42話 違和感とは
今度は、わざとらしいくらいに音を立てて玄関のドアを開ける。
「ただいま~!」
あくまで何も知らない子供、って感じで演出する。
「おかえりなさ~い」
遠くから母の声。足音と一緒に、俺を迎えに来る。
(さっきまで、俺を消す計画について話してたはずなのに……この明るさ、なんなんだよ)
「お腹すいた~!」
あえて子供っぽく振る舞いながら、相手の様子を観察。
そのまま自然に、リビングや廊下を視線でなぞる。
朝からの違いがないか、わずかな変化も見逃さないように。
何か新しい物が増えてるわけでもない。
罠や仕掛け、そういった類のものは……今のところ見当たらない。
さすがにどこかに証拠が残ってるわけでもないか……。
なら、せめて違和感だけは拾っておく。
何かのヒントになるかもしれないし……逆に、俺の命綱になる可能性もある。
もしかしたら、今日が“その日”かもしれない。
そう考えると、自然と呼吸が整っていく。
嫌でも、冷静にならざるを得ない。
母親はすでに昼ごはんを準備していた。
昨日の残りに、いくつか品を足して温めてくれている。
リビングで食べ始めると、母親が口を開いた。
「そうだ。お父さん、明後日帰ってくるんだって」
(……きた)
あの録音で、母親は“新人”扱いだった。
つまり監視役は母で、実行役は父親――そう考えるのが自然。
ってことは、決行は父親が家にいる時。
もしくは、父親が罠を張り終えた“その後”か。
「そ、そうなんだ」
つい、わずかにどもんでしまった。
「うん。仕事が落ち着いたから、数日いるって」
その“数日”のどこかが決行日。
もしくはその間に準備が完了するってことだろう。
どっちにしても、俺は父親がいる日を“決行日”と見て動くしかない。
今まで、命を狙われたことなんて、何度もあった。
でも――さすがに、小学生でこれはないだろ。
つくづく、おかしな人生だよな。
俺はそのまま、母親が用意してくれた昼飯を食べる。
頭ではいろいろ回ってるけど、演技は崩さない。いつも通りの“いい子”で。
あと少しで澪から情報が来る。
でも、焦ってもしょうがない。
はやる気持ちを抑えつけながら、時間が過ぎるのを待った。
飯を食い終わって、母親の様子をさりげなく観察――特に怪しいところは、ない。
俺はそのまま自室に戻り、澪との約束の時間までの間、軽く運動でもして考えをまとめることにした。
……が。
体に、微妙な違和感を覚える。
動きが軽い。明らかに、前よりも。
(……順応が早すぎる)
前に動いたときと比べても、感覚が違いすぎる。
子供の回復力とかってレベルじゃない。数日でここまで? ありえない。
やっぱり、死神がなんかやってんのか……。
この体自体、何かしら細工が入ってる可能性は高い。
……握力でも測ってみるか?
ちゃんと、数値で出せる何かで確認したい。俺のこの“違和感”が、勘違いなのか、本物なのか。
トレーニングを続けて、休憩の合間にスマホで情報を漁る。
けど――これといった情報はなし。
……ただ。
なぜか、ニュース欄とか見ると、頭がズキッとする。
(……なんだ、この感じ)
前にもあった。
日付を見た時、何かが引っかかるような、あの違和感。
これも、きっと“何か”の手がかりだ。
そう思って、頭を回転させようとするけど……働かない。
いや、むしろ――痛みが強くなる。
(やっぱり、死神が……)
直感がそう言ってる。
けど、霧がかかったみたいに、何も見えない。
……くそ、何かある。絶対あるのに。
まるで睡眠薬を飲まされているかのように思考が途切れる。
次の瞬間、俺は……。
……気がついたら、布団の中にいた。
(あれ? ……寝てたか。)
筋トレの疲れが出たのかもしれない。
俺は澪との約束に送れてしまうのではないかと思い、時計を見ると、まだ約束の時間には余裕がある。
俺は軽く伸びをして、立ち上がった。
そして、澪の待つ“例の場所”へと向かう。
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