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第2話 テニスコートでの発見

居眠り博士課程の青年・エリックと、冷静な先輩研究者リサ。

研究と恋に揺れる二人を見守るのは、親友であり、神父であり、そして研究者でもあるエドガー。

図書館から始まった物語は、やがて研究も人生も巻き込みながら広がっていきます。

第2話になります。よろしくお願いします。

午後の講義が終わり、リサ・ホイットニーは図書館に向かう途中だった。

いつもの最短ルートではなく、今日は少し遠回りして学内を歩いてみることにした。研究で煮詰まっている時は、たまに散策をして気分転換をするのが彼女の習慣だった。

秋の風が心地よく、キャンパスの木々も色づき始めている。

テニスコートの前を通りかかった時、リサの足が止まった。

コートからは、軽快なボールを打つ音と、元気な声援が聞こえてくる。何気なく覗いてみると、そこには見慣れた顔があった。

(あの人…)

茶色い髪の、眼鏡をかけた男子学生。図書館でいつも居眠りしている、あの学生だった。

しかし、今の彼は全く違って見えた。

挿絵(By みてみん)

白いテニスウェアに身を包んだエリックは、軽やかにコートを駆け回っていた。

バックハンドで相手のボールを見事に打ち返し、ネット際でのボレーも決める。その動きは無駄がなく、美しいフォームだった。

「ナイスショット、エリック!」

対戦相手が称賛の声を上げる。

「よし、次はもっと厳しいところを狙ってみろ」

背の高い金髪の男性が、エリックに指示を出している。

リサは、その光景に驚いていた。

(あの人がエリック…そして、あんなに運動ができるなんて)

図書館では いつも眠そうにしているのに、テニスコートでは生き生きとしている。まるで別人のようだった。

エリックの集中した表情、素早い動き、仲間たちとの自然な交流。どれも、図書館での彼からは想像できない一面だった。

その時、エリックがふとこちらを向いた。

一瞬、二人の目が合った。

リサは慌てて視線を逸らし、何事もなかったように歩き続けた。エリックも少し驚いたような表情を見せたが、すぐにテニスに集中し直した。

(あの人、図書館によく来る…)

エリックは心の中でそう思ったが、相手のボールが飛んできて、それ以上考える暇はなかった。

「エリック、集中しろ!」

金髪の男性─エドガーが声をかける。

「あ、すみません」

エリックが慌てて返事をした。

(エリックという名前なのね)

リサは二人の会話を聞きながら、その場を後にした。

夕方、リサが図書館に到着すると、案の定エリックがいつもの席にいた。

しかし、今度は真剣に教科書に向かっている。テニスで見せた集中力が、勉強にも向けられているようだった。

(さっきまであんなに活発だったのに)

リサは少し離れた席に座り、自分の研究に取り掛かった。でも、時々エリックの方に視線が向かってしまう。

午後のテニスコートでの姿が、頭から離れなかった。

1時間ほど経った頃、エリックの様子に変化があった。

ペンを持つ手が止まり、頭がコクリコクリと下がり始める。

(やっぱり)

リサは内心でため息をついた。

テニスで疲れているのだろう。無理もない。

エリックは教科書の上で、静かに寝息を立て始めた。

ブラウンの髪が少し乱れ、眼鏡が少しずれている。テニスで見せた躍動感とは対照的な、穏やかな寝顔だった。

リサは、その寝顔を見つめていた。

(疲れているんでしょうね)

起こしてあげた方がいいのか、それとも休ませてあげた方がいいのか。

結局、リサは何もしなかった。

(別に私が気にすることじゃない)

そう自分に言い聞かせながらも、リサの視線は時々エリックの方に向かっていた。

テニスでの活発な姿と、図書館での居眠り。

まるで二つの顔を持つ人のようで、なぜか興味を引かれてしまう。

(エリック…)

彼の名前を心の中で呟きながら、リサは自分の勉強に戻った。

30分後、エリックは自然に目を覚ました。

「あ…また寝てしまった」

慌てて時計を確認し、周りを見回す。

少し離れた席に、あの美しい女性がいる。今度も視線を感じたような気がしたが、彼女はすぐに本に目を戻した。

(午後、テニスコートで見かけたような…)

でも、確信は持てなかった。

エリックが荷物をまとめ始めると、リサも同じタイミングで席を立った。

二人は図書館の出口で、また少しだけ目が合った。

でも今度も、お互いに会釈をするでもなく、そのまま別々の方向に歩いて行った。

リサは歩きながら考えていた。

(面白い人ね)

テニスでの躍動感と、図書館での居眠り。

知的な集中力と、無防備な寝顔。

まるで複数の顔を持つ人のようで、予想がつかない。

(でも、別に興味があるわけじゃない)

そう自分に言い聞かせながらも、リサの心の中に小さな好奇心が芽生えていた。

エリックも同じように考えていた。

(あの人、午後テニスコートにいたような気がするんだけど…)

でも、話しかける勇気はない。

相手は明らに知的で、近寄りがたいオーラを放っている。

挿絵(By みてみん)

こうして、二人はまだ言葉を交わすことなく、それぞれの道を歩んでいった。

でも、お互いの存在は確実に意識の中に刻まれ始めていた。

テニスコートでの偶然の発見が、リサの中の小さな変化の始まりだった。

まだ冷たい距離感は保っているが、エリックという名前を知り、彼の意外な一面を目撃したことで、単なる「居眠りする学生」から「興味深い人物」へと、少しだけ認識が変わっていた。

読んでいただきありがとうございます。

昨日後書き書くのを忘れてました。申し訳ございません。

初めてのことで、不慣れで、色々と至らない点も多々あります。

おかしい点や気になることなどありましたら、いつでも、指摘してください。

いよいよ、第3話から本格的に、2人が近づくきっかけが始まり、テニスの時の金髪の青年の正体も判明いたします。名前はすでに出てますが(笑)

次回は、金曜日に予定しております。

よろしくお願いします。

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