表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死刑囚だった俺が小学生に転生!? 裏切られて死んだけど、ここからは俺のターン。裏切り者は詰みです。  作者:
2章 小学生編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/74

38話 大豪邸へ

 桜からのメッセージを確認した俺は、母親に外出することを伝えた。


「友達が迎えに来てるから、行ってくるね」


 玄関のドアに手をかけながら、振り返って母に声をかける。

 キッチンでは、母が朝の洗い物をしていた。蛇口の水音が止まり、母が顔を上げる。


「いってらっしゃい。遅くなるときは、ちゃんと連絡しなさいよ」


 そう言って振り向いた母の顔は、どこか作られたような笑みを浮かべていた。

 心配しているようにも見えるし、ただの義務感にも見える。


 一瞬だけ視線が交錯する。

 俺はその曖昧な温度に触れながら、何も言わずに軽く笑ってみせた。


「うん、ちゃんと連絡するね」


 靴を履きながらそう答えると、母は小さくうなずいた。

 リビングにはテレビの音が流れ、朝の日差しがレースのカーテン越しに差し込んでいる。


 心配されている。……いや、している"ふり"かもしれない。

 だが、それを問い詰める意味はない。

 俺にとって大事なのは、「普通の子ども」に見せることだ。


 そのまま俺は準備を済ませて玄関を出る。

 家を出て少し歩くと、近隣の住宅街には明らかに浮いた存在。

 場違いな黒塗りの車が角に停まっているのが目に入った。


(さて……お嬢様のお迎えといきますか)


 車に近づくと、後部座席の窓がスッと開き、桜が顔をのぞかせる。

 俺は無言でドアを開けて乗り込み、彼女の隣に腰を下ろした。

 運転席には、やはり加賀が座っている。


 俺が座ったことを確認した桜が口を開く。


「それじゃ、アキラ。加賀に話があるんだよね?」


 桜が横目でこちらを見ながら、少し楽しげに口を開く。

 その表情には、ほんのわずかに探るような気配が混じっていた。


「うん。屋敷に着いてから話すよ」


 俺が頷くと、運転席の加賀がルームミラー越しに目線を送ってくる。


 それを聞いて、少し疑問を含んだ声で加賀が振り返る。


「かしこまりました。しかし、私でお力になれることでしょうか?」


 加賀はハンドルに添えた手はそのままに、視線だけが慎重に動いていた。


「うん。この前、僕が倒した相手の個人情報を一人分手に入れたんだ。

 そのデータがあれば、敵のことが少しは見えてくると思う」


 言いながら、加賀とバックミラー越しに会話をする。


「……確かに、それは助かります。現状、相手の詳細がつかめておらず、その情報が確かであれば貴重な情報となるでしょう」


 加賀の声が一段階低くなった事で、本当に重要な情報だと認識する。


 これで一つ、加賀に貸しを作れた。

 万が一、澪から情報が得られなかった場合の保険にもなる。

 この貸しは、いざという時まで温存しておこう。


「よかった。これで貸し一つ、だね」


 俺は、あえて「貸し」という言葉を強調して口にした。

 念を押すように、静かに微笑んで。


 車はすでに発進しており、桜の家の近くまで静かに進んでいた。


「加賀、防音の客室があるでしょ? 今日はそこで三人で話すわよ」


「承知いたしました。すでに準備は整っておりますので、ご安心ください」


 こういうところは、いかにも加賀らしい。

 仕える相手の意図を先回りして、準備を整えておく──忠義というより、もはや職人芸だ。


 そんな会話をしているうちに、車はいつの間にか桜の大豪邸の敷地内に入っていた。


「さあ、行くわよ!」


 桜は待ってましたと言わんばかりに勢いよくドアに手をかけた。


 その動きを見た加賀が、慌てて制止に入る。


「お嬢様。いけません。まずは私が先に降りますので、駐車スペースでお待ちください」


 確かに、桜の行動は少し不用意だった。


「だそうだよ。落ち着かないとね、お嬢様」


 皮肉交じりに言うと、桜は「あとで覚えてなさい」とでも言いたげに、じろりと俺をにらんでくる。


 そのまま車はガレージまで進み、やっと安全に降りられるタイミングを迎える。


「さあ! 今度こそ行くわよ!」


 またも勢いよく動こうとした桜を、再び加賀が冷静に止めた。


「お嬢様、恐れ入りますが、安全の確認が終わるまでお待ちください」


「だってさ。お嬢様」


 俺は笑いを含めながら桜をからかうように言う。

 それを聞いた桜は再び俺ににらみを向けながら、桜は腕を組んでおとなしく加賀の動きを待つ。

 気持ちが急いでいるのは明らかだった。


(そんなに焦ることか?)


 加賀は無駄のない動きで車を降り、静かに周囲を確認していく。

 そして確認が済むと、後部座席のドアを開けた。


 今度は無言で桜が車を降り、それに続いて俺も外へ出る。


 俺は、ふと気になったことを加賀に尋ねた。


「伊集院さんって、いつもあんな感じなの?」


「いえ。そのようなことは滅多にございません。恐らくですが……アキラ様にお会いできるのを楽しみにしていたのではと」


 桜には、友達らしい友達はいない。

 だからこそ、こういう他愛のないやりとりひとつが、彼女にとっては特別なのかもしれない。


「そうか。今までずっと厳しい環境だったから、こんなことでも楽しく感じるのかな」


 俺の独り言のような言葉に、加賀は静かに頷いた。


「ええ。お嬢様と気軽に話してくださる方がいるだけで、私としても心強い限りです。どうか、末永くお付き合いいただけますと幸いです」


「うん。伊集院さんといると楽しいし、これからも仲良くしていくよ」


 言葉を交わし終えると、先に歩いていっていたはずの桜が戻ってきていた。

 俺たちが遅いと感じたのか、腕を組みながら声を上げる。


「ちょっと加賀、早く来なさいよ!」


 その声を聞くや否や、加賀はすぐに歩き出す。

 俺も少し遅れて、その背に続いた。


(いい主従関係だな……)


 俺は二人の関係をうらやましくも思いながら大豪邸に足を踏み入れていく。

 俺が与えた情報で伊集院家がどこまで動けるのか楽しみだ。


 これで伊集院家の力を測ることが出来る。

_____________________________


お読みいただきありがとうございます。

更新は出来るだけ毎日1話1000文字~3000文字で更新していきます。

ブックマークをしてお待ちいただけますと幸いです。


もし面白いと思いましたら、リアクションや、評価やレビューをしていただけると泣いて踊って大声で喜びます。


モチベーションがあがるので、是非よろしくお願いいたします。

_____________________________

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