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死刑囚だった俺が小学生に転生!? 裏切られて死んだけど、ここからは俺のターン。裏切り者は詰みです。  作者:
2章 小学生編

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28話 疑惑

 脳内で情報の整理を始めながら、俺は家とは逆の方向へ足を踏み出した。

 これから向かう先は廃駅だ。

 澪が待っている。


 夕暮れ時の街並みを抜け、人通りの少ない路地へと入る。

 この街の裏側。空気が少し冷たくなる。

 俺はそういう場所を知っている。慣れている。だから、妙に落ち着く。


 同時に、警戒心も自然と高まる。

 誰かに見られていないか。気配はないか。

 体に染み付いた感覚が、周囲を探る。


 やがて、視界の先に目的の場所が見えてきた。

 打ち捨てられた駅舎。錆びた鉄柵が、そこだけ時間を閉ざしているように見えた。


 かつて多くの人間が行き交った場所。

 今はただ静かに、闇を待っている。


 澪は、もう来ているだろうか。


 胸の鼓動が、少しだけ速くなる。

 期待か、それとも別の感情か。自分でもよく分からない。


 ただ、この廃駅が、俺の次の舞台になる。

 そう確信していた。手がかりが手に入る。そして、俺をハメた裏切り者へ繋がる糸口。


 廃駅のいつもの場所で、制服姿の澪は、相変わらず周囲を警戒していた。


 目が合うと、無言でこちらを促す。


 傍まで行くと、澪は鋭い視線を向けたまま言った。


「あの貸金庫には何も収穫なかったわよ」


 俺は眉をひそめる。


「……何もないって、どういうことだ?」

 俺の問いに、澪はわずかに表情を歪めた。

 その目に、僅かな焦りや、あるいは──隠しきれない苛立ちが見える。


「中に入ってたのは、大金だけ。情報なんて、それらしいものは何もなかった」


 意外だった。

 俺が生前、あの貸金庫に仕舞い込んだのは、裏社会をひっくり返すほどの機密情報だったはずだ。

 それを押さえておけば、もしもの時に交渉の材料になる……そう考えて用意しておいた。

 金もそこそこ入れてはいたが、メインは情報だった。


「……お金だけ? 機密書類は? 僕が聞いていたのは、何か情報があるって聞いていたんだけど……」


「だから、何もなかったって言ってんじゃん。大金。札束。それだけ。怪しい金だったから、手をつけてないけど」


(盗まれた……のか? あの貸金庫は、俺しか知らない場所だったはずだ)


 まさか、俺をハメた裏切り者たちが、俺が捕まる前に貸金庫の中身も──?

 だとすれば、俺の生前の重要な情報は、もう存在しないことになる。


 苛立ちと同時に、新たな疑念が湧き上がる。


「……まあ、いいわ。収穫はなかったけど、あんたみたいな小学生があそこの貸金庫の存在を知っていて、しかも名義人がアタシの調べたくなった人物だった。それに、アタシはてっきりその名義人からの依頼だと思ってたんだ。全く知らないあんたからの依頼なんて受ける筋合いなかったんだけどね。でも、個人的な興味ってやつ? だから、サービス。今回だけね」


 澪はそう言って、いくつか情報を話し始めた。

 まるで、スイッチが切り替わったかのようだった。


「まず、クジョウ、ね」


 猛が最後に残した単語。


「あれだけじゃ、特定は無理。情報が少なすぎる。地名か、人名か、組織名か。もっと何か、関連する情報がないと絞り込めない」


 ──やはりそうか。これも想定内だ。

 もう少しこっちでも情報を絞り込んでみる必要がある。

 もっと俺自身がクジョウに近づく必要がある。


「次。あんたが聞いてた伊集院家について」


 桜の家のことだ。


「伊集院家ね。あれは超がつく大物だよ。裏の世界とか、そういうレベルじゃない。政治、経済、あらゆる場所に根を張ってる。権力で言えば、日本のTOP3と言ってもいい」


 澪の口調が、どこか畏怖を含んでいた。


(超がつく大物……? なぜだ? 俺は裏社会にいた頃、それなりの権力者たちと渡り合ってきたはずだ。政治家、官僚、大企業のトップ──知らなかったはずがない。なのに、伊集院家の名前には、まったく覚えがない。なぜだ?)


 俺の知る世界とは、別のレベルの存在なのか。


(日本のトップ3……だとすれば。俺をハメて、死刑に追い込むことだって、不可能じゃないかもしれない)


 強大な力。そして、俺が知らなかった存在。点と点が、不気味な線で繋がり始める。


「そして、あんたの家族について」


 澪の目が、少しだけ冷たくなる。


「あれは、家族なんかじゃない。母親も父親も、とある海外マフィアの下部組織。人身売買や臓器売買なんでもありの、かなりアウトローな連中と繋がってる暴力団の構成員よ」


 耳を疑った。知ってはいた。この家に違和感があること。

 母親の芝居がかった優しさ。父親の不在。養子縁組の書類。


 全てが、繋がった。


「そして──」


 澪は俺の目をまっすぐ見て、淡々と言い放った。


「あんた、今、保険金かけられてるわよ。高額な。受取人は父親になってた」


 ──保険金?


 頭の中が、一瞬白くなった。


(保険金……俺に、金がかかっている?)


 父親と母親が、暴力団の下部組織。

 人身売買、臓器売買。

 そして、小学生の俺にかけられた高額な保険金。


(つまり、計画はこれからだ。俺を消して、保険金を受け取るつもりか? それとも、死んだことにされて、人身売買か、あるいは……臓器売買のドナーか何かとして、利用されるつもりなのか?)


