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愛という名の死因  作者: 鈴川掌
愛と言う名の死因
12/14

最終話 貴方の幸せと未来の為に

ついに終わらせましたー!!!!!単話平均25000字というなろうでやるには得策じゃない投稿方法で書いた本作ですが、予定を少しオーバーしてしまいましたが、約1ヶ月強でストーリーは占める事ができました。後はエピローグを残すだけです!

因みにエピローグは間の日記並に短くする予定ですのでご安心ください。

後は描写追加と、要らないと思った描写の削除そして現在144ページエピローグ後の予定146ページをその描写追加をしながら150ページに収める事ができれば本当に完結となります。


 目を覚ました時、最初に耳にした言葉は気を失った事から回復した事を祝う言葉なんてモノではなくたった一言、自分が一番聞きたくない言葉がキャプテンの口から告げられる。

「サチアが死んだ」ただその一言告げられ、ミライはキャプテンにただ一つだけお願いをする「レニには俺が伝えるから、それまで黙っていてほしい」ただそれだけ。

 そして今ミライはレニの前に居る、医者からは動くなと言われているが、けれどレニには隠しておけない、だってレニには知る権利があるからこそ話さなければならない。

「サチアが死んだ、それだけレニには伝えておく、これからは明智に付いていってくれ明智なら良くしてくれると思うから、それじゃあ…俺はやる事をあるから」

 レニが呆然としていた涙を流す訳でもなく、悲しい表情を見せる訳でもなく、ただ絶望といった表情をミライに見せる。手も動かせない、表情をピクリとも動かせない、多分マリーを失った時と同じ感情をレニは感じている、だから同じ苦しみを味わった明智に託した方がレニの為になると思う。

 重い体を引きずる様に歩く、右目も痛い、考えが上手く纏まらない。だけど明智に相談事がある、レニの事もそうだが、それ以上に今の自分にやれる事は一つだけだからと、エレベーターを待っているその時だった。思い切り頬に衝撃を受ける、受け身を取れる程万全な状態でもなかった、けれどその理由だけは聞きたかった。

「なんで怪我人なのに味方に殴られないと、いけない訳…、キャプテン?」

「お前がふざけた事を言っているからだよ、なんでレニちゃんにあんなことを言ったんだ!レニちゃんに今一番必要なのは、家族であるお前の言葉だろ!なんでそんなに冷たい態度を取る!お前にとってレニちゃんそんなモノなのかよ!」

「あぁサチアはレニを一番に思っていたけど、俺はサチアが家を空けるからレニの世話をしていただけ、そもそもレニを拾った時だって…」

 コツンと何かを落とす音がした方へと顔を向ける、そこにはゆらりとおぼつかない足取りで歩いていたレニが居た先ほどの絶望に塗れた表情ではなく、失望した表情でミライを見つめる、信じていたのにと言いたげだ。本当に信じてくれていたのだろう。

「嘘でしょ…お兄ちゃん、ねぇ嘘だと言ってよ!今までの優しさが嘘なんて…私…」

「あぁ、今までの優しさは嘘、第一俺はレニを拾う時に反対だってしたよ、だって俺に責任はとれないしね、俺を救ってくれたサチアへの恩返しそれだけだよ」

「なんで…そんな事を言うの…、だって…、だって…」動揺かレニは言葉を出すことができない、だからミライはレニを突き放す。「明智の世話になった方が良いって言っただろ?それに俺はサチアと違って人生相談の一つもしてない、そうだろレニ?」

 レニは涙を滲ませ、自身のスカートをぐっと握りしめる、こんな男を慕っていた自分への戒めか、それとも自らの怒りを憎しみに変えるのか、きっと後者だ、だからレニは言う。

「アンタなんてお兄ちゃんじゃない!とっとと死んじゃえばいいんだ!」

 レニはそう言い放ち駆け出した、それを追う様にキャプテンも後を追う。そしてミライに侮蔑するように、ただ一言ミライに言い放った。

「お前はそんな奴だと思っていなかったよ…本当に残念だ」

「俺はそういう奴だよ、勝手に俺を知った気になったキャプテンが悪いよ」

 既に到着していたエレベーターに乗り、明智に会いに行く、ちょっとした相談事と言うべきか、最後の手段を使う時が来ただけだ、サチアが死んだ今頼れるのは自分の身一つだけ、けれど明智に自分の身に何があったのか聞く必要性があった。何故目を抉られただけで済んでいるのか、どうやってサチアは死んだのか、それだけを聞きたかった。

