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ごはんを求めて








国王様が盛大な溜息を送りつけてきやがったまさにその瞬間。

はかったようなタイミングでドアをノックする音が聞こえてきた。






「陛下、ご夕食のお時間です」






柔らかな女の人の声に、私は飛び上がらんばかりの嬉しさを感じた。

だって、ご夕食ってごはんのことですよね!?

なんてジャストタイミングッ!!

ちょっとでいいから私にも分けてほしいであります!






「…わかった。今行く」






何だかちょっとお疲れ気味の声ですな。

やっぱり国王ってやつは大変な仕事なんだろうか。

若いうちからそんなんじゃあ、この先やっていけないぞ!






「では、失礼いたします」






その声の後に、微かな足音が続く。

どうやら女の人は立ち去ったようだ。






「あのっ!私もついて行っていいですか?」






タイミング良く訪れたごはんのチャンス。

この世界の食べ物がどんなだか分からないから多少の不安はあるけれど…ひとつくらいは食べれそうなものがあるだろう。

だからこのチャンス、絶対に逃してなどやるものか…!

私のお腹はもはや限界なのだ。

このままじゃあ、お腹と背中がくっついちゃうぞ。






「…どうせダメだと言ってもついてくるんだろう、その顔は」






おほっ!

まだ出会って間もないというのによくわかりましたねー国王様!

私、食べ物関係については類い稀なる執着心をもっておりますの。

例え此処で両手両足を縛られ猿轡を噛まされても、私は執念と言う名のパワーを原動力に必ずやごはんのもとへと辿り着いてみせましょう!






「ついて来い」






優雅にベッドから降り立つと、国王様はスタスタとさっきノックされたドアへと歩いて行き、その向こうへと姿を消した。

出遅れた私は慌てて追いかけたのだけど、なかなか国王様に追いつけない。

何故なら足のコンパスが違いすぎるのだ。

国王様はどう見ても180越えしてんだろってくらい長身なのに、私はジャスト150の低身長。

どこぞのモデルのようにスラリと伸びた国王様の足と、私の平均以下の足の長さじゃどう考えたって歩幅が合うわけがない。

加えて国王様はかなりの早歩きタイプらしい。

……あの男、人に合わせるとかしないわけ?






「ちょっ、ちょっと待って下さいよ―――」






国王様を呼ぼうとして、ふと考える。

そう言えば、私は国王様のことを何て呼んだらいいんだろうか。

『国王様』っていうのは役職のようなものだし、それで呼ぶのは何か変だよね?

じゃあ、さっきの女の人みたいに『陛下』って呼んだらいいのかな?

それとも名前に『様』を付けて呼ぶべき…?

あー、どっちだろう!

てか、国王様の名前ってなんだったっけ?

長ったらしくて全部は思い出せそうにないんだけど、最初のほうは思い出せそうな気がする。

頑張れ私!

なけなしの記憶力を呼び覚ますんだ!!

うーんと、確か……れ、れ、れ、れ――――






「レイシスっ!!!」」






そうそう!

そんな名前だったはずっ!

あー、思い出せてスッキリしたーッ!

グッジョブ、私の記憶力☆






「国王を呼び捨てにするとはいい度胸だな」


「ギャッ!!」






い、いつの間に目の前に立ちやがったんだこの男は!!

さっきまであんなに離れてたのにっ!

びっくりしすぎて乙女にあるまじき叫び声を上げちゃったじゃないのっ!






「びびびびっくりさせないでくださいよっ!」


「名前を呼ばれたからわざわざ来てやったのに何だその言い草は?」


「もっと気配を発しながら近づいてきて下さいっ!」


「お前が鈍いだけだ。まったく、歩くのも遅いし人の気配にも気がつかないし…お前は見かけどおりのまぬけだな」






うっはー!

ムカツクっ!!

見かけどおりってどういう意味だ、このヤローっ!!

こんな奴を『陛下』だとか名前に『様』を付けて呼ぼうとしていた私が間違ってた。

これからは『レイシス』って呼び捨てにしてやるわ、バーカッ!!

ついでに今までの微妙な敬語もなくしてやるわ、アホッ!!





「…お前、今絶対心の中で我を侮辱しただろう?ん?」


「にゅっ!?いひゃいっ!ひゃにゃひぇーッ!!」






乙女のほっぺたを鷲掴みにするとは何事ですか!?

くそう、無駄に力の強いでかい手しやがって!

外そうにも外れないじゃないかっ!






「くくっ…お前、相当面白い顔してるぞ」


「うにゅひゃいッ!!ひゃにゃひぇーッ!!」






も、揉むなんて卑怯だぞっ!!

いたいけな乙女のほっぺたを弄びおってクソヤローめッ!

この屈辱、忘れはせぬぞ…!






「何だその目は?まったく、礼儀を知らぬ小娘だ。我は国王だぞ?」


「ひぃふゅひゃっふぇひゅんひゃひょーッ!!」


「何言ってるのかサッパリ分からん。残念だったな小娘」


「ひゃんひゃひゃひょひょひぇひょひゃにょひぇひゃひぃひぃんひょにょッ!」


「あー煩い。少し黙れ、小娘。お前とこんなことしているほど我は暇ではないのだ。さっさと行くぞ」


「にょッ!?」






視界が急に高くなったと思ったら、私はクソヤロー・レイシスの肩に担ぎあげられていた。

これはあれですね。

所謂『俵担ぎ』というものですね。

てか普通さ、女の子を運ぶ時って『お姫様だっこ』なんじゃないの?






「ちょっとあんたっ!運ぶならもっと丁寧に運びなさいよっ!!」


「…呼び捨ての次は命令口調か。本当に礼儀知らずな小娘だ」


「礼儀を知らないのはあんたの方でしょうがッ!!女の子をこんな扱いしていいと思ってんの!?」


「そもそも王である我がどこぞの馬の骨とも知らぬお前を運んでやっているのだぞ?感謝したらどうだ」


「私が運んでなんてお願いしたわけじゃないし」


「なら思いっきり投げ飛ばしてやろうか?」


「…」






ああ、神様。

どうせトリップするなら、もっと優しい王様のところにしてほしかったです。





















レイシスにほっぺたを鷲掴みにされた時の花梨の言葉↓


「なっ!?痛いっ!離せぇーッ!!」

「煩いッ!!離せぇーッ!!」

「知るかってんのよーッ!!」

「あんたがこの手を離せばいいんでしょッ!!」

「なッ!?」



上から順番にこんな感じになっております。

どうでもいいかと思ったんですけど、一応補足として。








遅ればせながら読んでくださっている方々、またお気に入り登録してくださっている方々、本当にありがとうございます。

よかったら感想・評価などもよろしくお願いします。









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