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21 無言で二人並んで食べた

帰りは九十二階の転移石を使って外へ出た。

これに慣れちゃうと、ないダンジョン行けなくなっちゃわないかな。


「腹減ったね、なんか食べてかない?」


「あ、はい」


随分長いことダンジョンで遊んでたんだなぁ。

観覧車三回乗っちゃったし。

野球盤も双六も面白かったし、また来たいな。


「何食べる?楓の食べたいものでいいよ、何が好きなの?」


「あ、はい、あ、お蕎麦はどうでしょうか?あ、あそこに蓼丸そばがありますし」


蓼丸そばの看板が目に入ってきたので迷わずここに決めた。

全国に展開するチェーン店で、どのメニューを選んでも美味しく、ハズレがない。

恐らく誰もが好きな味で、量も多いし、皆食べることに集中して他のお客さんに関心がないのもいい。

注文したらあんまり待つことなくすぐ出てくるし。

先輩いつもどこでも顔見られてるけど、嫌じゃないのかな。

もう慣れてるのかな。

だって先輩生まれてからずっと顔の良くなかった期間がないんだもんね。

小さい頃の先輩可愛かったんだろうなぁ。

その頃なら私より小さかったはずだよね。

一体いくつまで先輩私より小さかったんだろう。


「楓は蕎麦好きなの?」


「はい、おうどんもお蕎麦もラーメンも大好きです」


お夕飯には少しだけ早いのか、店内は余り混んでいない。


「何食べる?」


先輩が食券機の前で聞いてくれる。


「あ、自分で出します、いつも出していただいているので」


「いいよ」


「でも申し訳ないですし」


「いいよ、使いきれないくらいお金持ってるって言ったでしょ」


「はぁ」


「ダンジョンで獲得できるアイテム売ったらいくらでもお金入ってきちゃうから、寄付してもまだあるんだよね、楓はお金貯めときなよ、欲しいものができた時に苦労せず買えるように」


