最終話 翌朝ー新しい家族の始まり
朝の光が、ゆっくりとカーテン越しに差し込んでいた。
昨夜の雰囲気のまま、
ふたりは手をつないだまま眠っていたらしい。
エリックは、ふとまぶたを震わせて目を開けた。
(……あ。朝……?)
視界の中には、すぐ横で眠るリサの顔。
穏やかな寝息と、緩んだ表情。
そのすべてが、胸に染み込んでくる。
(……夢じゃ、ないんだよね……
昨日、ぼくたちは本当に“家族”になったんだ……)
胸の奥があたたかくなり、
ゆっくりとリサに寄り添う。
そっと手の甲を撫でたとき、
リサが微かに瞬きをした。
「……エリック? おはよう……」
「おはよう、リサ……」
寝起きの柔らかい声。
エリックは、思わず微笑んでしまう。
「なんか……幸せすぎて……
胸が、まだきゅっとする……」
リサは少し照れたように笑った。
「昨日泣きすぎたんじゃない? 水分足りてる?」
「う……たぶん足りてない……」
ふたりはふっと笑い合った。
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● Scene:朝の静かな会話
リサはゆっくり上体を起こし、
お腹にそっと手を添えた。
「……この子も、初めての“家族の朝”ね」
エリックもその手に重ねる。
「リサ……
これからずっと、こうやって……
一緒に朝を迎えたい」
「ええ。きっと迎えられるわ。
だって、あなた……本当に優しいもの」
その言葉が、まっすぐ胸に届いて、
エリックは少しだけ目を潤ませた。
「……ありがとう。
ぼく……リサを、必ず幸せにする」
「私だって、あなたを幸せにするわよ?」
エリックは思わず笑う。
「なんか……リサが言うと強いな……」
「だって夫婦ですもの。お互い様よ」
その一言が、胸に深く染みていく。
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● Scene:決意と、未来への一歩
ベッドから降りるとき、
エリックはそっとリサの体を支えた。
「重くない? 大丈夫?」
「ありがとう、紳士さん。大丈夫よ」
「……夫だからね。ちゃんと支えるよ」
その言い方が少し誇らしげで、
リサは思わず頬を染めた。
窓際に立つと、
朝の光が二人を照らした。
街は静かで、
まるで新しい一日の始まりを祝うようだった。
リサがふっと呟く。
「エリック。
今日からまた、いろんなことがあると思うの。
研究もあるし、体調も気をつけないといけないし……」
「うん」
「でもね。
あなたとなら、大丈夫だと思えるの」
エリックはその言葉を聞いて、
静かに深呼吸をした。
(……そうだ。ぼくはもう一人じゃない。
リサがいて、お腹の赤ちゃんがいて……
ぼくは家族を守るんだ)
「リサ。
ぼく、本当に……がんばるよ。
家族のために、生きていく」
リサは優しく微笑んだ。
「ええ。二人で……いえ、三人でね」
ふたりは窓の外を見つめ、
しばらくそのまま朝の光を浴びていた。
⸻
✦【最終シーン:手をつないで】✦
小さな朝食をとって身支度を整えると、
チェックアウトの時間が近づいた。
エリックがリサの手をそっと取る。
「行こうか。
今日から……ぼくたちの“家族の毎日”、始めよう」
「ええ。エリックとなら、どんな日でも楽しみよ」
二人は手を繋いだまま、
ゆっくりと部屋を出る。
扉が閉まった瞬間、
そこに残ったのは——
昨日までとは違う、確かな温かさ。
夫婦として歩き始めるふたりを、
朝の光が静かに包み込んでいた。
——第1部・完。
お読みいただきありがとうございました!
新しく夫婦、家族になった二人の、夫婦としての誓いと、これから一緒に生きていく、という余韻で、最終話としました。
約40話ほどでしたが、おつきあいいただきありがとうございます!!
一旦、第一部を閉じますが、中途半端な終わりなので、第2部では準備出来次第、仕切り直しのスタートをしていきたいと思います。
それまでは、短編としてその後の二人を書いていきたいと思います。
どうも、ありがとうございました!!( ´∀`)