 やたらVIp待遇の病室にミライは入室した、入って一番に抱いた感想は情報の山に埋もれる傷だらけの目の死んだ天才と言った所、いつもの変態女の面影はない、鬼気迫る勢いで何かをしている、愛した女が二人失った人間は今何を想って行動しているのだろう。

「来たよー、俺に何があったか教えてくれるんでしょ?明智?」

「あぁミライか生きていてよかったよ、早速で悪いがそこで上裸になって寝てくれるか?」

「別にいいけど…案外ケロっとしているんだな」

 無言で何かを準備している明智を傍目に、言われた通り服のボタンを外しベッドに横たわる、何を言う訳でもなく明智はミライの体に機械を張り付けていく、その無言の空間がどうしようなく居心地が悪くて、何より気持ち悪かった。だから明智にミライは聞く。

「サチアはどういう死に方をしたか、明智は知っている?知らなかったら別に答えなくてもいいんだけど、唯一の家族としては知りたいんだけど」

「あぁ、知っているよ、聞きたいかい?」なんで知っているの?とは聞く事は出来なかった。けれど明智は語り出す、自らの本音と建前を語りたくも無い、自らの醜さを語りだす。

「好奇心と言えばいいか、それともただの独占欲と言えばいいか、マリーを失ったからこそサチアには危険な事はして欲しくなかった、だから行く前にちょっとした細工をして、サチアの思考データを私はずっと観察していたんだ、なぁ?ミライ…君はサチアの能力のデメリットを知っていたのか?」

「知ってたよ、俺もサチアも互いに能力の行使にはデメリットがある事はすぐに気づいた、だから二人だけの秘密にしていたんだ、知ったらきっと皆止めるだろ?」

 だったら何故と言わんばかりに、明智は襟を掴んで顔を近づけた、今にも泣きそうなそんな表情でミライを見つめる。俺を責める訳でもない、ただ気づかなかった自分を恥じて。

「ミライは知っていたんだろ!ならサチアを守れただろ!なんで止めなかったんだ!」

「サチアと約束したから…、能力を使っても俺達は家族だって、だからどんなに自分が自分じゃなくなっても、絶対に………守るって」出したい言葉は出なかった。

「わかった…納得する。あの苦しみも全ては覚悟の上なんだな…過去改変のデメリットが使用者を一番苦しめるなんて言うのは、出来過ぎた話だな」

 本当に明智は知っているらしい、ブラフでも推理でもなく、本当に全てを見たのだろう。

「サチアが昔言ってたよ、本人の記憶を持った別人は誰なんだろうって、明智はどう思う?」

 サチア恐らく最初に過去改変を使った時に思ったであろう事、自分は誰なのだろうか?という疑問、確かに本人だった記憶はあるけれど、今ここに居る自分は記憶と全く違う人生を歩んだ自分という矛盾が常に自分の中にある。

「ミライはどう思うんだい?本人の記憶を持った別人は本人であるかどうか」

「俺はサチアにこう言ったよ、別人の記憶が入ってくる本人に聞かれてもわからないって」

「そうか…そこでも君達は真逆なんだな…」クスっと明智は笑う、けれどその笑顔も一瞬の物であった、そこからの明智はただ研究者としての顔となる、まるでこちらを実験動物にでも思っている様な、いつか施設で見たそんな表情だった。

「測定する前に、その資料を見てくれないか?テロのリーダーの資料だよ、君のすぐ隣の実験棟で実験されていたらしいから、面識があるんじゃないかと思ってね」

「実験棟が違ったら会う事は無いと思うんだけど……なんて読むのこれ?」

「モルモット73番だよ、君達は被検体という名前であったけど、お隣は人を人とも思っていなかったらしい」明智の語学力に感服し、ミライは資料を捲る。

 その資料には、写真が幾つも乗っていた恐らく同一人物だと思われる少女の写真、けれどそれら全てを同一人物と言える確固たる自信はミライには無かった、顔が写っていないというのもあるが、書いてある内容はわからないけれど、ページを捲るごとに最初の面影は無くなっていき、例えるならば継ぎはぎの様な異様さを放っていた。そして最後のページはある人間の手記だった『彼女は間違いなく人間だ、ツクロという一人の女の子だ』と。

