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私の最強の先輩  作者: 青木りよこ
6/8

5 先輩と初めてのダンジョン

午前中は普通の授業を受け、好奇の視線二日目にさらされながら昼食を済ませ先輩との待ち合わせ場所、昨日のベンチまで行くと先輩はもう来ていた。

先輩は今日は立っているので遠目からでも長い身体で先輩だということは隠しようもなかった。

というか、オーラが、作画がここだけ気合いの入り方が違う。

どうやら先輩とタッグを組んだというのは私の妄想じゃ無かったらしい。


「すみません。お待たせしてしまって、申し訳ないです」


「嫌、俺が食い終わったらすぐ来ただけだから、気にしなくていーよ」


先輩を待たせるとか何事。

ニコニコしてるけど怒ってたりしないかな。

先輩待たされたこととかないよね、きっと。

だって世界最強だもん。

あ、改めて見ると、足長い、顔ちっさ。

本当に同じ生き物?

先輩くらい大きいと私なんて虫にしか見えてないんじゃ。


「じゃあ、いこっか」


「はい。よろしくお願いします」


「ダンジョン行くのは初めて?」


「はい。初めてです」


魔術学院に入ると一番下のF級ハンターの資格が与えられ、ダンジョンへ行くことができるようになる。

先輩は別格として、入学前からハンターの資格試験を受けている生徒も多く、一年生で既にC級ハンターの子もいたりするけど、大半の生徒は私と同じで入学時点ではF級ハンターだ。


「まあ、今日は大人しく理事長が作った簡易ダンジョンに行ってみよ」


「はい」


「ダンジョンでは俺の後ろをくっついて歩いて、俺のこと抜かさないようにね」


「はい」


先輩が歩きだしたので後ろをしっかり着いていく。

先輩が振り返る。


「まだダンジョンに入ってないからいいよ」


「すみません、もっと離れたほうがいいですよね、すみません」


「あ、嫌、隣歩いたら?」


「それは恐れ多いです」


先輩の隣歩くなんて無理。

図々しい。

というより、かっこいい背中をせっかくだから見ていたい。

男の人の背中ってこんなにかっこいいんだ。

あ、男の人だから、じゃないな、先輩が特別だからだ。

世界にたった一人だけってこういう人を言うんだろうな。


「あ、そう。まあ、じゃあ、好きにして」


「はい」


理事長が作ったという簡易ダンジョンは学院の敷地内にあった。

この学校本当に広いんだなー。

ダンジョンというか、テーマパークの入り口にしか見えない。

なんかピンクの虹かかってるし。

謎のクマさんのキャラもいる、あ、鎌持ってる、バイオレンスだ。


「楓」


「はい」


「俺の後ろちゃんと着いてきてね、抜かしちゃダメだからね」


「はい」


私が先輩抜かせるわけないんだけど。

あ、あれかな。

先輩みたいな超超超強い人は常に最悪を想定して準備を怠らないんだよね、きっと。

そして私が余りにも愚鈍そうだから念を押してくれているんだろうな、うん。

私一回言ったくらいじゃ憶えらんなさそうだもんね、入学試験最下位だし。

何やらせても駄目だな、私って。


「取り敢えず歩いてたらいいよ、何かしようと思わないこと、いい?」


「はい、何もしません」


「そう、それでいいよ」


あ、先輩普通に片手で扉開けちゃった。

なんかギイギイ鳴りそうなすっごく重そうな扉だったのに。

簡単に開けちゃった。


「はい、入ってー」


「あ、ありがとうございます」


理事長の作った簡易ダンジョンはただまっすぐな道があるだけだった。

青白い炎が少しだけ幻想的な雰囲気を演出している?

なんか、お化け屋敷みたい?

でも何にも出てこない。

と、思っていたら上から大きな目玉だけのモンスターがいきなり飛び出てきた。

それも五体、一気に先輩めがけて。

わっとか、ぎゃーとか叫び声をあげる間もなく五体は勝手に身体をバラバラにして落ちていった。

なんだろ?

先輩なんかしたのかな?

