第27話 君だけに伝えたい言葉
【前書き】
前々回、エリックは自分の過去と向き合い、心の整理をすることができました。
今回は、その続きの物語になります。
静かな夜の公園で、エリックが“どうしても伝えたい言葉”をリサへ届けます。
少し感情の揺れる回になりますが、最後は温かい雰囲気になっています。
ある正午過ぎの午後、大学院のラボを出たリサは、胸の奥に残る不安を抱えたまま、ひとり教会へ向かった。
赤ちゃんのこと。
エリックとの未来。
父との関係。
祈ることで気持ちを整えたかった。
正午前の教会は静かで、誰もいなかった。
リサは椅子に座り、胸に手を当ててそっと目を閉じた。
(どうか……この子が、無事に生まれてきてくれますように)
(エリックと、幸せになれますように)
祈りを終えたあと、リサは誰にも見つからずに教会を出ていった。
──エリックが後から告解に来るとは、夢にも思わず。
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その日の夕方。
研究を終え、夕日に照らされた廊下を歩くエリックの足は重かった。
(……全部、言わなきゃ)
胸の奥に積もっていた後悔と罪悪感。
リサの妊娠が分かった今こそ、過去に向き合うべきだと思った。
エリックは教会に入り、告解室の扉を開いた。
暗い小部屋で、彼は過去の恋愛も、弱さも、迷いも、すべてを語った。
司祭は静かに、低い声で赦しを告げた。
──その声が親友エドガーのものだとは、気づかなかった。
胸の重さが少し軽くなった気がした。
エリックは教会をあとにした。
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◆Scene 1:夜の誘い(ラボ帰り)
夜。
ラボを出て外に出ると、湿った夜風が頬を撫でた。
リサが帰り支度をしている。
「リサ」
エリックが声をかける。
その声は、どこか決意を含んでいた。
「ちょっと……話したいことがあるんだ」
「え……?」
「近くの公園に、寄ってもいい?」
リサは驚きながらも頷いた。
「うん。いいわ」
二人は並んで歩き出した。
互いに、相手が“今日教会にいたこと”など知る由もないまま。
◆Scene 2:夜の公園
街灯の明かりが小さく揺れる夜の公園。
人影はなく、静かな夜気が満ちていた。
ベンチに座ると、エリックは息を整えるように深呼吸した。
「リサ……プロポーズする前に、話しておきたいことがある」
リサの胸が少しざわついた。
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◆Scene 3:エレンとの過去
「僕には……過去に付き合っていた人がいる」
リサの指がピクリと動く。
「幼馴染の、エレン。
15歳から17歳まで、付き合ってた」
エリックは膝の上で手を握りしめる。
「17歳の時に……一線を越えてしまった。
大学で進路が違って、そのまま別れた。
もう連絡も取ってない」
そして、苦しげに零すように。
「キャンプの夜……一瞬だけ、彼女のことがよぎったんだ」
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◆Scene 4:後悔と涙
「ずっと言えなくて、ごめん」
目元が赤くなる。
「君を裏切ってるみたいで……怖かった。
でも、どう言えばいいか分からなくて」
声が震えた。
「こんな僕を……どう思う?」
◆Scene 5:リサの返事
沈黙。
夜風が二人の間を通り抜ける。
リサがそっと口を開いた。
「……知ってたわ」
「え?」
「キャンプの時ね。あなたの優しさで……全部分かったの」
リサは静かに微笑む。
「痛くない?って、何度も聞いてくれたでしょう?
あれで……“この人は今の私を愛してくれてる”って分かったの」
(本当は、少しショックではある。けど、その当時は出会う事すら出来なかった。……でも、私を一番愛しているのは分かっているから……)
リサは、エリックの涙を見て、彼女自身も涙ぐむ。
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◆Scene 6:リサの想い
リサは彼の手を包む。
「過去は変えられない。
でも……あなたの優しさは、今のものよ」
エリックの涙が静かにこぼれ落ちる。
「リサ……」
「もう謝らないで。
言えなかったのも、怖かったのも……全部分かるから。でも、エリックが、私の事を一番愛している気持ちは本当だから!」
◆Scene 7:エリックの決意
エリックはリサの手をぎゅっと握り返した。
「僕は……君を愛してる。
過去じゃない。今の君だけを」
リサは小さく笑って頷いた。
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◆Scene 8:プロポーズ
エリックは立ち上がり、ポケットに手を入れる。
「リサ」
「……え?」
エリックは片膝をつき、小箱を開いた。
夜の街灯に指輪が静かに輝く。
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◆Scene 9:誓い
「リサ・ホイットニー」
「僕と……結婚してください」
「君と、お腹の赤ちゃんと……三人で、家族になりたい」
「一生守る。幸せにする。
だから……結婚してください」
◆Scene 10:リサの答え
リサの瞳から涙があふれる。
「……はい」
「はい、結婚します」
「エリックと赤ちゃんと……家族になりたい」
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◆Scene 11:指輪と抱擁
エリックはリサの左手に指輪をはめた。
サイズはぴったりだった。
「すごく、似合ってるよ」
「……きれい」
二人は抱き合う。
「愛してる、エリック…」
「僕も……愛してる、リサ……」
◆Scene 12:キス
夜の公園で、静かに唇を重ねた。
未来の匂いがした。
離れたあと、エリックが照れながら言う。
「……ありがとう、リサ。僕のプロポーズを受けてくれて。」
「どういたしまして、婚約者様。これからも、よろしくね」
リサは、にっこりと笑顔を見せる。
二人は笑い合った。
◆Scene 13:帰り道
リサの家の前。
「明日、君のお父さんに話そう。僕の実家はミネソタだから、少し遠いけど週末くらいに、僕の家族にも話すよ。リサにも両親や姉さんたちにあって欲しいんだ。」
「うん。明日はお父さんに、ちゃんと話しましょう。それから、後日、あなたの家族にもね。」
最後にもう一度キスをして、リサは家へ入った。
エリックはその姿を見届け、夜空を見上げた。
(家族になるんだ……)
胸の奥がじんわりと熱くなった。
【後書き】
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
エリックはようやく、自分の過去と向き合い、
リサへしっかりと言葉にして伝えることができました。
そして、ついに二人は“婚約者”になりました。
次回は、いよいよご両親へ報告する回になります。
お互いの家族がどんな反応を見せるのか……
そして、二人はどう向き合っていくのか。
よろしければ、続きもお付き合いください。




