表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死刑囚だった俺が小学生に転生!? 裏切られて死んだけど、ここからは俺のターン。裏切り者は詰みです。  作者:
1章 序章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/74

17話 明日への考察

 血の匂いが染み付いたアスファルトを背に、俺は足を踏み出す。

 帰路につきながら、戦闘の余韻に浸っていた。


 身体の節々が痛み、衣服にはうっすらと汚れと血のにおいが染みついている。

 そんな状態で、家の玄関を開けた瞬間だった。


「アキラぁっ……!」


 母親が飛び出してきた。

 目には涙をため、声を震わせながら俺に抱きつく。


「どこに行ってたの? こんなに汚れて……怪我してるじゃない! 大丈夫? 痛い? 寒くない? お腹すいてない? すぐ何か作るから!」


 怒涛のように言葉を浴びせながら、俺の服の汚れを手で払い、顔を覗き込み、身体を抱きしめ直す。

 その手は優しいけれど、異様に力強かった。


「アキラは……アキラは、絶対に私が守るからね……」


 耳元でささやかれた声には、妙な熱がこもっていた。


「転んだだけだって」


 俺は辟易しながら答えるが、母親は首を横に振る。

 信じたくない、けど信じたい──そんな子供を見るような、痛々しい微笑みを浮かべながら。


 家の中には、やたらと温められた空気が漂っていた。

 甘ったるくて、息苦しいほどに。


「……すぐお風呂入って。消毒もちゃんとするから」


 過保護……。異常な愛情。

 始めに感じていた違和感が形を見せはじめていた。


 俺はため息をつきながら、脱衣所で服を脱ぎ、浴室に入る。

 シャワーの音とともに、少しずつ体にまとわりついた汚れと血の匂いが洗い流されていく。


 湯気が立ちこめる中、ふと気配を感じた。


「アキラ、ちゃんと洗えてる? 手伝おうか?」


 脱衣所の扉の向こうから、母親の声。

 そのままドアノブがガチャリと回りかけた。


「いいから!」


 即座に声を張り上げて静止する。

 ドアノブの動きは止まったが、向こう側で立ち尽くしている気配がしばらく続いた。


 湯気の中、冷たい汗が背中をつたった。


 湯から上がり、タオルで体を拭きながら、俺は小さくため息をついた。

 このままじゃ、こっちまで変になりそうだ。


 バスタオルを巻いたまま脱衣所の扉を開けると、母親がほとんど飛びかかるようにして近寄ってきた。


「ほら、見て。どこもケガしてないから」


 俺は腕を広げ、少しわざとらしく体を回してみせる。

 母親は真剣な顔で俺を上から下まで確認し、しばらく無言で見つめたあと、ふっと肩から力を抜いた。


「……そっか。よかった。ほんと、よかった」


 その声は、さっきまでの異様な熱が嘘みたいに、普通だった。

 心底ほっとした、そんな母親の顔だった。


 まるで何事もなかったかのように、あっさりと笑う。

 拍子抜けするくらい、自然な母親の顔。


「ご飯できてるから。先に着替えちゃいなさい」


 俺は一瞬、戸惑ったが、無言でうなずき、急いで自室へ戻った。


 着替えを済ませリビングに向かうと、テーブルには湯気の立つカレーライスが置かれていた。

 母親はエプロン姿で、テレビのリモコンをぽちぽちいじりながら、気楽そうに笑っている。


「カレー、好きでしょう? いっぱい食べなさい」


 俺は無言でスプーンを取った。

 普通に見える、その姿。


 口に運んだカレーの味は、やけに遠く感じた。


 食器を片付けようとしたとき、体中の節々にじわりと痛みが走った。

 無理やり平然を装いながら部屋に戻った俺は、ベッドに体を沈め、今日の一連の出来事──そして澪のことについて、改めて考えることにした。


 まず、今日の襲撃について。

 あれは、ほぼ間違いなく伊集院家への刺客だろう。

 俺自身に恨みを持つ理由なんて、今の世界にはない。

 ──つまり、伊集院家と繋がっていると気付かれたことが原因だ。


 それにしても、今日は動きすぎた。

 相手の正体もはっきりしないまま、無謀に飛び込んだのは反省すべきだ。

 伊集院家の背景と、敵の正体──どちらも、もっと慎重に情報を集めていく必要がある。


 澪を使う。

 ──あいつなら、うまく立ち回れる。


 鮫島については、当面問題ないだろう。

 小学生に負けたなんて知られたら、あいつの面目は丸潰れだ。

 プライドに賭けても、俺のことは口にしないはずだ。


 そして、澪との接触だ。

 明日、学校が終わったら、いつもの場所へ向かう予定だ。


 問題は、どうやって澪を味方に引き込むか。

 選択肢は二つ。


 一つ目──転生について打ち明ける。

 信じてもらえれば最大限の協力が得られるが、リスクも大きい。

 万が一、信用されなかったら──致命的なミスになる。


 二つ目──転生前の情報を使う。

 こっちのほうが無難だ。

 澪が知らない情報を選んで小出しにすれば、興味を引くことはできる。

 信用を少しずつ積み上げるやり方だ。


 一旦は正体を隠しつつ進めて、どうしても詰まったら……そのときは覚悟を決める。


 ふう、と小さく息を吐いた。

 体の奥に残る鈍い痛みが、今日の無理を物語っている。


 ──これからも、同じようなことは確実に起きる。


 生き残るためにも、体を鍛えておく必要がある。

 必ず、だ。


 ベッドの上で天井を見つめながら、俺は静かに覚悟を固めた。

_____________________________


お読みいただきありがとうございます。

更新は出来るだけ毎日1話1000文字~3000文字で更新していきます。

ブックマークをしてお待ちいただけますと幸いです。


もし面白いと思いましたら、リアクションや、評価やレビューをしていただけると泣いて踊って大声で喜びます。


モチベーションがあがるので、是非よろしくお願いいたします。

_____________________________

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