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プール、嫌い

作者: WAIai
掲載日:2026/07/04

体育の授業が始まり、皆、教室から移動する。


彼は子どものようにはしゃいで、早くプールに入りたそうだった。


しかし私としては喜べず、下を向いたままとなる。


「どうした?」


彼が顔を覗き込んでくる。

私は彼に抱きつくと、小声で言う。


「私、その、休む」

「え? プール、楽しいのに、休むのかよ?」


彼は戸惑ったように言い、私の肩に手を置く。


私は髪を耳にかけ、恥ずかしそうに言う。


「スクール水着が嫌いなのよ。その、私、胸が大きいでしょう?」


そう言うと、彼の視線が私の胸に集中してくる。


私は恥ずかしくなり、彼から離れると、胸元を手で隠す。


彼は目を細めると、私をじっと見つめてくる。

まるで犯人と対峙する刑事みたいな、正直な眼差し。


私はどきりとし、固まる。

その様子を見てか、彼がようやく視線を外してくれる。


「じゃあ、体育先生に言いに行こうぜ」

「え? 一緒に行ってくれるの?」

「任せろ。俺を頼れ」


彼は自信満々に言うと、私の手を取る。


大きくて安心する手。


私の心から暗いものが、すっと消えていく。


「ずる休みにならないかな?」

「大丈夫だと思うぞ。ただ草むしりしないといけないかもしれないけれど」


彼はそう言うと、水着一式を反対の手に持ち、私を引っ張っていく。


その強さは独りよがりではなく、私のことを考えて、足を進めてくれる。


まるで兄と妹のようだと思ったが、引っ張ってくれる姿は逞しく、安心できるのだった。


体育の先生の部屋に着くと、ちょうど椅子から立ち上がるところだった。


「おう。お前ら、どうした?」


色つきの眼鏡をかけた体育の先生。

強面に見えるが、彼のほうが負けていないので、話を切り出す。


「彼女が今日、プール休みたいって」

「休む? その、生理か何か?」


先生が低い声で言い、凝視してきたので、私は緊張しながら言う。


「その…ちょっと頭が痛くて。お願いです。休ませてください」

「頭か…。保健室に行かなくていいのか?」

「それは大丈夫。俺がちゃんと様子を見るから」


彼が半歩前に出て、守ってくれる。


先生は腕を組み、悩んでいるようだった。

そこを彼が両手を合わせ、頼み込む。


「頼みます!! 休ませてやって」

「お願いします!!」


私も深く頭を下げると、先生が息を吐き出す。


「分かった。今日、休みな」

「え…。いいの、先生?」


彼が聞くと、先生は「ただし」と続ける。


「ジャージに着替えて、プールサイドの草むしりをすること。分かったか?」

「は、はい!! やります!!」


私は安堵から大きく答えると、慌てて口を押さえる。

ここは具合悪そうに見せなければ駄目だと、下を向く。


「じゃあ、早く着替えに行け。授業が始まるぞ」

「ありがとうな、先生」

「ありがとうございます」


2人は頭を下げると、部屋を後にした。

それから顔を見合わせると、にやりと笑い合う。


「良かったな、休みになって」

「うん!! ありがとうね。ついて来てくれて」

「早くジャージを持って来い。俺は水着に着替えに行くから」

「分かった。あの…」


手を差し出すと、2人はハイタッチをする。

本当に良かったと安堵し、私は言う。


「じゃあ、ジャージを取りに行くから」

「1人で大丈夫か?」

「平気。すぐに取りに行って来るから。あなたも着替えて」

「おう。じゃあ行くぜ」


2人は手を軽く上げると、それぞれの場所に向かう。


「彼が一緒に来てくれて良かった」


小声で呟くと、少し早足で教室に向かうのだった。

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