「これは同一人物って事でいいんだよね?」ミライが明智に問う、明智はその通りと頷く。

「君達は特殊性という人知を超えるモノを付与しようとした、オカルト好きが生み出した奇跡の産物だ。けれど彼女は特異性というあり得るかも知れない進化の形を全身に埋め込まれた、これまた妄執の産物だよ。データが破損していて全部は読めなかったが、ある実験員が彼女をフランケンシュタインの怪物そのものと語っていた」

「フランケンシュタインはわからないけど、特異性を埋め込むってどうやって?」

 発現しても勝手に死ぬかもしれないモノを、埋め込むとは一体どういう事なのか、それがミライにはわからなかった。

「特異性が発現した者の皮膚、臓器或いは手足や指それを移植したそうだ、そうそれこそサチアが君の右目を治す為に自分の目を差し出した様に…ね」

「そんな事をして死なないの?」当たり前の疑問を明智に質問する、普通の人間でも移植には拒絶反応が伴う筈だ、ならば「それが彼女特異性、自身を完璧に調整できるという特異性によって彼女は生き残ったらしい、それこそミライ、君の目だって無意識下できっと未来を選択して拒絶反応が起きないようにしたんだろう、じゃなきゃ都合が良過ぎる」

 確かに偶然捨てられた日に出会って、運よく生き残って再会して、レニの為に施設に入って、これまた運よく実験の成功例になってしまった、そして第五課という友人も手に入れたこ本当に都合の良過ぎる話だ。というか彼女が移植によって特異性を獲得したという事は、もしや自分にも?と顎に手を当て考える。

「その様子だと漸く気づいたみたいだね、ミライの予想通り君はサチアの意志を受け継いでいるよ、その確認をする為に今日来てもらったという訳だ」

「あー、なるほどね、じゃあ帰る、いつ敵が来てもいいように寝る…てか体が重い…」

 病室に戻ろうとした時だった、明智がミライの体を後ろから抱いた、そういう行為はサチアやマリーにだけするものだと思っていたが、人肌を感じられれば誰でも良かったのかもしれない。けれどその考えはすぐに打ち消された、サチアが愛した人間がそんな人間な訳が無かった、明智は誰よりも、多分自分やレニよりもサチアとマリーを愛していたのだ。

「私に残されたのは、その目だけだ。今日だけでいいその目で私を見つめてくれ、頼む」

「わかった…それで明智が集中できるのなら…明智を見続けるよ」

 明智はミライを見つめている訳では無い、右目のサチアを見続けている、不覚にもサチアに嫉妬心が生まれた、ここまで想われるのは幸せな事だ、それが凄く羨ましい。

 一日二日が過ぎ、敵の動きを待つ、きっともう敵に残存勢力は残っていないのだろう、けれどそれはこちらも同じだ、戦うのは自分一人でいい。ツクロという人間と一対一で戦って勝利する、それだけでいいはずなのに、どうしてもこのツクロという少女の事が気になる、いや分からないというべきか、何故世界を敵に回したのかがわからない、けれど確かな事があるとするのならば、このツクロという少女と自分は一度会っている、あの施設を壊滅させたあの時あの日確かにツギハギだらけの少女と出会った。けれどあの少女はどちらかと言えばモルの様な雰囲気だったと思う、顔は全く違うが…けれど確かに似ていた。他人の空似とも思えない、念には念を入れておこう。キャプテンと明智にもお願いしておこう、もしモルなら最後に選ぶ場所はきっとあそこだとミライは確信した。

 1週間程が過ぎた時、敵は行動に出た。行動に出たという例えは間違っているかもしれない、自らの心臓を晒したという言葉が正しいのだろう。まさかツクロ本人が出るとは思わなかったが、彼女は叫ぶ己が同胞が受けた仕打ちを、この世界は間違っていると論説を、そして誰からも認めてもらう事の無く人権というモノが存在しない者達が居たという事を、それは散っていった同胞の死を嘆く慟哭にも聞こえたが、きっとそれが本音ではないのだろう、その映像からは何一つ嘘は言っていないのに、何一つ感情がこもっていないそうミライは感じる。そしてツクロは宣言する「私は待つ、私を殺せる者が現れるのを、倒せないのであれば、私が世界を壊す」ただ何もない巌流島の様な無人島であれば、核兵器の一つで終わったのかもしれない、けれど東京の都内に一角に焼け野原になっている元ゴミだめ、この時の為に焼け野原にしたのか、それともここに思い入れがあるのか。

