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24 当たり前じゃない皐月先輩

ゴールデンウィーク最終日は必ず休養日にするようにとの学院からのお達しがあったので、今日は恵美ちゃんのお部屋でゴールデンウィークの宿題をしています。

かのんちゃんは毎日コツコツしていたそうで今日は一日ゲームをするそうです。

因みに外は雨なので、一日籠るには最適といえます。


「皐月先輩と出会ったことって、このままいくと楓の人生の最大の不幸になりそうだよね」


「え、何いきなり」


唐突の不穏。


「だってさ、あの顔が基準になったら、もう世界中全ての男がモブじゃん、世界からモブしかいなくなっちゃったじゃん」


「そんなことはないんじゃないかなぁ」


「だってあの顔と四六時中一緒にいるわけじゃない?絶対感覚狂うって」


「えぇー、そうかなぁ、そんなことないと思うんだけどなぁ」


「ゴールデンウィーク今日以外毎日出かけてたでしょ?朝から夜までずっと一緒だったわけでしょ?ずっと2人っきりだったわけじゃない?」


「ダンジョンだから他にも人はいっぱいいたよ」


「周りに人いても背景でしょ、そんなの」


「うーん」


「楓、言っておくけど、この世界の男の大半は、ううん、ほぼ全ての男は皆皐月先輩みたいに顔良くないし、背も高くないし、お金も持ってないからね」


「えぇ、そんなのわかってるよ」


「何かさ、急に心配になってきちゃったんだよね、楓が先輩とこんなに毎日一緒にいることになるとは思わなかったもん。だって基本的に皐月先輩毎日楓のことダンジョンに連れてくじゃない、皐月先輩この国でたった一人のS級ハンターだからもっと忙しくて、実際数えるくらいしか一緒にダンジョン行くことなんてないと思ってた。楓、あの人は特別も特別、もうあれだよ、同じ人類じゃないからね、手の届かない二次元キャラだと思っといた方がいいと思うよ」


「え、思ってるよ」


「楓がさ、皐月先輩で男とはこういうものなんて基準作っちゃったら大変だよ、あれは基準値から大幅に外れてるから、あれを理想の男性像にしちゃったら後々キツいよ、一生彼氏できなくなっちゃう、軌道修正しないと」


「えぇー、そうかなー、大袈裟じゃないのかな」


「大袈裟じゃないよ、そうだ、あれだよ、速い球ばっか打ってるとさ、遅い球打てなくなるっていうじゃない、あれになるよ」


恵美ちゃんは最近野球アニメにハマっていて、今それをかけっぱなしにしながら私達は宿題をしているのですが、恵美ちゃんの推しキャラのキャッチャーが出てくると、恵美ちゃんが、あ、こここれ、盗塁阻止するから見て見て、サヨナラホームラン打つから見て見てと巻き戻すので、宿題もアニメも中々進みません。

楽しいからいいけど。


「そんなことあるのかなぁ」


「絶対あるよ。顔のいい男に慣れちゃうと顔の良くない男が当たり前じゃなくなるよ、楓、皐月先輩が当たり前じゃないんだからね」


「う、うん」


「楓、やっぱりド不幸だよ、もうあれだ、二次元しかないって、二次元には皐月先輩みたいなのがゴロゴロいるからね」


「ゴロゴロいるの?」


「いるいる、だから楓も一緒に二次元世界に行こう」


「えー」


「とりあえず、夏休み原画展行こうね」


「うん」


「でもさ、皐月先輩って何だろ、結構不思議な人だったりする?」


「不思議、うーん、不思議ではないかなぁ、優しい、よ、なんかすっごい普通なんだよね、あ、見た目は普通じゃないんだけど、喋ってみたら普通なの」


「普通かぁ、あの見た目ならある程度俺様キャラでも許されるのにそうじゃないんだもんね、もう一月一緒にいるわけだけど、なんかわかった?」


「なんかって?」


「皐月先輩の個人情報?」


「個人情報?」


「彼女とか、彼女とか、彼女とか」


「彼女一択」


「だって個人資産聞いてもしょうがないし、あ、皐月先輩クラスだと、会いたいって言ったら芸能人に会えたりするのかな?」


「先輩テレビ見ないみたい、ラブレス知らなかったし」


「だって先輩の方がかっこいいじゃん、知ってる必要ないでしょ」


「あー」


「いつもどんな話してんの?ほぼ毎日ダンジョン行ってるだけなんだよね?」


「うん、ダンジョン以外行ってないよ、あ、ご飯食べたりはダンジョンの外だから、お蕎麦屋さん行ったり、ファミレス行ったりはしたけど」


「あの見た目でファミレス行くんだもんね、強い」


なにが?


