第32話 独身最後の夜(前編)ー両家の食事会
いよいよ、結婚式の前日回となります。
今回は、エリック、リサ、二人の家族が揃っての食事会の回になります。
緊張と笑いの中での食事会となります。
良ければ、ご覧ください。
式の前日、夕方。
小さなレストランの個室に、
コール家とホイットニー家が揃っていた。
控えめな照明と木のぬくもりが落ち着いた空間。
リサは少し緊張した面持ちで、
エリックの隣に座っていた。
「大丈夫?」
エリックが小声でささやく。
リサは微笑んで頷いた。
「うん。あなたが隣にいるから」
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Scene 1:静かな幕開け
最初に口火を切ったのは、エリックの母・マーガレットだった。
「リサさん、お腹の方は大丈夫?
無理してない?」
「はい、大丈夫です。ありがとうございます」
その柔らかい笑顔に、場が少し和む。
トーマス(エリック父)も穏やかに続けた。
「エリックは……本当にリサさんのことを大切にしている。
式の準備も、ずっと楽しそうだったよ」
エリックの耳が赤くなる。
カレン&リディア(姉2人)は、にやり。
「ねぇリサさん、エリックってこう見えて泣き虫でしょ?
明日、絶対に泣くわよ」
「ちょ、ちょっと姉さん……!」
リサは小さく笑って言った。
「ええ、知ってます。
でも、そこが好きなんです」
「ほらね〜!」とカレンたちが拍手。
エリックは顔を覆った。
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Scene 2:グレイの沈黙と、一言
その流れを静かに見守っていたのが、
リサの父・グレイだった。
表情は固く、言葉も少ない。
エリックは内心ひやひやする。
(……怒ってないよな……?)
そんな緊張の中、グレイがゆっくり口を開いた。
「……リサ」
娘に向ける声は、驚くほど優しかった。
「お前が……笑っている顔を見るのは久しぶりだ。
……よかったな」
リサの目が大きく揺れた。
「……お父さん」
グレイの視線が、今度はエリックへ向けられる。
「エリック君」
「は、はい!」
「……娘を、頼んだよ」
その一言は短かったが、
重さと温かさが混じっていて、部屋の空気が変わった。
エリックの胸が熱くなる。
「……はい。必ず。
僕は、リサと……生まれてくる子を守ります」
声が震え、涙がにじむ。
カレンが小声でリディアに囁く。
「ほら、早速泣きそう」
「だから言ったのよ、絶対泣くって」
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Scene 3:マーガレットの気遣い
マーガレットがリサにそっとお茶を差し出す。
「リサさん……あなたのお母様のドレス、
本当に素敵だったわ。
あなたにとても似合ってる」
リサの表情に、ふと陰りが差す。
「……母にも、見せたかったです」
マーガレットは優しくリサの手に触れた。
「きっと、見てるわよ」
その言葉で、リサの目に涙が溢れた。
エリックはそっと彼女の手を握る。
Scene 4:エリックの回想(短く)
ふと、エリックの胸に
湖畔での誕生日、
図書館での居眠り、
リサが失敗をフォローしてくれた夜──
いくつかの記憶が一気に流れ込む。
(……あの日から、ずっと思ってた。
この人と生きたいって)
胸の奥がまた熱くなる。
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Scene 5:ゆるく温かい締め
最後にトーマスが笑いながら言った。
「まぁ……エリックもリサさんも、
明日は緊張して、たぶん真っ白になると思うけど」
「だな」「絶対そうだ」
カレン&リディアが同意し、みんなが笑った。
トーマスは続ける。
「でも……家族みんなで、ちゃんと支えるから。
だから安心して、二人の式に集中しなさい」
マーガレットも頷く。
「あなたたちが幸せなら、それでいいの」
リサが涙をふきながら微笑んだ。
「……ありがとうございます」
エリックも深く頭を下げる。
「本当に……ありがとうございます」
こうして両家の食事会は、
静かに、けれど温かく幕を閉じた。
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Scene 6:帰り道の二人
レストランを出た帰り道、
秋の夜風が心地よかった。
「……エリック」
「うん?」
「なんだか……幸せすぎて、怖いくらい」
エリックはリサの手を強く握った。
「大丈夫。僕がいるよ。
これから先も、ずっと」
リサは小さく笑う。
「うん……ありがとう」
街灯に照らされた二人の影が、
ゆっくり寄り添うように揺れていた。
このあと二人は家に帰り──
静かな「独身最後の夜(後編)」へと進んでいく。
お読みいただき、ありがとうございます。
エリックの姉たちは相変わらず賑やかで、リサの父、グレイも厳粛ながらも、お互いの家族が祝福してくれました。
次回は、独身最後の夜(後編)になります。
今回は、挿絵が間に合わず、文章のみの投稿となりますが、出来次第挿絵を入れようと思います。
申し訳ございません。




