゃあ、いつかは俺も……終わっちゃうのかなぁ」
村長の長く、そして現実的な話を聞き終えたアビスは、もし自分が単独での狩猟をしている際に負傷してそのまま帰れなくなったら……と想像し、自分の最期の姿が頭に浮かんだ。
「君にはもうちょっと世界の広さを知ってもらいたい。そしてこの村の外で色んな仲間と出会って、もっとハンターとしての自信をつけてもらいたい」
「だとしたら俺はこの後どうしたらいいのさあ?」
「アーカサスの街は知ってるか?」
突然村長の口から出た村から遠く離れた地方にある街、アーカサス。ここ、ドルンの村とは比べ物にならない規模を誇り、その人口も『街』と『村』では比べ物にならない。
ハンター業も非常に盛んであり、飛竜達の情報の中心地と言っても過言では無いくらいのクエストが揃っており、各方面からは腕自慢のハンター達がその強大な力を持つ飛竜を狩猟しようと、その街へとやってくる。
熟練したハンターにとってはその街はある意味聖地とも呼べる。
「あぁ、知ってるよ。確かあのでっかい街だよな?」
「そうさ、今度そこに移住してハンターの本当の世界を見てみるのはどうだ? きっと君のためになると思うぞ」
「いや……行くのは俺もいいとは思うんだけど……ちょっと……皆と離れるのはちょっとなぁ……」
これから離れるであろうこの村の者達が頭に過ぎる。
いつも酒場で笑顔でクエストを提供してくれていたメイド。
ハンターに欠かせない鶴嘴や素材玉等を比較的安価な価格で提供してくれた道具屋の兄さん。
アビスがハンターになるまでの間、厳格ながらも様々な狩猟の心得を教えてくれた教官。
その他の村の人達の想い出が、村を出るのを邪魔するような、少し哀愁を帯びた感覚を覚える。
「何も永遠の別れって訳じゃないだろう? 寂しくなったらいつでも帰ってくればいいんだから」
「……あぁ。ちょっと考えてみるよ」
決心したかのように少し下がっていた目線を村長へと戻した。
「その意気だ。後、それと明日の事だけど、確か明日はヒルトップの雪山に行くって言ってたよな?」
「あぁ、そうだけど?」
「実は君に助っ人がつく事になったんだよ」
「助っ人?」
突然のその言葉にアビスは首をかしげる。
「そうだよ、オイラが今日頼み込んだんだけど、その人はフローリックって言ってこの村じゃあもう一流のハンターだ。彼と一緒に明日雪山に行ってみないか? 彼ならきっと君にいいアドバイスを出来ると思うから。」
「助っ人かぁ、分かったよ、じゃあ明日ね」
アビスはさっきまで眠気を殺して話を聞いていたが、ここに来て一気に眠気が復活した。睡魔のせいでアビスはその助っ人に対してあまり深く考えず、話を終わらせようとした。
「そろそろ限界かな? それじゃ、オイラもそろそろ」
村長がドアを開け、そしてドアを閉める前に既にアビスはベッドに沈み込み、そして今度こそ完全に睡魔に取り付かれた。
次の日の朝、早速アビスは酒場へと向かう。道具屋で幾つかのホットドリンクを買って。ホットドリンクは寒冷地帯で冷え込む身体に暖かさを提供する為に作られた薬剤である。
「昨日言ってたフローリックって人、どこにいんだろう? 昨日眠かったからちゃんと聞いてなかったし……」
アビスは少しだけ昨日の事を後悔していた。眠気に負けてフローリックの事をちゃんと聞かなかった為に彼がどのような外見なのか、どこで待っているのかと言う肝心な事が分からず、今日になって焦る。何気に性別も分からない。
酒場に到着するも、目的の人が分からなければ、声をかけるのも難しい。朝から飲んでいる者もいれば、仲間同士で何か打ち合わせをしている者達もいる。だが、誰が目的の人かは、分からない。
どうせならここでフローリックの名をあげ、その人に直接出てきてもらおうと言う考えも浮かんだが、アビスにはそんな度胸はあまり無い。慣れた村での生活とは言え、まだそれは厳しいかもしれない。
「あのぉ~すいません……」
アビスは受付のメイドに申し訳無さそうに小さめな声で訪ねようとした。
「何かありました?」
メイドは慣れた笑顔でアビスに問う。
「実は、ある人探してんですけど、フローリックって人、どんな人か知ってますか?」
「あ、はい、その人でしたら――」
「それってオレん事じゃねえのか?」
メイドがその目的の人が今どこにいるかをアビスに伝えようとした瞬間だった。カウンター越しにいるメイドに尋ねたアビスの隣にいる樽製のグラスを持ったままアビスを睨みつける。
