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遠い日の記憶と夢の始まり
街が寝静まる午後9時過ぎ、街の外れの丘の上にある小さな公園のベンチに座りながら僕らは、煌めく星々の中で微笑むように輝く三日月を眺めていた。この公園も隣に座っている彼女もどこか懐かしい、が思い出せない。だけど、その景色はこの上なく綺麗で、僕らを包み込むように空いっぱいに広がっていた。
「見て!月が笑っている口みたい。」
隣に座っている彼女が僕に言う。
「そうだね、空が笑ってる……」
思わず返す僕。静かな公園のベンチの上でゆったりと流れる時間を過ごしていた。この時間がずっとずっと続いたらいいと思った。
―――ピピピピ、ピピピピ、ピピピピ……
アラームの音で目を覚ます。体を起こして眠い目を擦りながら洗面所へ。顔を洗って歯を磨いて、部屋に戻ったら着慣れない制服に袖を通す。いよいよ今日から高校生活の始まりだ。