 ぞくりと、背筋に冷たいものが走った。


 俺の家族はもっと、汚く、現実的な──金と欲望に塗れた計画の一部だったのかもしれない。

 そしてその計画は、今まさに実行されようとしている。


 俺の顔色が変わったのを見て取ったのだろう。澪はフッと鼻で笑った。


「どう? サービスにしては、上等だったでしょ? あんた、なかなか面白いね」


(そうだ。上等すぎる。)


 この情報だけで、俺の置かれている状況が、全く別の側面を見せ始めた。


 俺は無言で、澪を見つめた。

 脳が高速で回転する。

 目の前の澪がくれた情報──これらがどう繋がる?どう利用できる?

 澪は貴重な情報源だ。ここで繋ぎを断つわけにはいかない。


「……分かった。教えてくれてありがとう」


 感謝の言葉は、本心だ。

 例えどんな理由であれ、澪は俺に、今の俺に必要な情報を提供してくれた。


 澪は俺の様子をじっと見ていたが、何も言わなかった。

 ただ、少しだけ、警戒の色を緩めたように見えた。


「貸してもらったスマホ、返すよ」


 ポケットから、澪に借りたプリペイド式のスマホを取り出す。

 澪は素っ気なく手を出し、スマホを受け取る。

 そのまま鞄に仕舞い込もうとした。


「ちょっと待って」


 俺はそれを制した。


「連絡先、交換してもらえないかな」


 澪の動きが止まった。怪訝な顔で、俺を見る。


「はぁ? 何言ってんの? あんた、スマホ持ってないでしょ」


「さっき手に入れたんだ」


 そう言って、俺は母親から渡されたばかりのスマートフォンを取り出した。


「これ、僕のだ」


 澪は、そのスマホを見て、さらに眉をひそめた。疑いの目が強くなる。


「何よ、それ。どこで手に入れたのよ。まさか、盗んできたんじゃないでしょうね?」


 澪の目が、探るような視線が、俺に突き刺さる。


「盗んでない。お母さんにもらったんだ」


 澪の目が、一瞬だけ俺の顔で止まった。


「もらった? お母さんに? そんな怪しいスマホ、アタシがいじったスマホよりよっぽど怪しいんだけど」


 露骨に嫌な顔をする。警戒心MAXといった表情だ。

 当然の反応だろう。


「詳しいことは今は言えない」


 そう答えると、澪はさらに嫌そうな顔をした。


「はぁ? 情報屋に『言えない』とか、ナメてんの?」


 口調が荒くなる。これは、本当に嫌がっているときの澪だ。

 だが、ここで引くわけにはいかない。

 澪の情報網は、今の俺にとって喉から手が出るほど欲しいものだ。


「僕は伊集院家と繋がりがあって色々お世話になっているんだよね。何か澪さんに得になる情報があれば教えるよ」


 俺は言葉を選びながら、澪の目を見る。

 澪の表情が、一瞬だけ、ほんのわずかに変わった。

 疑念の奥に、好奇心の光が宿る。


「へぇおもしろいじゃない」


 食いついてきた。勝負できる。


「だから、連絡先を交換してよ」


 澪は黙って、俺の顔を見ていた。品定めをするような、鋭い視線。天秤にかけているのだろう。

 リスクと、得られるかもしれない「面白いこと」を。


 しばらくの沈黙が、廃駅の静寂に溶けていく。風が、ホームの草を揺らした。


 やがて澪は、フッと小さく息を吐いた。


「……分かったわよ。今回だけだからね」


 そう言って、しぶしぶといった様子で、持っていたスマホを取り出した。

 渋々、だが確かに、交換するつもりだ。興味が、警戒心を上回った瞬間だ。


 俺は小さく笑った。


「次、会えるのを楽しみにしてるね、情報屋の澪さん」


 新しいスマホを手に、澪と連絡先を交換する。

 画面に表示される「天馬澪」の文字。これで、強力なパイプラインを確保できた。


 夕暮れはさらに色を濃くし、廃駅のホームは一層暗さを増していた。


「じゃあね。くれぐれも、変なことに巻き込まれないようにね、あんた」


 澪はそう言って、俺に背を向け、歩き出した。制服姿の後ろ姿が、闇の中に溶けていく。


「澪さんもね!」


 小さく応え、俺もまた、廃駅を後にした。

 手にしたスマホが、ずしりと重かった。伊集院家、そして天馬澪。

 二つの強力な繋がりを手に入れた。


 まだ問題が2つある。

 一つ目は伊集院家に関しては信用がまだできない。

 そして2つ目は俺の家族に関する問題……。

 この二つをクリアして、クジョウに近づく。

 まずは身の安全の確保のため、家族の問題を解決する必要がある。

 

 そのためにも相手の計画を入手して、それを止める。

 言葉では簡単だが、足をつかめるのかもまだ分からない。

 

 俺は小学生にして、命を駆け引きをしないといけないことに苦笑いをしていた。

_____________________________


お読みいただきありがとうございます。

更新は出来るだけ毎日1話1000文字~3000文字で更新していきます。

ブックマークをしてお待ちいただけますと幸いです。


もし面白いと思いましたら、リアクションや、評価やレビューをしていただけると泣いて踊って大声で喜びます。


モチベーションがあがるので、是非よろしくお願いいたします。

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