 けれどこれで未来は確定した、早々にツクロという存在を消さなければ、アベンジャーズ、復讐者達と言う名に相応しく、復讐を謳う者達が現れるだろう。それは面倒くさいだからこそ手を打つならば今だ、幸い明智の秘密兵器も、キャプテンへのお願いもそして、過去改変と未来確定も上手く使い熟せている、ここまで予想通りという他ない。

 明日勝負仕掛ける、けれどその前にキャプテンにお願いする事があった。

「それで、僕に何の様だい?」キャプテンはあの日以来、仲は険悪だった。

「明日の事、多分俺が勝つことができるけど、もしもの事があったらレニの事は頼む、約束して貰える?欲しかったらお金もあげるけど」

「要らないし、約束もしない、お金に執着が無いのなら自分の手で直接レニちゃんに渡せ、そして最後に謝ってもう一度家族として暮らせ、それが僕の望みだ」

「酷だねぇー、キャプテンは…まぁわかった、レニに謝る事は約束してもいい、けど一緒に暮らすのは無理かなー」ミライはおちゃらけて答えて見せた。

「何故そうも彼女と暮らす事を拒む!家族だったんだろ?それを失う辛さを今以上に与えるのか!そんな無責任で彼女を育てたのか!答えろ!ミライ!」

 キャプテンの言っている事は、反論の余地も無い程に正論で、困った事に言い訳しようにもできない、ただくだらない意地なのかもしれない、けれど俺はサチアとの約束を優先する。あの日、施設から出られたその日にサチアと誓った事、自分達が人間じゃなくなったからこその、約束事を。サチアは約束を守った、だから俺もこの名前に誓って守り通す。

「そこまで単純な話でもないん、ゴメンネ。それと明日の後方支援頼んだよ、スーツはもう動かないだろうから…」

 ただそれだけ言い残しキャプテンの問にも答えず、皆が居た第五課の事務所で、キャプテンとの勉強、明智の暴走と静止、マリーとの雑談、そしてサチアとの喧嘩。楽しい思い出に包まれたこの場所で、ミライはその思い出たちと一夜を共にした。

 朝の陽ざしもビル群によって遮られている…朝の陽ざし等あの日以来見た事は無いが…ビル群の中では鳥の囀りさえ聞こえない、聞いた事さえないが…けれど慣れ親しんだ習慣がミライの体を起こす、緊張のきの字も無いのが癪だが、それでもこの大事な日に体調を崩すよりは幾分かはマシだった。

「さぁて行くかぁ、ツクロ。3年前に会っている事を今の今まで忘れていたとは言えないけど」ミライは明智に今会えるかどうかの確認のメッセージを送る。

 返信は了承、ならばいい返事が聞けそうだ、対人外決戦兵器の完成もキャプテンと合同で無理をしてもらった対ツクロ用の戦術の仕込みも何とか終わらせてくれた事を祈り、本社の一階へ降りる、いつもならばエレベーターを使うが今日ぐらいは階段で。

「やぁ、珍しいね、君が文明の利器に頼らないとは、明日は雨かな?」

「まぁ勝てるのなら雨でいいよ、それで準備は良さそう?流石に秘密兵器の一つでもないと俺は勝てないよ」ミライは本音を明智に語る、正直一度片目を抉られた相手に勝てるビジョンがいまいち見えないのも事実だからだ。

「まぁ君に話しても、1㎜たりとも理解できないだろうから、簡潔に二つだけ言っておくとするよ」そういい明智は一つの注射器を手渡した。

 少し注射器にしては、大きい気もするし、そもそも針の出し方も良くわからない、どうやって使えばいいのだろうか?一度自分に突き立てて見ようとした時、それは明智に止められた。

「それは君を普通の人間に戻す薬だ、肌に向って当てれば針が出る。今回のミライの役割は二つツクロを拘束するこれが重要だ、そして拘束したらそれを自分に打ちこちらに合図する、そうすれば作戦は終わりだよ」

