表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/58

第五十三話 闇

■アンドレ視点■


「ククッ……クククッ……」


 悪夢のような日から数日後。漆黒が部屋の中を支配する中、オレ様は一人でベッドの上で膝を抱えていた。


 はっ……笑いたくもなるぜ。この選ばれし天才のオレ様が、あんな雑魚共に敗北して醜態を晒し、父上にも勘当されるだなんて……あと数日もしたら、オレ様は城から追い出される。もう……オレ様の人生終わりじゃねえか!


 畜生! オレ様は何も悪くない! オレ様は何をしても許されるんだ! なのに……どうしてこのような結果に……!!


「あいつが……ココが裏切らなければ、数の差で優位に立たれる事は無かった! あいつのせいだ! 主に噛みつく汚い犬め……」


 いや、それだけじゃない。オレ様に恥をかかせたのは、ベルモンド兄弟が原因でもある。奴らはずっとこのオレ様に反抗的な態度を取っていた。


 あんな底辺領地など、オレ様が一つ命令を出せば破壊できるというのに、もうオレ様にはそんな権限は無い。さっさと滅ぼしておけばよかったと、少し後悔している。


「……そもそもあのクソ女が、オレ様の許可もなく幸せになってるのが元凶じゃねえか……!」


 あいつは所詮、ただのスラム出身のゴミだ。たまたま回復魔法に目覚め、利用しやすそうだったから利用した程度の人間だ。あいつを騙す為とはいえ、婚約したのを思い出すと、虫唾が走る。


 そんなゴミに、オレ様の輝かしい人生は狂わされたんだ。絶対に許せねえ……!


「そうか……簡単な話じゃねえか。オレ様が奴らに復讐をすればいいじゃねえか」


 わかってしまえば簡単な事だ。あいつらが悪いんだから、悪い奴らに復讐して、オレ様と同じ苦しみを味わう義務がある。


 前回は少々遊びすぎて不覚を取ったのは事実だから、最初から殺すつもりでいけば、後れを取る事は無い。何故なら、オレ様は王族で歴代最高の天才だからな。


「クククッ……そうと決まれば早い。これから生き地獄に連れていかれるオレ様よりも先に、奴らを地獄に連れていってやる……」


 オレ様は部屋の中に置いてある愛用の剣を持って、部屋から出る。すると、部屋の前で警備をしている雑魚兵士に呼び止められた。


「アンドレ王子様、お部屋からはお出にならないように」

「あぁ?」

「国王陛下のご命令ですので」

「邪魔すんなゴミが」

「……なっ……がはっ……」


 手に持っていた剣を躊躇なく振ると、目の前のゴミはうめき声をあげながら倒れた。


 この選ばれし天才の邪魔をするからこうなるんだよ馬鹿が。さて、このままベルモンド家の屋敷に向かうか。もちろん、邪魔する奴は全員地獄行きだけどなぁ!!


「ククッ……ギャハハハハハ!!」



 ****



 ジーク様と結ばれた日から数日が経った夜。私は自室のバルコニーで星を眺めながら、ゆったりとした穏やかで幸せな時間を過ごしていました。


 これまでベルモンド家で過ごした日々も幸せでしたが、今が一番幸せな気がします。きっと好きな人と結ばれた事が要因でしょう。


 でも、一つだけ悲しい事もあります。それは、明日にはココ様とそのご家族が家に帰ってしまうんです。


 だから、最後の夜もココ様と一緒に過ごしたくて、こうしてココ様が来るのを待っているんです。


「シエルさん、ココです」

「あ、どうぞ~」


 バルコニーにいても聞こえるくらいの大きなノック音と共に、ココ様が部屋に入ってきました。その隣には、何故かジーク様とクリス様の姿もあります。


「あれ、どうしてお二人が?」

「私が誘ったんです。今日が最後の夜なんで、揃ってお話したいなーって」

「そういうわけさ。シエルさえよければだけどね」

「もちろん大歓迎です!」

「それはよかったです! ふふっ、ジーク様も良かったですね」

「余計なお世話だ」


 少し頬を赤らめながらそっぽを向くジーク様の姿が可愛くて、私達は思わずクスクスと笑ってしまいました。


 ちなみにですが、私達が結ばれた事は皆様にしっかり伝えてあります。ベルモンド家の方々とは、これからも長いお付き合いになるでしょうし、ココ様も巡礼の時に散々お世話になったので、知らせる必要があると思ったんです。


「ふぅ、なんだか色々あったから、こうしてゆっくりするのが久しく感じられるよ」

「生徒会の方々、凄く忙しそうでしたね。これからは落ち着くんですか?」

「一応はその予定だね。しばらくは大きな行事は無いしね」


 それを聞いてほっとしました。クリス様、交流祭の準備をしている時、凄く忙しそうなのが見てわかってましたし、あんな戦いまでしたんですから……しばらく休んでいてほしいです。


「その、今回の交流祭……私がもう少しうまく立ち回れていれば……」

「気にするな。親を人質に取られていたら、誰でも言う事を聞くしかない」

「でも……」

「仮に君に責任があると感じていたら、そもそも屋敷に匿うような事をすると思うかい?」

「……ベルモンド家の寛大な心に感謝します」


 ……ど、どうしましょう。なんだか凄くしんみりした空気になってしまいました。こういう時は……明るい話題を振ればいいですよね!


