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第6話 朝が来たりてクズは目覚め無い

 早朝。ニワトリ的な鳴き声が聞こえる中、俺は日差しの眩しさに目を覚ました。

 異世界二日目の朝か。うん、実に清々しい。

 ンッンー、歌でも歌いたい気分だし、九秒くらいなら時を止められそうだ。

 世は正に、大冒険時代!


 さてと。


 窓に近寄りカーテンをフルクローズし、真っ暗になった室内で再びベッドにもぐりこむ。


 まだ午前中じゃねえか。もうちょい寝かせろ。






 どんどんどんっ!!


「いい加減起きてー! もうお昼なんだけどぉー!?」


 るっせぇなあ。いま何時……って、時計なんてもんがある訳ないか。

 まぁよく眠れたし、そろそろ起きても良いかもしれん。腹も減ったしな。


「……つーかいまの声、クリムか?」


 あの赤髪元気っ子、なんで俺の部屋知ってるんだ?


「クリム、ご主人様はまだ眠っているのかもしれません。昨晩はお客様が来ていたみたいですし」

「え、そうなの?」

「わざわざ借り直した隣室で壁に耳を付けて聞いていたので間違いないです」


 おまわりさーん! リーン(こいつ)でーす!

 やべぇよあいつ! なんであんなのが野放しになってんだ!?


 ストーキングもやばいが、ナチュラルに俺をご主人様呼びしてんのが怖い。

 お前の特殊性癖に俺を巻き込むな。金取るぞ。

 まぁ、金さえ払ってくれるんなら少しくらい付き合ってやらんでもないが。


「でもそろそろ行かないと他の人にモンスター狩られちゃうよっ!」

「では乗り込みましょう。寝起きの気だるげで不機嫌そうなイケメンに罵られたい訳でもないですが、この際ご主人様の服が少しくらいはだけていても合法ですよねハァハァ――」

「おはよう良い朝だな性職者と元気っ子!」


 身の危険を感じたので慌ててドアを開けると、放送コードに引っ掛かりそうな顔のリーンと、それにドン引きしているクリムの姿があった。

 うーん。こいつ、黙って大人しくしてれば美少女なのになあ。

 あとクリムさん、一応仲間なんだからその目付きはやめてやれ。気持ちは分かるが。


「朝からそのご尊顔を見れただけで私はもうはぁぁぁぁ♡」

「朝っぱらから飛ばしてんなお前……さておき、おはようクリム。何か用か?」

「あ、えっと、おはようっ! クエスト日和だよっ!」

「あぁ、そうだったな……仕方ない、行くかぁ」


 まったく気は乗らないが仕方ない。今後の生活がかかってるんだし、ちったぁ真面目にやるか。

 それにいざとなったらリーンを囮にして逃げればいいだけだしな!

 何にせよ、先に飯は食っておきたいが。


「クリム、もう飯は食ったか?」

「朝ごはんはしっかり食べたよっ! そろそろお昼時だけどねっ!」

「そうかそうか」


 うん、朝飯を食べてるのは偉いな。しっかり食って大きく育て。


「ハァハァ……こ、これが噂に聞く放置プレイ……わ、悪くないです……!」

「おい変態。飯食いに行くぞ。勘定は任せた」

「はうぅん♡ 存在無視からのこの仕打ちっ♡ い、いくら私でも少しくらい悲しかったり――」

「行くぞ下僕。ご主人様に着いて来い」

「はぁい♡ すぐに参ります♡」


 なるほど。ちょっと扱い方が分かって来たかも知れん。

 俺もこいつも人としてどうなんだろうとか思うが……便利だし、いっか。

 深い事を気にしたら負けだよな、うん。


「さーて、昼間っから飲むただ酒は美味いだろうなあ」

「こんな時間から飲むのっ!? クエスト前だよっ!?」

「大丈夫だ、問題ない」


 何せ、酔ってようがシラフだろうが、俺が使えないことに変わりは無いからな。

 ふははは! 伊達にパチカスクズニートなんて呼ばれてないぜ!


 あ、なんだろう、心が痛いや。


「本当に大丈夫かなぁこの人……」


 クリムがすっごく残念そうにこっちを見て来るが……いや、リーンを見てるのか?

 まぁどちらでも良い。俺の実力はすぐに分かるだろうしな。


 クエスト終わったらこの町からは逃げた方が良いかも知れんなあ。借金も踏み倒さなきゃだし。

 その前にリーンから金目のものだけもらっとくか。


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