アビスはすぐにその男に目をやった。低く張りのある声に、金髪の短髪、特にこれと言った特徴の無い黒い半袖シャツ、そして他者の言う事に対して素直に「はい」と言わなさそうな死んだ魚のような目をしている。
「多分、お前がアビスだろ? 昨日村長からアビスって奴と一緒に行けって言われたからここで待ってたんだよ」
アビスはフローリックを知らなくとも、フローリックはアビスの事は知っていた。村長からは髪の色や顔立ちを予め聞かされていたが、それ以前に数年前鋼龍に破れたゼノンの弟と言う事でこの村でアビスの名を知らない者はいない。
どうやらアビスはこのフローリックと言う非常に性格の悪そうな男をずっと待たせていたらしい。
「そうだけど……えっと、今日は雪山に行くんだけど、一緒について来てくれるって本当なの?」
「今言ったろ? なんか村長がお前と行け行けって煩くてなあ、特別に付いてってやる事にしたぜ。オレもちょっとやりてぇ事あってな」
やる気の無さそうな目つきは相変わらずで、面倒そうに村長に言われた事を話した。
「やりたい事って?」
「オレの太刀だよ。電気袋があと1個ありゃあもっと強化出来んかんなあ」
あまり細かく話さず、要点だけを言うフローリック。アビスもそれがどう言う意味なのかあまりよく分からなかったが、とりあえず電気袋を欲している事だけは分かった。
「これから狩りに行くモンスターって…何?」
「柔白竜だ。あの白くて気持ち悪りぃ奴、いんだろ?」
柔白竜とは、真っ白い胴体に、蛭のような頭部を持つ飛竜である。目も無く、耳も無く、視覚や聴覚が全く発達していない代わりに非常に嗅覚が発達したモンスターであり、獲物から放たれる臭いを元に獲物を性格に仕留める。
「じゅう……白竜? 俺まだ見た事無いんだよなぁ……」
見た事も聞いた事も無いモンスターをこれから討伐しに行く為、アビスは少しばかり恐怖を覚えた。一体どんな攻撃をしてくるのか、飛竜はそれぞれ個性的で尚且つ一撃で死に追いやる攻撃手段を持つ。予めそれを予測していなければこの地を生き抜くのは難しい。
「何ビビッてんだよ? 誰だって初めて見るって経験ぐらいあんだろ? 初めてだからってビビッってねえで、ちゃんと相手見て、そんでどうやって戦うか考えんのが、ハンターってもんだろ?」
「まあ、そうだけど……」
フローリックは一度自宅へ戻り、風圧に耐えられるよう、脚部に重みを置いて作られた双角竜の装備、そして愛用の太刀、斬破刀を持ち、アビスと共に雪山へと向かう。
小舟がやがて極寒地獄、ヒルトップの雪山へと到着する。麓は緑溢れる穏やかな平地であるが、すぐ上を見上げれば真っ白い雪がその巨大な山を覆い尽くしている。
「うわぁ……寒そう……」
アビスはただ思った事を、そのまま口に出した。
「所で、念の為聞いとくが、まさかお前、ホットドリンク忘れたってこたぁねえだろうなぁ? 返答次第じゃあお前、あん中突き落としてやっからなぁ」
フローリックは眉間に皺を寄せて隣でただ呆然と雪山を眺めるアビスに訪ねた。すぐ背後に映る、湖に親指を向けて。
「そんな訳無いだろ? ほら、ちゃんと。」
アビスは左手を必至で顔の前で振りながらポーチから赤い液体の入ったビンを皺を寄せているフローリックに見せつけた。
「良かったぜ、流石のお前でも忘れもんだけはしねぇみてぇだなあ。でもたまにいんだよなあ」
突然フローリックは溜息を吐きながら歩き出した。アビスも隣をついて行く。
「普通雪山っつったら誰だって最初は飛竜とかそう言うの以前に目茶寒みぃとこだって思うだろ?」
「あぁ、そう……だよね」
やる気の無さそうな目とは対照的に、何か苛々感を持ったその声色。アビスは少しこの男を怖く感じる。
「なのによ、たまにいんだよ、ホットドリンク忘れてくるボケが。そう言う奴見るとオレぜってぇ飛び蹴りかましたくなんだよなあ」
2人は麓にぽっかりと開いた雪山の山頂へと続く洞窟へと足を踏み入れる。そして、2人は持参したホットドリンクを飲み干し、空になったビンを足元に捨て、周りの雪を足で集めながらビンを埋める。
体内に吸収されたホットドリンクは、内側から皮膚を温め、外気による皮膚の低温化を防ぐ。但し、保温効果が強すぎると体内の損傷を招く為、ホットドリンクは熟練した職人によって作られる。
「別にそこまでしなくても……」
確かに命をかけて戦うであろうハンターが、忘れ物と言う心の油断をするものでは無いだろう。だが、アビスはまだまだ子供、と言う歳では無いが、少年であり、まだそこまできつい考えを持つ年頃では無い。
