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第40話 新しい家族

いつも、お読みいただきありがとうございます。

今回は、新しい家族として、写真撮影回、改めての、幼馴染や同期との会話、ジョエル神父の、やり遂げた感などの、さまざまな感情が入り乱れる回となります。

■Scene 1:退場 ― 光の粒の中を歩くふたり


鐘の音が、柔らかく教会の天井を震わせた。


バージンロードに散った白い花びらの上を、

エリックとリサがゆっくりと歩き出す。


エリックの頬を、大粒の涙がひとつ、またひとつ伝う。

リサは手を握りながら、小さく笑った。


「もう……こんなに泣いてたら、前が見えなくなるわよ」


「……ごめん。でも、綺麗すぎて……」


震える声で絞り出すように言うエリック。

その姿に、リサの胸の奥で温かいものがじんと広がった。


祭壇の前では、司祭服のジョエル神父──エドガーが

揺らぎのない表情で二人を見送っている。

ただ、その肩はわずかに緩んでいた。


(……よかった。無事に終わった。

 あとは、この涙の洪水に付き合うだけだな)


そんな内心は誰にも悟られない。


扉の外へ出ると、陽光がふたりを包む。

風がリサのドレスの裾を揺らし、拍手が重なった。



■Scene 2:教会前 ― 両家の最初の一枚


写真スタッフの声が響く。


「ご家族の皆さん、こちらへどうぞー!」


エリックの母・マーガレットは、

目元を何度もハンカチで押さえながら息子の肩に手を置く。


「エリック……あなたが、こんな日を迎えるなんて……」


「お母さん……ぼ、僕……っ」


エリックの涙は止まらない。

父のトーマスは照れくさそうに背中を叩いた。


「ほら、胸を張れ。泣くのはいいが、顔は上げなさい」


「うん……!」


そして必ず空気を変えるのは、あの姉たちだった。


カレンが眉を上げる。


「エリック~? ちょっと泣きすぎじゃない?」


リディアも腕を組んで追撃する。


「花嫁より泣いてどうすんの。順番逆よ?」


「だ、だって……っ」


リサはこらえきれず、泣き笑いをこぼす。


そんな中、父・グレイが娘のドレスをゆっくりと見渡し、

静かに息をついた。


「……カミラにも似合っていたが、

 リサ……お前にも本当に似合う。取っておいてよかった」


リサは涙に滲む視界のまま、父を見上げる。


「……ありがとう、お父さん。私、お母さんのドレスを着るのが夢だったの。お母さんとお父さんに、すごく感謝してる……そして、私を選んでくれたエリックにも」


グレイは小さく頷いた。


「父さんにとって、お前が幸せならそれで十分だ。

 難しいことも増えるだろうが……支えるよ。まだ若いんだからな」


リサは微笑み、久しぶりに“娘の顔”に戻った。


挿絵(By みてみん)


■Scene 3:幼馴染の祝福


そのとき、二つの影が駆けて来た。

エリックの地元ミネソタの幼馴染、オリバーとダニエルだ。


「エリック!!おめでとう!!」

「ほんとに結婚するとはなぁ!やるじゃん!」


二人を見るなり、エリックはまた泣いた。


「来て……くれて……ありがとう!(泣)」


ダニエルは噴き出す。


「泣き方が本気すぎる!卒園式より泣いてない?」


オリバーは目を細め、優しく肩を叩いた。


「でも……エリックらしい。嬉しいときは、ちゃんと泣けよ」


「うう……本当に、ありがとう……ダニエル、オリバー!!(泣)」


エリックは、幼馴染たちに抱きつく。ダニエルは、一瞬勢いによろめくも、3人で肩を寄せ合い、祝福を送る。


リサはその光景を見て、また静かに笑った。


次にラボ仲間のアンナが駆け寄る。


「リサ!本当に綺麗だった!結婚おめでとう!」


「ありがとう、アンナ……少し恥ずかしいけど……」


アンナは興奮気味に手を握る。


「リサが年下と付き合うなんて驚いたけど、

 二人って本当に相性良すぎでしょ?

 エリック君、あんなに嬉し泣きしてるの初めて見た!」


リサは照れ、でも誇らしげに言う。


「エリックのおかげで、私も変われたの。

 今までは博士号や研究で頭がいっぱいだったけど……

 愛することも、誰かと歩くことも……彼が教えてくれたわ。

 これからは大変なことも多いけど……一緒に頑張りたい」


アンナは満面の笑みで頷いた。


「うん、絶対大丈夫!二人ならね!」



■Scene 4:司祭の視線 ― 友と仕事の境界線で


ふと視線を向けると、教会前の石段から

ジョエル神父が静かに二人を見守っていた。


風がストラを揺らし、

彼はそっと目を細める。


(……いい式だった。

 二人とも、本当に幸せそうだ)


だが、胸の奥では別の声もささやく。


(エリック……泣きっぱなしだな。

 レセプション、最後まで体力持つか?)


司祭としての冷静さと、

友としての心配。


その両方が、同じ場所で静かに混ざり合っていた。


挿絵(By みてみん)


■Scene 5:未来へ向けた一枚


スタッフが手を上げる。


「最後に、新郎新婦のお写真を撮ります!」


エリックとリサは向き合い、

そっとリサのお腹の上で手を重ねた。


エリックは涙を残したまま、微笑む。


「……リサ。今日から……家族だね」


リサは重ねた手を優しく撫でる。


「ええ。あなたとなら、どんな道でも歩いていけるわ」


陽の光がふたりを包んだ。


——カシャ。


その瞬間、

ふたりと、まだ小さな命と、

両家をつなぐ“新しい家族写真”が生まれた。


挿絵(By みてみん)

お読みいただき、ありがとうございます。

次回は、いよいよレセプション回になります。

エリックとリサが祝福される中、エリックの姉達による、エリックの過去の暴露回になります!!

喜びの涙でいっぱいのエリックが、徐々に恐怖に怯え、リサやゲストが大爆笑の回となります。

次回を楽しみにしてくださいね。


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