「あ、はい、ありがとうございます」


「うん、で、何にする?」


「あ、わかめ蕎麦でお願いします」


「わかめ好きなの?」


「あ、はい」


あ、考えてみたら、あんまりお待たせしたら悪いと思って蓼丸そばにしちゃったけど、先輩足りるかな。

お腹いっぱいにならないんじゃ。


「先輩足ります?」


「天ぷらうどんともり蕎麦とカツ丼食べるから足りると思うよ」


「あ、そうですか」


混んできたので無言で二人並んで食べた。


「楓アイス食べない?アイスじゃなくて、甘いものなら何でもいいけど」


先輩甘いもの好きなんだなぁ。

おっきいのに可愛い。


「毒いっぱい食べた帰り、父さんがアイス食べさせてくれたんだよね、だから毒草食べるの楽しみだった」


うーん、思い出の質が違う。

先輩にとって過去はどんなことであってもダンジョンが絡んでさえいたら、例え苦痛を伴うものであったとしてもいい思い出なんだ。

凄いな。


「夜だったり朝早かったりしたから専門店のじゃなくて、コンビニのだったり、スーパーのだったけど美味しかったんだよね、頑張って良かったって思ったよ」


「アイス、アイス食べましょ先輩、あそこに51アイスクリームあります」


51アイスクリームはその名の通り51種類のフレーバーが楽しめるアイスクリーム専門店で、青い看板が目印となっていて、日本中にある。

ダンジョン帰りにお蕎麦食べて、シメにアイス食べるとか、ハンターっぽい。

先輩何頼むんだろ。


「楓何にする?」


「キャラメルナッツスペシャルズ、カップで」


先輩はピスタチオチーズケーキとカスタードダブルベリーと宇治抹茶あずきのトリプルをカップで頼んだ。

先輩が持つとスプーン異常に小さく見えちゃう。

あとお店の椅子が小さすぎ。

足長すぎて窮屈そう。

これで顔まで世界一いいんだもん、規格外すぎる。

この国先輩にはとても小さいし、相応しくない、色んな意味で。

なんて言うか、間違ってこの国に生まれて来ちゃったんだろうなぁ。


本当に不思議な人。

何でこんな人が普通にこの世に存在してるんだろ。

それこそ人類の七不思議。

先輩こそこの世全ての謎。


「先輩ダンジョンのアイテムって全部売っちゃってるんですか?」


「うん」


「先輩が行くのってS級ダンジョンとかA級ダンジョンですよね?」


「うん」


「貴重なものがいっぱいあるわけですよね、この世に一つしかないものとか」


「うん」


「えっと、勿体なくないですか?」


「置いとく場所もないし」


「え、でも、ダンジョン攻略した記念に取っておこうかなって」


「うーん、俺攻略したダンジョン振り返ったりしないから、本当に何にもないなぁ、ハンター協会のメモリーに攻略者として残ってるだけかなぁ」


「そういうものですか」


「他の人は知らないけど、俺はそうかなぁ、S級だろうがB級だろうがE級だろうがダンジョンの一つに過ぎないし」


「そうですか」


「まだまだこれからも沢山行くしね、でも何も集めないと思う」


「じゃあ、どういう物だったら手元に置いておきます?」


「え?」


「あ、どういう物なら先輩売らないで置いておこうと思うのかなって」


「あー、何だろ、思いつかない」


「武器も魔石も興味ないんですよね?」


「うん、ないね」


「あ、ドラゴン持って帰りたいとかなかったですか?」


「ははっ、ないよ。それこそどこに置いておくの」


「そうですよね、すみません」


「でも持って帰って来てって依頼を受けたことはあったよ」


「え、どうやって運んだんですか?」


「お金持ちだからね、飛行船で取りに来てくれたよ、でも生捕りにしてって言われてたから、大変だった」


「そりゃそうですよね」


「うん、死なせない方が難しいよ」


あ、そういう意味ですか。


「ごちそうさまでした」


「うん」


アイスを食べて外に出ると、楓と名前を呼ばれた。


「あ、なっちゃん、理央ちゃん」


「楓、久しぶり、元気だった?」


「うん、元気だよー」


「私達、京くんの始球式見に行ってきたんだよー、すっごいいい席でさー」


「あ、すみません、先輩、あの、中学の友達で」


「そうなんだ」


「え、何、楓の、え、知り合いなの?そのお、兄さん」


「あ、うん、学校の先輩」


「えー、あ、すみません、勝手にぺらぺら喋っちゃって、あの、お知り合いだと思わなくて」


「あ、いえ、初めまして」


「楓の先輩ってことはハンターってことだよね?すっごーい、なんかすごく強そう」


世界一強いです。

言わないけど。


「なっちゃん電車遅れる」


「あ、そーだねー、楓後でテキストするから、くわしーく教えてね」


「しゃあね、楓、また遊ぼ」


「うん、またね」


なっちゃんと理央ちゃんはバタバタと去って行った。


「あ、すみません、二人とも同じバトミントン部だったんです」


「そうなんだ」


「ラブレスの京くんの始球式行ってきたみたいで」


「ラブレス?」


「アイドルの」


「ごめん、知らない」


「あ、そうですよね」


「楓も好きなの?」


「あ、いえ、私はあんまり」


「そう、じゃあ、俺のことどっか掴んで」


「え?」


「ダンジョン移動して帰るから、学院の一番近くのダンジョンの一階に移動する」


「先輩電車いらないんですね」


「うん」


とても楽しい一日だった。

私服の先輩はかっこよかったし。

スエット姿であんな異常値叩き出せる人いるんだなぁ。

最早怖いまである。


先輩何も残してないって言ってたな。

その先輩が残したいと思える物とダンジョンで出会えるといいなぁ。

だって先輩はあんなにもダンジョンのことが大好きなんだから。

私も見つけたいな、先輩みたいに夢中になれる大好きなものを。







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