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17 苦しいより先に毒がある

それにしても本当に広いなぁ。

畑まである。


「あ、先輩あっちの畑見にいってもいいですか?」


「いいよ」


私は小走りに畑に近づく。

先輩は悠々と歩き私の隣に並ぶ。

あ、ダンジョンなのに先輩より先に行っちゃった。

ま、いいか、ここ世界一安全なんだし。


「これスライム草ですよね?」


「そうだよ」


「初めて見ました、本当にスライムの形してるんですね」


スライム草はその名前の通りスライムが棒付きキャンディのようになって生えている。

学院のアプリの図鑑に載ってて、ずっと見てみたいと思っていたから、見れて嬉しい。


「可愛いですね、見たいなって思っていたんです」


「そう。スライム好きだね楓。触ってもいいけど、毒あるから絶対食べちゃダメだよ」


「はい」


「ここは素材集めるのにいいんだよ。魔石もあるし、錬金術やる人はよく来るよ」


「何ができるんですか?」


「回復薬とか解毒薬とか魔具とか」


「加熱したら毒大丈夫になるんですか?」


「色んな素材と混ぜ合わせたらね、ただ単体で加熱しただけならダメだよ」


「なんかあっちでテント張ってる人達いますけど」


「そりゃダンジョンだからね、いるよ」


「先輩なんでも知ってるんですね」


「ダンジョンのことならね」


「そうですよね」


「ちなみにスライム草は味は何にもないよ、歯応えだけはある、結構固め」


「食べたことあるんですか?毒なのに?」


「毒だからだよ」


「え?」


「ダンジョンってさ、本当なら入ったら簡単には出られないんだよ。一ヶ月とか半年とか一年出られないとかざらにある、だからハンターはダンジョンでなんでも調達するんだよ、食うもの、着るもの、狩りに行く、ハンターだから」


「そうですか、だから先輩いつも何にも持って行かないんですね」


「うん、いつも手ぶら、協会からの緊急連絡があるかもしれないから携帯は持ってるけど、それ以外は何にも持たないかな、荷物とか邪魔になるだけだし」


「でも毒食べて先輩大丈夫だったんですか?」


「うん。訓練だから」


「訓練?」


「父親がさ、回復魔法が得意だったから、毒を食べては回復させて、また毒食べて回復しての繰り返しで鍛えてくれたんだよね、おかげで俺もうどんな毒も効かないんだよね、S級ダンジョンも防護マスクいらないし」


「はあ」


なんか先輩さらっと凄いこと言ってるけど、毒だよね。

ピーマンとか人参とか、好き嫌いの克服の話じゃないよね。

先輩なんでもないようにいうけど、毒なんか口に入れたら。

先輩今よりずっと小さかったんだよね。

先輩にも小さい頃があって、最初から世界最強だったわけじゃなくて。

私の脳裏には私の記憶にはない小さかった先輩が浮かんでいた。

先輩五歳までは髪黒かったんだよね。

見たこともない寂しくて小さな背中、小さな手。

目が潤んできた。

ダメダメダメ。

先輩が気にしてないのに私が泣くのおかしいよ。

せっかく楽しい所に連れて来て貰ったんだから下向くのは失礼だよね、うん。

でも。


「先輩苦しくなかったんですか?」


「え?あー、苦しいを覚えるより、毒を先に覚えちゃったから、死ぬかもってことよりそっちのが先だったから、苦しいとかあんまり」


「そうですか」


「強くなるにはダンジョン慣れしないといけないからね、ダンジョンのものなんでも食べられるようにしとかないと、でも俺の真似はしない方がいいよ、俺は多分大分特殊な部類だから」


「そうですよね」


先輩って本当に凄い人なんだな。

やっぱりなるべくして世界一になってるんだなぁ。

努力している、我慢している、色々犠牲にしている。

先輩も世界一の栄冠を得るために諦めてきたものが本当は沢山あるんだろうな。

楽な道なんかじゃなかったんだろうな。

なんでも持ってるように見えるけど、その両手をすり抜けていったものがきっとあるんだろうな。

でも先輩はそれでいいと思ってるんだろうな。

先輩はきっとダンジョンがあればいいと思ってるんだろうな。

だってダンジョンはずっと先輩に報いてくれたんだろうから。


「塔の中行こっか?」


「はい、すっごい高いんですね」


「100階じゃなかったかな」


「先輩一番上まで行ったんですか?」


「勿論。一番上まで行かないと攻略したことにならないから」


「階段ですか?」


「エレベーターはないよ」


塔の中に入ると、小さな机が並んで、紙の本を並べている人達がずらりと並んでいる。


「紙の本って珍しいですね」


「自分で作って売ってるんだよ」


「ダンジョンでですか?」


「うん」


「この塔の中お店いっぱいあるんですか?」


「あるよ、モンスターがいないから、このダンジョンはどっちかっていうとお金があったら楽しいダンジョンだよ」





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