7、あれ?まだだったの?
「ロザンナ!何故馬に乗ってるんだ!そんな…危ないでしょう」
父ラッセルが馬に乗るロザンナを見て青ざめながら諭していたがロザンナは平然としていた。
「あらお父様?こんなところまでどうなさったの?ふふっ、この子はメイと言ってとても賢い子だから危なくないのよ」
「でも高いでしょ?今度は落ちてまた記憶がなくなったら…」
「まぁ、その時はその時でしょ?それで何かご用ですか?」
「アマンド殿が来ている」
それまで穏やかだった表情は一変して険しいものへと変わっていた。
「嫌です!却下します。その名を聞くだけで体が拒絶反応を起こして吐き気が止まらなくなるから会いたくありません!」
「そんなことを言わずに早く支度をしなさい!」
「絶対に嫌です!もう白紙でいいじゃないですか!そんなに私を会わせたいなら此方にも考えがあります!」
「な、何をするつもり?」
記憶を失った今のロザンナなら何でも出来そうな気がしたラッセルは嫌な予感がした。
「私はこのまま出て行きます!」
「当面の事はどうするの?宿とか大変だからね?」
「まぁ何とかなると思いますよ?今の私なら問題ない筈!やってやりますわ!」
確かに記憶を失ってからのロザンナは活発で何でも興味を持ってやりたいことをしていたので家出の話をしても本気でやりそうで説得力がありラッセルは青ざめた。
「本当に出来そうだからやめて!」
「では私は少し出掛けますので…」
ロザンナはメイに乗ったまま邸を出た。
着いた先は森の中にある泉のそばだった。
「ねぇ、このままでいいの?」
ロザンナが適当な木に凭れてのんびりするとメイは心配そうに尋ねた。
「大丈夫よ。だって私はあの人が大嫌いだもの。無理して体調崩すよりはいいわ」
「まぁ貴女らしいと言えば…らしいのかしらね?」
「そうよ!私は自分らしく生きるの!過去の私は今を生きる私の記憶しか無いからあまりよくわからないけど…多分だけど自分の事を抑えていたと思うのよねぇ…だから今は心も体もとても軽くて…やっぱり自分に正直でいられる方がいいのよ」
その表情はとてもキラキラしていたのでメイもそれ以上は言わなかった。
暫くの間はメイとのんびりと会話を楽しみ邸に戻った。
「何処に行っていたんだ!心配したじゃないか!」
(あ、まだいたのね…)
適当に時間を潰したのに邸に戻ると目にも入れたくない程に大嫌いなアマンドがまだいてロザンナは条件反射で鳥肌が立っていた。
「あら、ごきげんよう。記憶がなくても大嫌いな婚約者様。貴方を見るだけでとても殴りたくなります。それくらい大嫌いです!
私からの話しは終わりましたのでお引き取り頂いて二度と来ないでくださいね?私は貴方にこれ以上は声を掛けられたくありません」
「…」
彼は何故か泣きそうな顔をしていたので腹立たしくなった彼女は続ける事にした。
「そんな顔で周りに同情を買おうだなんて…男としてどうなの?過去の記憶は全くないけど何故か貴方だけは無条件で大嫌いなのよ。
記憶が戻る前に一体何をしたのかしら?こんなに体が拒絶するのに一緒にいる必要あると思います?私には無理よ!」
腕を擦りながら話すと彼も少しずつ腹立たしそうな表情になっていた。
「君は記憶が無いからそう言えるんだ。私との事は思い出せばわかる話だけど今は白紙にすると後悔するからね!」
「どうぞ?私は後悔しませんわよ」
「わかった、そこまで言い切るなら望み通り白紙にしてやる!」
「有り難うございます。では二度と話し掛けないでくださいね」
「私も君とはもう話したくもない!こんなに嫌な奴なら私も縁が切れて良かったよ!」
売り言葉に買い言葉のような捨て台詞を吐き捨てられたロザンナだったが彼女の心に全く響かない彼の言葉は負け犬の遠吠えくらいにしか聞こえてなかった。
そして部屋に戻るとやっと白紙に戻せた事に喜んでいた。
アマンド:本当に後悔するからね!
ロザンナ:既に婚約したことが後悔ですよ?体が拒絶反応を起こすって余程の事では?
アマンド:……。
ラッセル:確かにそうだけど…
ロザンナ:お父様?何故そんなに煮えきらないんですか?
ラッセル:それは…
メイ:ロザンナ、それは今はやめましょうね?
ロザンナ:メイがそう言うなら…
メイ:それより、またどこかに行きましょう?
ロザンナ:そうね!遠乗りは楽しいものね!やはりメイは素晴らしいわ!
ここまで読んで下さった皆様、有り難うございました。