「ホントに真面目に二人で行ってるんだ、下級ダンジョンなんてお金にもならないし、WARなんてちっとも稼げないのに、あの皐月燐音が、世界最強が、ほえー」


「皐月先輩ダンジョン大好きだから」


「大好きっていっても、S級ハンターがE級ダンジョンとか行ってるわけでしょ?」


「うん」


「有り得なくない?」


「そうなのかな?」


「だって私が組んでる泉先輩は、大学行って普通に就職するから、学院が指定したダンジョンだけ行って、後は自由に過ごそってことにしたから、私達ゴールデンウィーク一回もダンジョン行ってないよ」


ハンター専業で食べていけるのはB級以上だといわれている。

日本には沢山のハンターがいるけど、そのほとんどが兼業ハンターで、私も勿論これになる見込み。


「皐月先輩って相当変わってる感じ?」


「うーん、そんなことないと思うけど」


「いつもどんな話してんの?」


「えっと、ダンジョンの話?」


「え、ダンジョン行ってダンジョンの話してんの?」


「うん」


間違ってはいないよね、お父さんの話だって、ダンジョンにまつわるものばかりだし。

でも、何だろ、先輩の話、恵美ちゃんでもあんまりしたくないな。

だって、ダンジョンの皐月先輩は、あのダンジョンの皐月先輩は私だけが見たものだから、私だけのものにしときたい。

それに話したところで、あの皐月先輩に対する再現性が私にはないんだよね。

あ、でも皐月先輩の公共性を考えたら、私の胸に留めておくのはいけないことかな。

皐月先輩は皆のもの?

うーん、ピンとこないな。

皐月先輩はダンジョンのものだもん。

本人もそれを望んでいる気がするし、そっちの方が全然納得できる。

皐月先輩とダンジョンがお似合いすぎて、どんな美人で素敵な人が現れたとしても、皐月先輩はダンジョンを選ぶ気がする。

その二択になることがまず問題な気もするけど。

何となく皐月先輩は誰のものにもなってくれない気がする。

ダンジョンはいつか皐月先輩を連れて行ってしまう。

皐月先輩はダンジョンがなくなったら生きていけないから。

でもそれはダンジョンさえあれば皐月先輩は楽しく幸せに暮らせるということ、だよね。

先輩はいつも綺麗だけど、ダンジョンにいる時の先輩は、何だろう、ダンジョンからの愛を一身に受けて輝いている。

あ、でも、お蕎麦屋さんの先輩も、ファミレスの先輩もかっこよかったな、キラキラしてた、ダンジョンの加護とか関係ないかも。


わかった気になってるのいけないかな。

思ってるよりずっと私先輩のこと身近に感じてるのかも。

それは恵美ちゃんの言うとおり、この先の人生に重大な影響を及ぼすかもしれない。

えぇ、ちょっと考えすぎなんじゃ。

皐月先輩が余りにも凄すぎて、もう既に感覚おかしくなっちゃってるのかな、私。


「皐月先輩って、ダンジョンオタクみたいな人ってこと?」


「うーん、そうなのかな?」


「世界一強くて、世界一顔も良くて、ダンジョンオタクな大金持ちかぁ」


合ってる、合ってるんだけど、現実の皐月先輩と結びつかない。

この一ヶ月で私が知った皐月先輩はそんな単純な言葉で片付けられる人じゃなくて、もっとこう、複雑、こういう人、なんて結論が簡単に出せる人じゃないんだよね。

まだまだ知らないこといっぱいあるし。

知りたいんだよね、私。

皐月先輩のこと、もっと、もっと。


「楓、今皐月先輩以外でかっこいいって思う人いる?」


「皐月先輩以外で?」


「うん」


「うーん」


「もうこの際芸能人でも二次元でもいいよ」


「皐月先輩以外、うーん」


「ほら、頑張れ、搾り出せ」


「えー」


「思いつかない?」


「うん」


「あー、もう手遅れかー」


「手遅れなの?」


「多分ね」


「えー」


「これはもう全く逆のタイプいくしかないね」


「全く逆?」


「弱くて、ヒョロヒョロしてて、何にもできない男」


「え」


「勉強もスポーツもダメで、腕力もなくて、お金もなくて、優しくもない」


「せめて優しいは残しておいて」


「そだね、ごめん」


恵美ちゃんが吹き出して笑う。


「ちょっと休憩しよっか、お菓子食べよー」


「うん」


この先皐月先輩が基準になって、誰のことも追いかけられなくなったとしても、それでもいいと思った。

一生夢の中で生きている、そうだとしてもそれも悪くない、そう思ってしまった。

だって皐月先輩を思い出すと幸せな気持ちになる。

こんな人初めてだった。

一生彼氏ができなくても、皐月先輩をずっと思い出せる人生、私はそっちを選んでしまう気がした。

だって今一緒にいなくても私は皐月先輩を思い出し、温かな気持ちになり、満たされていた。

ココアを飲みながら美味しいクッキーを食べているせいかもしれなかったけれど。


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