 案外簡単な話だった、つまりはこれを打ったら特異性、特殊性が消え、そして残りは決戦兵器に任せればいいという事、なんだ随分簡単な事じゃないか。

「それとお望み通りキャップは、管制室に押し込めたけれど長引くようなら、スーツは直るから気を付けたまえよ」何から何までやってくれる、流石万能の天才変態女。

「ありがとう、今日まで3年間の非日常が終わると考えると、感慨深いモノがあるね…、俺が普通の人間に戻れば第五課も二人になるし、寂しい?」

 ミライの問に明智は鼻で笑う、そんな事がある訳ないだろうと言わんばかりに。

「寂しくなんてあるもんか、私が寂しがるのはサチアとマリーの事だけだ、精々普通になった自分を楽しめよ、ミライ」

 明智は笑い、楽しめと抜かす、人殺しを楽しむのは人としてどうかと思うが、しかしこの景色を見るのは今日で最後になるという事を、最後に楽しめという事だろう。

「それじゃあ明智、後は任せるよ…ぐっどらっくー、それとサチアからの忘れ物」

 ミライは手を振りながら、自身の端末を明智に投げる、サチアの残した遺書とでも受け取ってくれればいい、マリーからも貰ってサチアからも貰う贅沢な奴だ。そして明智は端末を受け取り、起動させた。苦笑いを浮かべながらもその文章を読む。

「全くこう言うのはすぐ渡してくれよ、まぁ君らしいと言えば君らしい、それじゃあねミライ、陰ながら武運を祈っているよ」振り返りこちらは見ずに手を振る姿に、ミライの右目の視界が揺らぐ、どういう訳か右目が乾燥しているのか少し涙が出たらしい。

「それじゃあ行こうか、サチア…これで全部を終わりだ」

 俺達の人生を賭けるに値する、たった一人残った同胞を救いに、その歩んできた道筋の終着点を、それを与える事ができるのは今この場にミライ一人だから。


 ゴミだめだった様相は跡形もなく、ただ広がる焦土にミライは辿り着く、何もないけれど、どこに何があったかは長らく住み着いていた経験でわかる。あそこが支部で、あそこが元施設、そこがレニと偶に遊んでいた場所で、あっちが自宅で、今この場所がサチアと自分の人生を決めた場所、今考えて見ればガバガバな理論で人生を決めたモノだと笑える。

 何一つ緊張感も無く、何一つの罪悪感も無く、狙撃銃を構えそこに居るであろう、ツクロに向ってミライは発砲した、この距離で外す訳など無く、ましてや躱す事だってできない、あの時と一緒サングラスをかけたOLに確定した未来と言う名の弾丸を当てた筈だ。

 けれどその弾丸は届く事はない、黒い砂の様な物がツクロの周りを漂う。それが何かはわからないがあの距離だったのなら、この粒子を視認できないのも無理はない。

「久しぶり生きていて嬉しいよ、モル…いや、ツクロと言った方がいいか?」

「どちらでも構いません、私は貴方達に尽くしたモルでもあり、世界を破滅に追い込もうとする大罪人ツクロでもあります、呼び名はミライさんにお任せします」

 いつもと変わらない瞳で、いつもと変わらない立ち居振る舞いで彼女はこちらの問に答えた、正直もう少し悪人らしい悪人であった方が楽だったと思うし、そもそもモルという少女が生きていてくれて嬉しいという、ハチャメチャな心境でミライは居た。けれど殺る事は、しっかり殺らないと手伝ってくれたキャプテン達に申し訳ない、だからミライは。

「そのまま死んでくれよ、モル!どうせそれが望みだろ?」ミライはもう一度発砲する。

「はい、けれどすぐに死んでは私の目的が果たせません」モルは身の丈程の岩で防御した。

 目的とは何だろうと、考えている内に簡単にミライの心臓は何処から出てきた骨によって貫かれる、モルは殺される気なのに、何故抵抗するのだろうと、考えている暇すら与えられない、だから過去を改変した。未来を確定した。自分にとって都合の良い世界に。

「この感覚が慣れない、サチアに聞いとくべきだったな」

「殺意は感じられますけど、ミライさんは何故怨念を抱いていないのですか?」

 ふと殺し合いの最中だというのに、モルが疑問を投げかける、何故怨念を感じる必要があるのだろうか?目を抉られたから?マリーを殺されたから?それともサチアが死んだから?確かにマリーの死は悲しい、悲しいけれどミライにはモル達の怒りも理解できる。世界を恨む、モル達を恨む、正直恨む程の愛国心も愛情も自分には無かった。ただ一つ。

