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AM9:02  作者: etc
2/6

coffee

チャイムの鳴る音。

少年は、はっと気がつく。

何処かの店の中らしい。天井にはプロペラが回っており、店内にはジャズが鳴り響いていた。多分、知らない人の歌だと思いながら上半身を起こした。目の前の机にはコーヒーが置かれていた。何がなんだか分からないまま、目の前のコーヒーに手を伸ばした。ちょうどいい温度で、香りもよくかったが、無糖ブラックの苦さに顔が歪んだ。

「ちょっと君には早かったかな?」カウンターから、中年男の低い声が飛んできた。

「あと、5年ぐらいしたら飲めそうですね。」


それから沈黙が続き、コーヒーを飲み終えたあと恐る恐る口を開いた。

「あのー。此処何処ですか?記憶が無いんですが…」

中年男は微笑みながら少年を見ながら話した。

「聿河高校の近くの喫茶店だよ。君、聿河高校の生徒だよね?なら知ってると思うんだけど。」

「はい知っています。毎朝通りますし。」このとき、頭の中で朝の事故の記憶が蘇ってきた。

「あれ?俺、トラックに…」

「轢かれたよ。」マスターは少年が話し終える前に、答えた。

「そして死んだ。一回ね。」

唐突すぎて何を言っているのか、少年は理解できなかった。

「あーごめんごめん。ちょっといきなり過ぎたかな?」マスターは笑いながらテレビを付けた。


テレビには、少年がさっきまでいた川沿いの道が映っていた。トラックが見事に大破していた。目撃者の証言や事故の原因などリアルに報道されていた。


でも、俺は此処に居る。

不安そうな顔でマスターを見る。「あー言わなくても分かるよ。何で俺は此処に居る?でしょ?」

そういってマスターは、携帯電話を取り出し何やら読み始めた。

「2006年9月30日AM9:02 成宮 晴樹死亡。チケットを持っていたため、hellへは逝かずに裏切り者として再び存在する。」

「裏切り者?」

「うーん。まぁ簡単に言うと超能力者だね。普通は死んだら逝っちゃうでしょ?でも、逝かずに超能力を手にして此方でもう一回生きるってことかな。で、その存在条件はこの携帯電話に来るメールの依頼遂行しなければ即サヨナラ。今ので分かった?」マスターは例の携帯電話を机に出した。

「はい。」嘘だった。全く理解できなかった。

「だから君は今まで通り、晴樹として遅刻して、学校に通えばいい。違うのは超能力で依頼遂行しなければいけないだけ。質問は?」晴樹が飲み終えたコーヒーカップを片付けながら説明した。

「あのー。俺の超能力は?」

「まだ分からない。超能力は依頼中しか出ないからね。他には?」「ないです。」また嘘だった。


晴樹は横にあるかばんを手にしながら席を立った。

「ご馳走様でした。マスター。」マスターは机を拭いていた。

「困ったことがあったら、また来な。あ、」思い出したようにマスターが口にした。

「コーヒー代、350円。」


「いい商売してる。」

そう言ってドアに開けた。

鈴の音がうるさいぐらい鳴った。

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