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死刑囚だった俺が小学生に転生!? 裏切られて死んだけど、ここからは俺のターン。裏切り者は詰みです。  作者:
2章 小学生編

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48話 決戦前日

 目を覚ました瞬間、頭の奥が微かに重い。


 思考を止めずに眠ったせいか、夢の中ですら警戒していたような疲労感が残っている。

 カーテン越しに差し込む朝の光を見上げながら、俺は天井を見つめたまま、しばらく呼吸を整えた。


(……朝か)


 部屋の外からは、台所の食器が触れ合う音がかすかに聞こえてくる。

 耳を澄ませると、それは静かで、整った朝のリズムだった。母親のものだ。


 ベッドから体を起こす。無防備な自分に背中を向けた家の音が、どこか不気味にも思えた。


 だが、今はまだ“様子見”だ。


 昨夜、あれほど泣きながら誓った母親が、今どんな顔をして俺と向き合うのか。

 俺がすべきことは、それを観察すること。それだけだ。


 足元に置いていたリュックから、スマートフォンを取り出した。

 画面をタップして、録音アプリを停止する。

 夜中、母親の動きがあるかもと思って寝る前に仕掛けておいたものだ。

 再生は後で。今はまず朝を乗り切る。


 軽くストレッチをしてから母親が準備していた服に袖を通す。

 昨日の緊張とは裏腹に、今日の始まりは妙に静かだ。


「アキラ、ごはんできてるよ」


 リビングから母親の声が届いた。

 声色は柔らかく、優しさを含んでいる。いつもより少しだけ明るい。


 食卓に着くと、トーストと目玉焼き、サラダ、そして温かい味噌汁が並べられていた。


「よく眠れた? 今日は寒いみたいだから、上着忘れないでね」


「……うん。ありがと」


 俺は、努めて子供らしい声で返す。

 母親は微笑んで俺を見つめている。


(演技か、それとも本当に“守る”側に立つ気になったのか……)


 心の中で問いを立てながら、俺は表情を崩さずに受け取る。

 どちらにせよ、いまは泳がせて観察する段階だ。


 食後、身支度を整えながら、俺は今日の予定を考えていた。


 (……そういえば)


 制服のポケットに手を入れたとき、不意に思い出す。


(今日、放課後……桜と会うんだったな)


 正確には放課後に桜の家で落ち合う。

 そこで、俺は桜へ俺に何かあった際に何かアクションを起こしてもらうように打ち手を打つ。


 カバンを肩に背負い、玄関へと向かう。

 靴を履きながら、内ポケットにスマホの録音データがあることを再確認する。


 ドアを開けると、外の空気が冷たく肌を刺した。


 そして、見えたのは 道端に停められた黒塗りの車。

 その後部座席の窓がわずかに開き、中から見慣れた瞳がこちらを見ていた。


 ――桜だ。


 まるで俺が出てくるタイミングを読んでいたかのように、完璧な間合い。

 朝の光に溶けるような笑みが、ゆっくりと浮かぶ。


(……早いな)


 警戒と好奇心が同時に胸に沸き上がる。

 俺は小さく息を吐いて、玄関の扉を静かに閉じて黒塗りの車に向かった。


 ドアを閉めて数歩。黒塗りの車の後部座席のドアが、加賀の手で開かれる。

 躊躇いなく乗り込むと、隣には制服姿の桜が座っていた。静かに笑みを浮かべている。


「おはよう、アキラ」


 いつのまにか呼び捨てが定着しているな。


「……おはよう、桜」


 俺はあえて呼び捨てで答えた。


 車内には、ほんのり香る紅茶のような匂いと、冷えたレザーの座席の感触。

 俺は少し姿勢を整えながら、桜の視線を横目に感じる。


「そういえば、今日の放課後――うちで話す予定、だったよね?」


 桜が、さらりと口にした。

 あの静かな瞳が、わずかに期待を含んで揺れている。

 好奇心というよりも、“知って当然”という余裕の混ざった興味。


「大事な話なんでしょ? どういう話なの?」


 少し身を寄せてきた桜に、俺はあくまで無邪気な口調で応じた。


「……まぁ大事な話だからな。家で話そう」


「ふふ、そっか。焦らすね」


 桜は軽く口元に手を添えて笑う。

 その目が、まるで俺の“焦らし”の意図まで読んでいるように見えたのは気のせいだろうか。


(……こいつは本当に将来は大物になるな)


 無害なようでいて、芯がまるで見えない。

 けれど俺も、それに負けるつもりはない。


 車は静かに走り出し、数分の後、学校の正門に到着した。


「行ってらっしゃいませ」


 運転席から降りた加賀が、無駄のない所作でドアを開ける。

 その瞳に敵意はないが、俺の背中の奥を測るような冷静さは、相変わらずだった。


「ありがとう、加賀さん」


 俺は無邪気な声で礼を言い、桜と一緒に校門をくぐった。

 そこからはいつも通りの、騒がしく、どこか緩んだ日常の空気。


 教室に着くと、同級生たちの声が飛び交っていた。

 俺はいつものように、にこにことした子供の顔をしながら、教室の席についた。

 そして授業が始まる。


 教科書の文字が、単なる模様のようにしか見えなかった。

 桜のこと、母親の涙、父親の帰宅。

 思考は常に水面下で蠢き、脳の奥が休まらない。


 先生の声が、遠く響いている。


 昼休みには、スマホの録音データを確認したが収穫はなしだった。

 

 (さすがに父親がいないと情報はないか。電話でもしてくれればよかったんだが……)


 その後クラスメイトと無難に会話をしながら、必要以上に踏み込ませないよう配慮する。

 けれど、放課後が近づくにつれて、心の奥が少しずつ騒がしくなっていく。


 今日は放課後、再び“あの家”に行く。


 何を話すか、何を見せるか。

 そしてどう俺の味方につけるか戦略を練る。


 午後のチャイムが鳴り、最後の授業が終わった。

 ざわめく教室の中で、俺はゆっくりと教科書を閉じた。


 そのままチャイムの音がまだ空気に残っているうちに、俺は静かに席を立った。

 と、そのタイミングを計ったように、すぐ隣から声がかかる。


「アキラ、行くわよ」


 桜が、まるで何もなかったように笑っていた。

 俺もそれに合わせて、小さく頷く。


 教室を出て、廊下を歩く。

 校門へと向かう足音は、なぜか今日だけ少し重く響いていた。


 外に出ると、見慣れた黒塗りの車が静かに待機していた。

 そして、いつもと変わらぬ無表情の加賀が、まるで儀式のようにドアを開けて俺たちを迎える。


「お迎えにあがりました」


 淡々とした声。微動だにしない姿勢。

 けれど、その眼だけが、確かにこちらを注視している。


 俺はゆっくりと加賀の前に立ち、少しだけ視線を逸らしながら、車内へと乗り込む。


(さて――)


 エンジンの音が低く唸り、再び扉が閉じるその瞬間。

 俺の心の奥では、別の音が確かに鳴っていた。


(今度は俺の番だ)


 手にできるものはすべて手に入れる。

_____________________________


お読みいただきありがとうございます。

更新は出来るだけ毎日1話1000文字~3000文字で更新していきます。

ブックマークをしてお待ちいただけますと幸いです。


もし面白いと思いましたら、リアクションや、評価やレビューをしていただけると泣いて踊って大声で喜びます。


モチベーションがあがるので、是非よろしくお願いいたします。

_____________________________

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