「俺は誰も恨まないよ、ただ『レニが幸せに生きる事のできる世界を作りたい』俺の行動理念はそれだけだよ」サチア以外に話した事ない、言葉をモルに話す。

「そうですか、レニさんが羨ましいですね、少し妬いちゃいます!」

 幾つもの小さい銃弾の様な何かが襲いかかる、変えれるとはいえ痛いのは嫌だ、だから今が勝負時とミライは睨む、ただ一言「セット」そう呟く、見つめた先にはモルが居た。

「ファイア」その掛け声と共に、四方八方に仕掛けた固定式狙撃銃が音も無く襲いかかる。

 けれどまたもや弾丸は外れる、というよりは外した、成程そりゃここまで物事が上手く自らの思い通りに進む訳だとミライは思わず笑わずにはいられない、だって欲しかった同じ景色を見てくれる人と、ほぼ毎日挨拶していたとは、自分の目は節穴過ぎるらしい。

「モルも視えてるんだ」ミライの問にモルはただ一言「はい」それだけ答えた。

「ミライさんみたいに選択はできません、けれど貴方が確定した世界を私は視る事ができます、ミライさんに特化したテレパシーの様な物です」

 そんな満面の笑みで、アンチミライと宣言されてもどうにもならないのだが、さてどうしたモノかと、殺されながら、失敗しながら、過去を無かったことにして、成功を繰り返した今にミライは居る、持久力切れかそれとも明智に聞いたサチアもやった奥の手で、もう無かった事にする、それが出来てしまうのが嫌な所なのだが。モルという人間を殺す覚悟はある、けれどモルという人生を否定する覚悟は、ミライには無い。

「ポイント設定、射出。コール3秒後、8秒後再度射出、2分後完了」確定した未来を作らずに、ゼロ距離の戦闘に持ち込む、それ以外に勝ち筋は無い事をミライは悟る。

「どうですか、私を殺せそうですか?」モルの悪気無い問に「嫌味か?」とミライは返す。

「でも安心してください、ミライさんの勝利は揺るぎないそうでしょう?」

 確定した未来を作った訳ではない、けれど何故かモルに勝てるという不完全な自信がミライの中にはあった、それが時間切れなのか、それとも何か秘策を思いつくのかは、分からない。ただ決めるのならば今決める確定も改変も使わずに勝てる、様な気がした。

「ナイス、キャップ!計算は明智かもだけど…」ミライは飛ばしてもらった新たな狙撃銃を受け取り、発砲するその攻撃は先程までとは違いほぼ0距離の射撃であったからこそ、モルの変質させた硬い皮膚に擦り傷程度の傷を残し若干吹き飛ばす事に成功する。

「バケモノみたいな体ですけれど、痛いモノは痛いんですよ?」モルは文句を放つ。

「けれど死なないだろ?だからここまでするんだ……よっと」今度も同じ距離で放ちモルを吹き飛ばす、まるで戦車にハンドガンで応戦するような無謀な行為だ。

「セット……ファイア」もう一度オールレンジからの狙撃、今度は距離も時間もある、故にモルは自らの特異体質を使って簡単に対処できるだろう、けれどきっとそれで視界は…。

「獲った!」もう一丁の飛んできた狙撃銃を空中で掴み、モルに覆いかぶさるようにしながら弾丸を放つ、反撃が来る前に撃てる限りの弾を、地面に押し付けられたモルに対して発砲する。

 それでもモルを殺しきる事はできない、それは分かっていた、だからこそ今から行う機会を得る為だけにこの愚策を行動に移した、未来を視ずに自分の視力と聴力のみを信じ、体が付いてくる事だけを気にしながら戦った、だから体はもうボロボロだ。無茶な動きをし過ぎた。反省点が一つ出来た、次に活かすかは知らない。

「捕まえた、もう逃がさないよ、モル」ミライはモルに抱き着く。

「そうですね、私の負けです、これで私はお役御免、付き合って頂きありがとうございました」死を悟り、殺す人間に礼をする人間をミライは初めて見た。

「最後くらい、我儘言ってもいいよ、レニを避難させてくれた…お礼?」

「そうですね、最後に言いたい事を言ってもいいですか?」

 世界への恨み辛みだろうか?けれどモルという人間に嘘偽りは無かった、モルという経歴が嘘でもモルはツクロという人間に変わりない、だからきっと彼女が語るのは恨みでも、辛みでも無く。

