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第五十二話 告白

「えっと……シエル?」


 とんでもない爆弾発言の後だというのに、ジーク様は至って冷静に見えます。一方の私は、体中を真っ赤にさせて、アワアワしていました。


 だ、だって……私、今……好きって……ジーク様の前で好きって言っちゃって……! 確かに私の正直な気持ちですが、でも……今言うつもりは……!


「す、すみません! 今のは忘れてください!」

「忘れなくてはいけないのか?」

「そ……それはどういう……?」

「俺は忘れたくない」


 くっついたまま、私の顔をジッと見つめるジーク様のお考えが、私にはよくわかりません。忘れたくないって……?


「ひょっとして、今のも誰かに唆されたのか?」

「ち、違います! あのその、あうぅぅぅぅぅ……」

「落ち着け。大丈夫、ここにはお前が間違っていても、笑う奴も怒る奴もいない。だから落ち着け……深呼吸だ」

「すー……はー……」


 ジーク様の言う通りに深呼吸をしたら、だいぶ緊張がほぐれたような……気がします、はい。


「あのですね、今の言葉はわたしの本当の気持ちなんです……ご迷惑ですよね! やっぱり忘れてください!」

「俺は忘れない。これから先、死んだ後も忘れない」

「重すぎますよ!? そんな覚えておくようなものじゃないですから!」

「大切に決まっているだろ。好きな女から告白されたのだから」


 うんうん、そうですよね。好きな人にそんな事を言われたら嬉しいですよね。私だって、ジーク様にそんな事を言われたら、嬉しくて卒倒するでしょう。


 ……ちょっとまって。今のって、私の好きに対しての回答ですよね? え、ええ?


「はうぅ……」


 互いに顔を真っ赤にしながらも、一切離れる事なく、その場で唸る事しか出来ませんでした。


 ここで私がするべき事って……? 告白? 言い訳? 逃走? ああもう、全然わかりません! お母さーん! ココ様ー! 助けてくださいー! 私は今……ある意味人生で一番のピンチなんですー!!


 って、一人で騒いでても仕方ないです。変な結論を出されてしまう前に、私から話さないと。


「あの……」

「なあ……」

「あ、ジーク様からどうぞ」

「シエルからでいい」


 お互いに譲り合いの精神を見せ続けた結果、先に折れたジーク様は、呆れたような笑い声を漏らしていた。


「全く……俺の話だが、俺はお前に好意を持たれたのは、素直に嬉しい」

「え……どうしてですか?」

「そこは察してほしかったが……単刀直入に言う。俺は……その、なんだ……俺は……お前が好きだ」


 え、私の聞き間違えでしょうか? 今確かに好きって……わかりました! これは夢ですね! それならほっぺをつねれば……。


「い、いひゃい……」

「お前はこの大事な時に何をしてるんだ……」

「ゆ、夢かどうかの確認をしてました……あ、今度こそわかりました! 友人的な意味で好きなんですよね!?」

「違う。異性的な意味での好きだ。結婚もしたいと思っている」

「うぇぇぇぇぇぇぇ!?!?」


 明らかに奇声と言われてもおかしくないような、変な声を出してしまいました。だって、それくらいビックリしてしまったんです! やっぱり夢なんじゃないでしょうか……?


「唐突で驚いただろうが……俺は巡礼の時にお前を見た時、長旅でボロボロの体で走り回り、母上の治療をしてくれた。その時のひた向きさや慈悲深さ、そして治った母上を見た時の、お前の笑顔で完全に俺は虜にされた」

「あ、ちょ……」

「巡礼を止める事は出来ない。だからお前に言葉を残して見送った。まさかこんな形で屋敷に来て、一緒に住むようになったのは想定外だったが」


 私も……あの巡礼の時に会って、優しくて素敵な人だって思って……私の知らない心の奥底で、ジーク様の事を好きになっていました。きっかけや自覚の仕方は違いますが、好きになった事に違いはありません。


 ああもう、どうしましょう……嬉しすぎて、体が熱くて仕方がありません。汗も凄いですし……これで汗が臭って嫌われたら、一生引きずりそうです。


「俺は……シエルを心から愛している。これから先、永遠に平穏とは言えないだろう。それでも、それ以上に楽しい事や、嬉しい事……幸せな事が待っている。俺は……それをシエルと分かち合いたい。ずっと苦労をしてきたシエルに、幸せだって笑ってもらいたい。だから……その……」


 ジーク様は言葉を詰まらせると、真っ赤になった顔を私から逸らしました。でも……すぐに真っ直ぐと、その凛々しくて綺麗な顔を私に向けてくれました。


「俺と結婚して、暖かな家庭を一緒に作ろう、シエル」


 それは飾り気のない……でも、この世で一番心がこもった言葉でした。その言葉が嬉しくて、胸が幸せで一杯になって……それが涙という形になって、私の目から零れ落ちました。


「私は回復魔法しか才能がない女です。髪色も真っ白で変で、天涯孤独で、生まれた場所は劣悪なスラム……ジーク様にふさわしいとは言えません。それでも……私を愛してくれますか?」

「ああ」

「嬉しい……はい、不束者ですが、末永くよろしくお願い致します……!」


 私はジーク様の手を取り、大きく頷いて見せました。すると、ジーク様も嬉しそうに微笑んでくれました。


 互いの気持ちがわかったからでしょうか。胸の奥から溢れ出る、好きって気持ちが抑えきれません。でも、せっかく結ばれたのに変な事をして嫌われたくありません……。


 そう思っていたら、私の気持ちを汲み取ってくれたかのように、ジーク様は少しだけ屈むと、そのまま私の顔に自分の顔を近づけて……。


 ……目の前まで来て止まりました。


「……え、えっと……ジーク様?」

「……すまない、こういう事は得意じゃなくてな……失敗したらと思うと……」


 人付き合いはあまり得意じゃないのは知ってましたが……恋愛事も苦手だったんですね。思い返すと、時々私の前で照れてるような素振りもありました。でも、結構大胆な事を涼しい顔でやっていた事もあります。


 ジーク様の基準はよくわかりませんが……なんにせよ、ジーク様にも可愛い一面があるって事ですね。えへへ、私しか知らないジーク様の秘密ですね。


「大丈夫ですよ、ジーク様。私達にはこれからがあります。だから、焦る必要はありません。それに、失敗したからって、嫌いになったりもしません」

「シエル……」

「私なんて、失敗ばっかりでご迷惑をおかけしてばかり……むしろ、嫌われるのは私の方です」

「そんな事は無い」

「なら……お互いゆっくり進みましょう……ね?」

「……ああ、そうだな」


 互いに安心し合った私達は、目と鼻の先で笑い合いながら、どちらからともなく顔を近づけて……そのまま口づけを交わしました――

ここまで読んでいただきありがとうございました。


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