独身最後の夜
いよいよ、明日が結婚式。
両家の食事会を終え、帰路につき、いつもより落ち着かない夜。
明日は、いよいよ正式に夫婦となる、二人の結婚前夜の回になります。
同じ屋根の下で暮らすようになってから、
ふたりにとって日々が“当たり前”のように溶け合っていった。
式前日の夕方、二人と両家の家族との小さな食事会を開き、お互いの家族は、エリックとリサが夫婦になる事を、姉たちの冗談を交えながらも、穏やかに語り合った。
その後二人はいつものように、帰宅し安堵できると思っていたが……
だが、この夜だけは違った。
式の前日という事もあり、どこか、空気が静かで、胸の奥がそわそわしている。
明日は結婚式。
ふたりが「家族」になる前の、最後の夜だった。
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Scene 1:静かな夜の部屋
夕食後、片付けを終えたエリックはリビングのソファに座り、
そっと深呼吸した。
隣では、リサがお腹を撫でながら本を読んでいる。
(……明日なんだ)
そう思うたびに胸が熱くなり、
少し怖くなり、
また嬉しくなる。
「リサ」
「ん?」
「……明日、だね」
リサは本を閉じて微笑んだ。
「うん。ついに、ね」
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Scene 2:リサの不安と、母の話
「ねぇ、エリック」
「うん?」
リサは少し迷うように言った。
「私……母のドレス、着るんだよね。明日」
エリックは静かに頷く。
「うん。すごく似合ってた」
リサの目が、少し潤む。
「母が亡くなったとき……
自分が結婚するとき、着てあげられたらいいなって思ってたの。
でも、まさか本当に叶うとは思わなかった」
「……リサ」
「母が見たらね……たぶん、驚くと思う。
私がこんなに幸せそうな顔してるなんて」
言いながら、リサはそっと目元を指で押さえた。
エリックはリサの肩に手を置いた。
「……見てるよ。絶対」
「そうかな」
「うん。リサが幸せになる瞬間……
誰よりも近くで見たいはずだよ」
リサはほんの少し震える声で言った。
「……ありがとう」
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Scene 3:エリックの胸の奥の言葉
しばらく沈黙があった。
夜の静けさが、二人を包み込む。
エリックは真剣な目でリサを見つめた。
「リサ……ひとつだけ言わせて」
「なに?」
「……怖かったんだ」
リサが目を瞬く。
「何が?」
「明日、ちゃんと誓えるか。
リサと赤ちゃんを守れるか。
ほんとに僕でいいのかって……ずっと不安だった」
静かに言葉を続ける。
「でもね……今日ここで、リサが笑ってくれて、
赤ちゃんがここにいて……
その全部を見てたら……」
エリックの目に涙が浮かんだ。
「“大丈夫だ”って思ったんだ。
僕は、二人を幸せにしたい。
この先、何があっても」
リサはそっと彼の手を握った。
「……私もよ。
怖くないと言ったら嘘だけど……
でも、あなたとなら、どんな未来でも歩いていけるって思う」
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Scene 4:お腹の子へ
リサがエリックの手を取り、自分のお腹に当てた。
「聞いてるかな……」
「……聞いてるよ。絶対」
エリックはお腹越しに小さく囁く。
「パパ、明日、ちゃんと誓うよ。
君と、ママを守るって」
リサの目から涙がこぼれ落ちた。
「エリック……」
「ごめん、泣かせるつもりじゃ……」
「ううん。嬉しいの」
Scene 5:眠りにつく前
ベッドに入ると、
リサはエリックの胸に顔を寄せてきた。
「ねぇ」
「なに?」
「明日さ、私……絶対泣くと思う」
「僕もだよ」
ふたりは小さく笑った。
エリックがリサの髪を撫でながら言う。
「おやすみ、リサ。
明日、きみの隣に立てるのが……本当に幸せだよ」
「うん……おやすみ、エリック」
リサが目を閉じる。
エリックは、眠りにつく彼女をそっと抱きしめた。
(明日から、家族だ)
その事実に胸が満たされていく。
そして、二人は静かな夜の中で――
ゆっくりと眠りについた。
いよいよ、明日の結婚式ということで、いつもより落ち着かない夜を過ごしましたが、結婚式を挙げる喜び、お腹の子どもと早速3人家族になる事を実感しながら、幸せに包まれる二人でした。
次回は、いよいよ結婚式となります。
※最近イラストが安定しなくて、すみません。
前回も、うまく入れられなくて、申し訳ありません。