「ミライさん貴方が好きです、助けていただいたあの日からずっと、ずっと、ずっと」

 ミライの口はポカンと開いた、何故ならばモルの、ツクロの行動理念がわかってしまったから、それがどれだけミライにとって幸せな事かをツクロは知らないかもしれない、だけどミライはその告白に答える。

「あぁ、俺もツクロを愛しているよ、………胸にあったモノの正体はこれだったのか……」

「嬉しい、嬉しいです、例え偽りでもその言葉は、私には遠い、遠いモノでしたから…」

「嘘じゃない、けれどこの時間だけは夢の時間だ、だから終わらせないと」

 ツクロの頭を抱き、ミライの胸に押し込める。夢は目が覚める直前に見ると聞いた事があるだからこそ、目を覚ましたらそこはもうこの世界ではないから、ツクロに言う。

「目を瞑って、幸せな夢を見て、目を覚ますんだ。今度は絶対もっと早く見つけるから…」

「わかりました、約束ですよ?見つけて、私を夜空の綺麗な場所に連れて行ってください」

「わかった、約束だ、いつかきっと連れて行く。だから少しの間、離れ離れになろう」

 ミライは自らの首に明智から貰った注射器を刺す、異物が入る感覚そして、持っていたモノを失う感覚、ちょっと気分は良くない。けれどこれで終わりだ、幸せな夢だった。


 幸せな夢は見た、だから過去を変えよう。


「ツクロ」名前を呼び、抱きしめていた彼女の体を離し、顔を上に向かせ、ミライは口づけをする、ミライという存在を生贄に贖罪とミライが持っている愛を込めて。

「!?」少しツクロの体が跳ね上がる、意表を突いたりとミライの頬が少し緩む。

 注射器をツクロの首に刺す、これでツクロは普通の女の子。アベンジャーズというテロ集団を率いた特異体質の持ち主はミライ、だって明智が渡した注射器を敵が持てる筈ないのだから。

 体が少し焼けるような気がした時、サチアとの会話を思い出す。あれは施設を出て名前を決めた日の記憶だ。

『私がサチア、貴方がミライ、そしてこの子は後で考えましょうか、どういい名前でしょ?』

『いきなりどうして名前なんて、いや今まで無いのが不思議ではあったけれど…』

『私達は自分を保てないかもしれない、けど自分のやるべき事を大切な家族の名前にすれば忘れない、私はこの子の未来の為に。方はこの子の幸せの為に。この子の為に私達は死ぬの、だって私達はこの子とは違う人じゃない化物なんだから、どう?いい案でしょ?』

『あーそれならきっと忘れない気がする、この子の為ならどんな事だって怖くないや…それならこの子の名前は………』

 あぁどうでもいい記憶が走馬灯になる、もう少しマシな記憶があっただろうに。けれど化物として死ねて、愛した人を救える、この未来ならレニを託せる…そう…思えた。


 *


 目を閉じると昨日の事のように思い出す、幼少期私は気づいたら施設と呼べる場所に居た、そこでは私達の体を使って色々な測定をする事が社会の為になるらしい。社会というモノが良くわからなかったが、上手くいけば褒められたので嬉しかった。

 けれど私という存在は無価値らしいという事を偶然聞いてしまった、曰く私は何をやっても平凡な記録しか残せず、幾らでも代替品を用意できるらしい。

 私はめげずに努力した、努力して、見返してやろうと必死になった、けれども結果は変わらず、私は平均値しか出す事のない、簡単に変わりを用意できる存在のままだった。

 そんな時、私に転機が訪れた。皆が失敗している検査を私だけが通過できた、嬉しかった。これで皆を見返せると思ったから、だけど振り返るとそこには殆ど人は残っていなかった、何故かはわからない、だけど大人以外で私の知っている見た目をした人は、ごく少数であった、けれど皆が居るように皆の声をした異形は話す、気味が悪くて吐きそうだ。