 でも……明るい話題って何を話せばいいんでしょう……? うぅ、こんな所で話術の低さを痛感するなんて……!


「そういえば……シエル、ジーク。少々気になっていたんだが」

「は、はい?」

「なんだ?」

「あれから何か進展はあったのかい?」

「ぶふっ!?」


 ゆったりと紅茶を飲んでいた私は、盛大に噴き出してしまいました。は、恥ずかしすぎて死んじゃいそう……こんな姿をジーク様に見られちゃうなんて……! もう、クリス様ってばー!


「進展と言われてもな……一緒に住んでるんだから、兄上も知っているだろう」

「いや、常に監視しているわけじゃないんだからわからないよ。私の見えないところで、密会をしているかもしれない」

「密会!? いつの間にシエルさんってば大胆に! どんな内容か聞かせてください!」

「し、してませんから!」


 さっきまでの沈んでいた様子から一転して、凄く興奮気味に話すココ様は、身を乗り出して聞いてきました。


 た、確かに話題があればって思ってはいましたが……これはこれで困ります!


「別にコソコソする必要は無いだろう?」

「ジーク、もし君がシエルと抱き合ったり、その先をする時に……堂々と誰かに報告してからするのかい?」

「……しないな」

「そういう事さ」

「なるほど。それなら、事前報告が必要無いという事なら、事後報告もいらないだろう」

「おっと、これは一本取られたかな? あは

は」


 おだやかなクリス様と、冷静な返しをしつつも楽しそうなジーク様の姿は、見ていて安心感を覚えます。本当にあの戦いから帰ってきてくれた事が……嬉しいです。


「ちょっとくらい教えてくれてもいいじゃないですか! ほら、一応私はアドバイスをしたっていう立役者ですし!」

「あ、あれ……あんまり役に立たなかったような……むしろ恥ずかしかっただけかもしれません……」

「細かい事は言いっこなしです! それで、どこまでいったんですか!?」


 ……もしかして、ココ様って実はこういう恋愛話が好きなのでしょうか? かなり長い間一緒に旅をしてましたが、新しい発見です。


「もしかして、チューとかしたんですか!?」

「ふぇ!? ちゅちゅちゅ……チューって……!?」


 あ、あの時はムードと勢いでしちゃいましたけど……今思い出しても、恥ずかしさで爆発しそうなんですから、思い出させないでください!


 ……あ、嫌だったわけじゃないですよ? むしろ幸せ過ぎて、天に上る気分でした。ただ、思い出すと恥ずかしいだけです。


「どうなんだ? ジーク」

「こ、答える義務は無い」


 あくまで冷静を装うジーク様ですが、手に持っているコップが少々震えていますし、ほっぺも赤くなってます。


 もしかして、ジーク様もあの時の事を思い出して、恥ずかしくなってるんでしょうか? やっぱりジーク様……可愛い……! カッコいいジーク様も大好きですが、可愛いジーク様も大好きです!


「ふふっ、あんまりからかうとジークが怒ってしまうから、この辺にしておこうか」

「それは残念です……またお会いした時に、たっぷり聞かせてもらいます!」

「ココ、お前はもう屋敷の敷居を跨がせないから安心しろ」

「えーっ!?」

「冗談だ」

「もう、ジーク様ったら……あれ?」


 軽口を叩き合いながら笑っていると、なにやら下の方が賑やかな声が聞こえてきました。いや、賑やかというより……変に騒がしいの方が的確でしょうか?


 何かあったのでしょうか? そんな事を思っていると、部屋の扉が勢いよく開きました。


「お、お話中……失礼します……」

「おや、どうかしたのか――その傷は!?」


 乱暴に開かれた扉の向こうには、一人の使用人の方が立っていました。そして……その方は、胸から沢山の血が流れていました。

ここまで読んでいただきありがとうございました。


少しでも面白い!と思っていただけましたら、モチベーションに繋がりますので、ぜひ評価、ブクマ、レビューよろしくお願いします。


ブックマークは下側の【ブックマークに追加】から、評価はこのページの下側にある【★★★★★】から出来ますのでよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