フローリックの飛び蹴りを喰らった被害者が頭に浮かぶ。
「いんだって。準備も出来ねぇ奴が飛竜ぶちのめすなんて無理な話なんだし。所で、お前、昨日村長からドンドルマの街の事話されたっぽいな」
忘れ物をするハンターに対する制裁の話から、今度は前日の夜村長から聞いたドンドルマの話へと変わった。
「うん、そうだけど……。なんか村だけじゃあ本当に強いハンターにはなれないとか……仲間が作れないとか……。その他諸々ってとこかな?」
「やっぱそう言う話か。確かにそうだよなあ、あんなちっこい村じゃあロクに強えぇ飛竜も出て来ねぇし、それにハンター自体も少ねぇから仲間とかって話じゃねえよな」
「だから……村長は俺にもっとデカイ街に行くように言ったのかなあ……」
「実際オレら以外にも昔は結構色んなハンターあの村にいたんだぜ。でも皆どんどん力つけて、んでもうこの村じゃあ充分過ぎるって理由でどんどん周辺の街とかに引っ越したりしてそこで新しいハンターライフ送ってるって話だ」
いつの間にか、フローリックからやる気の見えない表情が僅かだけであるが、消えていた。
「なるほど……。あのさあ、俺ってさあ、これから先ちゃんと仲間とか作れるのかなあって……ちょっと不安になるんだけど……」
「お前、それ人に聞くもんじゃねえだろう」
またフローリックは溜息を吐きだした。
「あれ? 俺なんか変な事聞いたかなぁ」
「『変な事聞いたかなぁ』じゃねえよ。仲間出来ねぇ出来ねぇって思ってたらなあ、出来るもんも出来なくなるぞ。」
「あぁ……」
ただ気の無い返事をする事しか、アビスには出来なかった。
「これからどっかでひょっとしたら誰か別のハンターに会う事だってあんだろうし、或いは今みてぇになんかの成り行きで一緒におんなじモンスター討伐しに行く事だってあんだろうし、そう言うチャンス自分で見つけて仲間ってもん手に入れるんだろうが」
「あぁ……そうだよね」
「黙ってたって仲間ってのはぜってぇ集まんねえぜ。どうしても欲しいってんなら、自分で行動起こさねぇとな」
「例えば?」
「だからなあ……」
たった今自分で見つける事が必要だと言った矢先にこれである。アビスには今、どのように仲間を見つければいいのか、いまいちよく分かっていないのかもしれない。ただ、その聞き方は少し考え直した方が良いかもしれないが。
「……まあいいや、例えばだなあ、こんな場面、想像してみろ。ある女のハンターが凶暴なモンスターに襲われてる」
なんで女? とふと気付くが、その時一瞬アビスはふとした事を思い出したが、そのまま黙っていた。
「そこにお前が颯爽と現れて、そいつを一旦助ける。んでその後にどっかに逃げた先で色々とそのモンスターをどう倒すか作戦を立てて、一緒に強力して、そして最後は何時の間にか仲間としての友情が芽生える……って感じだな。まあ極端だけどな」
「やっぱりそれって……」
「まあ、最後の方でイテェ事言っちまったかもしんねぇが、あくまでもお前に対するアドバイスだからなあ。こんぐれぇはしゃあねえよな」
「そうじゃなくってさあ……実は昨日なんか似たような事があってさあ……」
昨日のあの出来事と、今のフローリックの例え話、この2つにはアビスにとって妙に重なる部分があり、それを今話そうとする。
「さあて、そろそろ喋りながらの洞窟探検もおしめぇってとこだなあ。外も白いし、あいつも白いから、油断してたらすぐぶっ飛ばされっかもしんねえから、洞窟出たらすぐ周り、見ろよ」
元々話を最初に持ち出してきたのはフローリックだ。そして本人がこれから戦うであろう柔白竜が洞窟の外で待ち構えているだろうと、やる気の無いように見える目を鋭くさせる。最も、他者から見ればいつも通りの目にしか見えないのだが。
最初に話し出したのはそっちだろ? と心の中で呟きながらもアビスもバインドファングを構え、これからまだ見ぬ飛竜に備える。
皆様、お久しぶりです。最近は多忙で、なかなか新作を投稿出来ませんでした。次回作を待たれてた方々にはお詫びを申し上げます。
今回は主人公アビスが始めて仲間と共にヒルトップと呼ばれる雪山に狩猟に赴くお話です。今回は前半で終わりですが、次回からは本格的な戦いが始まります。
ここに来る事も出来なかった為、他の作者様の作品の閲覧も滞ってました。そろそろ、皆様の作品の方も閲覧しようと思ってた次第です。何とか多忙に負けずに小説活動を続けたい気持ちです。
それでは、何卒これからも宜しくお願い致します。