 ある時異形が一体消えて、その異形の面影を残した私の知っている人が居た。それはドンドン続いて、異形は数を減らして、普通の見た目だけの子供達だけが残る。

 私もその一人だった、突然眠くなり起きたら、異形一体が消えている、まるで二つが一つになった様に。そうして異形は消えていき、次は体の違和感を覚えた子供と、普通だった子供が連れていかれた、違和感を覚えた子は消えて、普通だった子が違和感を覚え帰ってきた。そうして私もまた寝かされる、けれど私は他の子供達とは違って違和感は無い。

 いつしか何故か私だけが優遇される様になった、私だけが健康だったから遊び場を独り占め出来ただけかもしれない、けど本が欲しいと言えば持ってきてくれたし、ぬいぐるみは要らないと言えば捨ててくれた、昔との扱いの差に私は満足だった。

 私の名前を教えてくれた人が居た、私の名前はツクロというらしい、ツクロ…ツクロ…私は気に入って、私はツクロだと大人に言い回った、次の日私に名前を教えてくれた人は姿を消した、良くわからないが転属になったらしい。

 ある人が私の事をこう評した「君は世界に一人だけの特別な人」と名前を教えてくれた人が居なくなって寂しかった私にとって、それは宝石にも等しい輝きの言葉だった。

 ある日こう思った、ここから出て本で見た「満天の星空が輝く夜空を見たい」と懇願した、それはダメだ棄却された、何故と言っても大人は誰も答えてくれない。

 いつも通りの検査の後、一緒に居た子供達がどうなっていたかを偶然知ってしまった、皆私の中にバラバラにして入っているらしい、悍ましくて死んでしまいたいと私は思った。

 見てない事にしていた鏡を見て、私は叫んだ、多くの大人が来て沢山の話をしていた、隣の部署ではもっと大変な目に遭っている子供もいると、自分達に言い聞かせるように。

 隣の施設で大きい実験が成功したと、大人達が焦っていた、もうどうでもいい、私は…。

 アラームが鳴り響く、施設が揺れる、このまま瓦礫の下敷きになって死にたい本気でそう思っても、大人が私の手を引っ張る、けれどいつの間にかその引っ張る力は弱くなり、私はただ茫然と前を見る、男の子が居た。私とは違う普通の見た目の男の子。

「君も何かされたの?」「大丈夫一緒にここから出よう」「君みたいな女の子もいるなんて」

男の子はそんな事を言っていた、だから私は怖かったけど男の子に問うた「私は怖くないの?」と、すると男の子はこう答える「怖くないよ、むしろ綺麗だ」そんなただ一言に私は救われた、男の子とは途中逸れてしまったけれど、私は決心する。

「私の人生は、彼の幸せと未来の為に人生を使ってやる!」月も見えない、夜空に向って私は叫んだ。

 男の子にもう一度会う為に、私は持てる全てを使った、バケモノの様な異形でも、彼は綺麗だと言ってくれたから、そして彼を見つけた、世界から隔離され、国から隔離され、この世には居ないモノだと扱われている彼を見つけた。

 私は許せなかった、彼をそんなぞんざいに扱う世界が許せなかった。

 だから私は決意した、この世全てを敵に回しても、彼と一緒に行きたかった星空を見られなくなっても、世界に彼という個人を認めさせると、私は決意した。


 眠りから目覚めるように、私は目を開けた。そこは一面の花畑と彼の服があった。

「どうだいキャップ!この瞬間緑化レーザーは半日で枯れるのが、改良予知ありだが…」

「はいはい、それよりもやる事があるんだろう?そもそも僕は君の輸送機では無いよ…」

 聞き馴染のある声が聞こえた。

「君がツクロ君だね…迎えに来た。それにしてもモルモットだからモルとは安直すぎないかい?」探偵の様な服装をした女性が私に声をかける。

「嘘つき……嘘つき……嘘つき……嘘つき!私を探しに来てくれるって…、言ったのに!」

 私はただ涙を流す事しかできない、私が死んで貴方が英雄になる道筋だったのに…。

「ミライとサチアは人生を差し出して、レニちゃんを救った、アイツらなりの君への復讐じゃないかな?自分達の変わりに普通になった君がレニちゃんを育てろって」

 マシンスーツの男に言われて、私は更に涙を流す、きっとこれが私への罰だと知った。


ここまで読んで頂きありがとうございました!!!!

もう少しだけ続きます、少々お待ちくださいませ。

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