先輩が何も言わず、何事もなかったかのように歩いて行くので、私もそのまま着いて行く。

ダンジョンの中っておしゃべりしていいものなのかな。


少し歩くと又目玉のモンスター、今度は、さっきよりずっと大きいのが一、二、三、八体。

けど、先輩に近づいただけで又爆発?してしまった。

私の足元にモンスターだったもののカケラらしきものがぼたっと鈍い音をさせて落ちてくる。


「わっ」


「あ、ごめん、大丈夫?」


先輩が立ち止まり振り返る。


「いえ、すみません、声出して」


「嫌、別に喋っていいよ」


「あ、そうなんですか?」


「楓、おとなしいんだね」


「あ、そんなこともないんですけど、ダンジョンで喋っていいものかわからなくて」


「喋っていいよ、なんでも聞いて」


「あ、はい、あの、じゃあモンスターどうしてバラバラになっちゃってるんでしょうか?なんか勝手に弾き飛ばされたというか、自滅していってるような気がするんですけど」


「俺がそうしてる」


「あ、そうなんですか」


「うん、これが俺の能力だから」


「能力?」


「俺の主な能力は設定。俺に攻撃しようとするとそれが倍になって自分に帰ってきて自滅する。だから俺に攻撃は当たらない。絶対に。そういう設定だから」


「そうなんですか」


最強ってそういうことなんだ。

確かに攻撃が絶対に当たらないなら絶対に倒されることはない。


「このダンジョンは先頭を歩く人間以外攻撃しないようになってる。理事長がそう作ってる、だから大丈夫」


「そうなんですか」


「うん。俺も一年の時は来たから、というか、一年生は絶対一回は来るのが義務だから」


「はあ、あ、じゃあ先輩が世界中の人にその設定をかけたら、もう争いごとなんてなくなりませんか?」


「それはできない。俺の設定は俺が自分のものって認識してないとかけられないから」


「はあ、あ、つまらないこと言ってしまってすみません、出過ぎたことを言いました。申し訳ないです。本当にすみません」


ひー。

私ってなんて愚かなんだろ。

余計なこと喋らないの。

黙っていなさい。

何にもできないんだから。

先輩不愉快だろうな。

口きいてくれなくなったらどうしよう。


「いいよ別に、そんなに俺怖い?」


「いえ、そんなことないです。何というか、先輩みたいな、こう、何と言いますか、現実離れした人といいますか、あの、先輩みたいな別世界の人と関わったことがなかったので、何といいますか、この状況に慣れていないといいますか、あ、一生慣れそうもないですけど」


「嫌、そこは慣れてよ」


「すみません、すぐ慣れるようにします。でも私本当に何もできないので、一年間迷惑かけっぱなしになると思うんです、すみません、不愉快な思いいっぱいさせちゃうかも、すみません」


「最初は誰だって何にもできないんだから気にしなくていいよ」


「そうでしょうか」


「俺には使ってもらえないけど回復は役にたつ能力だからそんなに卑下することないって」


「はい」


「楓はいてくれるだけでいいよ」


「そんな図々しいこと許されるんでしょうか?」


「だって楓がいてくれないと俺卒業できないでしょ」


「あ、はい、そうなりますよね」


「じゃあ行こ、喋りたかったらなんでも喋っていいし、驚いたら叫んでいいよ、我慢しなくていいから」


「あ、はい」


「俺が無言だったから、喋りたくても喋れなかったんだよね。ごめんね、俺、人とダンジョン行き慣れてないから」


「あ、いえ、すみません」


その後も私は先輩の後ろをひたすら着いていった。

青白い炎に照らされながら落ちて行くモンスターは徐々に大きくなっていったけれど、大小関係なく皆一様に同じ結末を迎えた。

まるで青い水族館の中を歩いているみたいだった。


「どうだった、初めてのダンジョンは?」


「あ、はい。楽しかったです」


「そっか、それなら良かった、明日は又別のダンジョンに行こうね」


「はい、よろしくお願いします」


「怖くなかった?」


「あ、怖くはなかったです」


「俺のが怖いもんね?」


「え、あ、あの、そんなことないです」


確かにモンスターより先輩の方がずっと強いわけで、先輩より強い人もモンスターもこの世にいないわけだから、あれ、先輩が一番怖いであってる?


「今日は疲れただろうからゆっくり休んでね」


「あ、はい、ありがとうございます」


歩いていただけだから本当は全然疲れてないんだけど。

でも早く寝よ。

健康第一。


「初めてダンジョン行くとさ、モンスターの気に当てられたりするんだけど、楓は大丈夫そうだね」


「はい、えっと、元気いっぱいです」


「それなら良かった。明日も元気で来てね」


「はい」


「じゃあ明日も今日と同じ所で待ってるから」


「はい」


「慌てて来なくていいからね、休憩はしっかりとって」


「はい」


「じゃあ、少し早いけど、おやすみ、楓」


「はい、おやすみなさい、皐月先輩」


疲れていたわけじゃないけど夢も見ないで眠った。

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