9 ビッグ3とワースト3
今日は魔術学院にキッチンカーが来る日です。
美味しいものを沢山確保するため、恵美ちゃんとかのんちゃんと手分けして並ぶことにしました。
私はパン担当で、ただ今行列の最後尾にいます。
「こんにちは、楓ちゃん」
耳元で囁く声。
振り返ると、とても綺麗な女の人と目が合いました。
あ、この人確か、学院三位の。
「千早先輩」
「そうそう、千早先輩でーす」
私はくるりと一周させられ、千早先輩と向かい合うことに。
ついでに腰に両手がまわされたため、動けなくなりました。
「初めまして、千早刹那です」
「は、初めまして、佐藤楓です」
「皐月が君のこと凄く気に入ってるみたいだから、一度近くで見ておこうと思って」
「はあ」
「君、ホントに可愛いねぇ、ちっちゃーい」
「あ、はい。すみません」
「色白だね、肌もツルツルピカ、ホント可愛い」
「あ、ありがとうございます、先輩もとてもお、お美しいです」
「えー、ありがと。可愛い子に褒められるのは嬉しいなー」
千早先輩、背高いなぁ。
180くらいあるのかなぁ。
それに凄く美人。
美人すぎる。
長い銀髪がサラサラして綺麗。
目、琥珀色っていうのかな。
皐月先輩といい、奥村先輩といい、強いハンターって、皆顔がいいのかなぁ。
皐月先輩で美形への耐性がついてて良かった。
この距離でこんな美人と見つめ合うなんて魔術学院恐ろしい。
私この一年で一生分の美を浴びることになるんじゃ。
過剰摂取は身体に良くないよ。
八十年くらいで分割して。
「ホント可愛い。フェーブにしたい」
「ふぇーぶ?」
これだよーと先輩が私に携帯で写真を見せてくれた。
小さな陶器製のお人形。
お菓子の中に入っていて、見つけた人はその日の王様になれるらしい。
いいなー。
「楓ちゃん可愛い。スノードームとか砂時計に入れたい。限界まで小さくしてみたい」
これ以上小さくされるのは困ります。
というか、なんで小さくすることにそんなに拘ってるの、千早先輩。
「千早、これ俺の」
いつの間にか背後に来ていた皐月先輩に引き寄せられ、私を拘束するのは千早先輩から皐月先輩に変わったようです。
皐月先輩、どっから出てきたの?
「皐月はやーい」
「だって俺のだもん」
皐月先輩が私の両手を右手で掴む。
「先輩、私の手片手で掴めるんですね」
私両手グーにされてるのに。
「楓手ちっちゃいもん、捕まえた」
私ホントにちっちゃいんだな。
先輩の身体おっきいから私一人くらいなら何もしなくても住めそう。
「せっかく可愛い楓ちゃんとお話ししようと思ってたのにー」
「ダメ、俺の」
「可愛い女の子は人類共通の財産でしょー」
「他は全部やるから、これはダメ」
「あー、ケチー、あ、佐倉」
「あ、千早先輩、楓も、何してんですか?」
「あんたパン買えたの?」
「はい、買えました」
「一個頂戴」
「いーすっよー、どれがいいですか?」
「あんパン」
あ、そっか。
佐倉君、千早先輩と組んでるんだ。
「皐月先輩初めまして。俺一年一組の佐倉新です。しんは新人王の新です。よろしくお願いします」
「よろしく」
なんか、かっこいいけど温度のない声。
先輩今どんな顔してるんだろ。
動けないから見えない。
「なんか、そうしてると、楓と皐月先輩カンガルーの親子みたいですねー」
千早先輩が吹き出す。
「親子だって皐月、よかったね」
「あ、楓もパン一個やるよ、いつも世話になってるし」
「世話になってるんだ?」
なんか高いところから氷の刃のような声が降ってくるなぁ。
気のせいかなぁ。
先輩大きすぎて壁にもたれてるみたいで、落ち着くなぁ。
あったかいし、安心できる、最強の壁。
「楓」
「あ、かのんちゃん」
「ピザとたこ焼き確保できたよ、こっちはもう無理そうじゃない、今日はパン諦めよ」
「うん、この行列じゃそうだよね」
「あー、かのんちゃんやー」
奥村先輩がひらひらと手を振っている。
目立つ人だなぁ。
周りをモブにしてしまう能力が高すぎる。
「先輩もパン買いにきたんですか?」
「いや、俺はおもしろそやから、燐音について来ただけぇ」
あー、と佐倉君が大きな声で叫ぶ。
「なんやの、自分やかましわ」
「すみません、今気づいたんですけど、ビッグ3揃い踏みじゃないですか」
「あー、そやね」
皐月先輩の金髪、千早先輩の銀髪、奥村先輩の黒髪。
凄い、見事なカリスマ三原色だ。
流石学院最強トリオ。
魔法使えなくても、見た目だけで学院制圧できそう。
「ついでにワースト3も揃い踏みなんですよ」
「自分でいいなや、まぁ、自分元気やねぇ」
「元気だけが取り柄です、奥村先輩、佐倉新です。楓とかのんとは同じクラスです」
「そうなんやー」
「佐倉は他にもいいとこあるよー」
「千早先輩ちなみにどこですか?」
「顔。犬みたいで可愛い」
「マジですか?」
「大マジ」
「千早先輩に褒めてもらえるなんて俺マジで嬉しいです」
「楓行こ、恵美待ってるよ」
「あ、うん。すみません、先輩、私もう行きますね」
先輩が私の手を解いたので、今日初めて先輩の顔を見た。
今日も今日とて麗しい。
何度見ても同じはずなのに、この顔が来るってわかっているのに、身構えてても圧倒される。
見惚れる、何度でも、何度でも。
「じゃあ楓、また後でね」
「はい」
「じゃあねー、また女子だけでお話ししようねー、楓ちゃん、かのんちゃん」
「あ、はい、よろしくお願いします」




