表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/58

第四十七話 宿敵との決戦

■ジーク視点■


「よく来たなてめえら。逃げないで来た事は褒めてやるぜ」


 大歓声に包まれる中、俺と兄上の前に立ったアンドレは、ニヤニヤと不敵な笑みを浮かべていた。その隣には、浮かない顔のココも立っている。


 さっきはあんなに荒れていたというのに、随分と立ち直りが早い男だ。馬鹿だから、その辺も単純なのだろうな。


「こちらこそ感謝していますよ。このような決着の舞台を共に作れた事に」

「俺達の恩人を……大切な人を傷つけ、愚弄した罪は重い。覚悟しろ」


 試合の開始の合図もされていないのに、自分の胸の内から燃え上がる怒りを抑えきれなかった俺は、愛用している剣を鞘から抜いた。


 それに釣られるように、兄上は杖を、アンドレは大剣を、ココは長い杖を取り出した。


 獲物を見た感じでは、アンドレがガンガン前に出て、それをココがサポートする形とみて間違いないだろう。俺達のやり方に似ている。


「さあ会場の盛り上がりも最高潮だ! そんな中、最後に行われるのはこのエキシビション! 選手の紹介と行くぞー! ジェニエス学園が誇る最強兄弟! 『賢者』と呼ばれる兄、クリス・ベルモンド! そのパートナーを務めるのが、『剣聖』と呼ばれし弟、ジーク・ベルモンドだぁぁぁぁ!!」


 何とも恥ずかしい名称で呼ばれて頭を抱えていると、観客達から大歓声が沸き起こった。


 なんでこれを喜ぶのかがわからない……誰が聞いても痛い名前だろう。人前で俺は『剣聖』だ……なんて言ったら、気持ち悪がられるに違いない。


「対するゲール学園からは、王族の歴史で歴代最強と謡われるこの方! 最近は生徒会長となった、アンドレ・プロスペリア! パートナーを務めるのが、なんとまだ我々の記憶に新しい、巡礼のお供として過酷な旅を超えた女性! ココ・リシャ―ルです!」


 こいつの紹介など、歓声など上がるわけが……と思っていたが、俺達の時と比べても遜色がない歓声だ。


 そういえば、こいつは外面だけは良かったんだったな……すっかり忘れていた。まあいい。この公共の場で、その化けの皮を剥がしてやる。


「では……エキシビションマッチを開催させていただきます! では……試合開始ぃぃぃぃぃ!!」

「はぁぁぁぁぁ!!」

「死にさらせゴラァァァァァ!!」


 開始の合図と共に、近接組の俺とアンドレが、雄たけびを上げながら突っ込むと、互いの剣を思い切りぶつけた。


 それだけに終わるはずもなく、俺達はさらに攻撃を繰り返す。俺が剣を振り下ろせば、アンドレが受け止めてから受け流し、その隙をつくようにアンドレが剣で刺そうとするが、俺は受け流された剣を持ち直し、すぐに剣で攻撃を防いだ。


「なんだ……この程度かぁ? そんなクソみたいな剣で、シエルを守れると本気で思ってんのか? 見た目に似合わず、頭ん中花畑かよバーカ!」

「雑魚が吠えるな。耳障りだ」

「んだと……!?」

「む……!?」


 くだらない言い合いをしている間に、地を這う蛇のような形をした、真っ赤な炎が俺達に向かって這ってきた。


 こんな生き物はこの世にいない。ということは、ココの魔法の一つか。炎の魔法……兄上に相性が悪いのが気にかかる。


 いや、今はそれよりもあの蛇から逃げるのを優先しよう。斬っても良いんだが、もし爆発でもされたら致命傷だ。


「おっと、何逃げてるんですかぁ~!? 次男ぼ~う!!」


 心底俺を馬鹿にするような言い方をするアンドレは、なんと剣先に先程の炎の蛇を乗せ、俺へと投げつけてきた。


 このままでは当たる――そう思った矢先、俺の前に氷柱が出現し、炎の蛇から守ってくれた。


「一瞬で蒸発までさせるとは……良い火力だ。さすがココ殿」

「すまない、面倒をかけた」

「気にするな、と言いたいが……少し冷静になれ。奴がココ殿を使ってるのを含め、奴は我々の気持ちを乱したいようだ。焦らせれば戦術もブレるし、我々が落ち込むのを見たいという魂胆が見え見えだ」


 まあそんなところだろうな。根性がねじ曲がっているあいつなら、全然あり得そうな事だ。


「なにしてんだバカ! あれをちゃんと決めないでどうするんだ無能が!」

「す、すみません……次こそ決めますので……!」


 ココは大きな杖の下の部分を地面に突き刺すと、そのまま詠唱を始めた。


 魔法の威力は詠唱の時間や、魔法陣の数で大体の予想が出来る。あの詠唱の長さに、魔法陣の数は五個……それも全部炎の魔法陣。詠唱も長い所を見るに……デカいのが来る!


「これはしっかり対処しよう。叩きにいけるかい?」

「もちろんだ」

「よし。ここは我が領域……絶対零度と化する!!」


 兄上が短い詠唱を終えると、地面が一瞬に凍りついた。この氷を使って相手の機動力と集中力を奪い、こちらは機動力を得る。昔から、足元が凍った時の戦闘は訓練してるからな。


「全て……斬る!」


 俺は器用に氷の上を滑り、アンドレ達の元へと接近する。向こうは凍った足場のせいで上手く動けていないようだから、かなり俺の方が有利と言える。


「貰った!」


 反撃は飛んでこないと踏んだ俺は、躊躇なくアンドレに斬りかかる――が、硬いなにかによって阻まれていた。


 これは……身を守る障壁か。アンドレの前で杖を構えているココの姿を見た感じ、こいつの魔法か……元々シエルを守る為に一緒に行動していたのだから、防御魔法を持ってても不思議ではないな。


 それにしても、別の魔法を詠唱していたのに、咄嗟に防御魔法を使えるだなんて、ココは想像以上にやり手だな。


「勝ったと思ったか? 甘いんだよ雑魚が!」

「ふん……味方に守る事しか出来ない分際で、よく吠えられたものだな」

「相変わらずおもしれえ事を言うじゃねえか。それならこの壁を破ってみせろや!」

「上等だ……!!」


 挑発に乗ったと思われるのも癪だが、ここで引いたら負けだ。そう思い、俺は一心不乱に剣を振って障壁を破壊しようとするが、一向に壊せる気配がない。


 くそっ、さっさとこの外道に一太刀を浴びせたいのに、想像以上にココの魔法が厄介すぎる。


「おいその程度か? さっきの威勢はどこに行ったんだ!?」

「くっ……まだだ!!」


 ココの後ろで嫌らしく笑うアンドレに怒りを覚えながら、何度も何度も剣を振るうが、それでも障壁にヒビ一つ入る事は無かった……。


「はははは!! なんだったか? 俺に吠えるだとかなんとか言っていたが、てめえの方が負け犬じゃねえか! まあ、あんな根暗で気持ちの悪い女に忠誠を誓う駄犬なら、それも仕方なしってか!」

「この期に及んで、まだシエルの事を愚弄するか!?」


 障壁の向こうで笑うアンドレに一太刀浴びせる為に、俺は剣を振る。振る。振る。それでも、やはり俺の剣では障壁を破る事が出来なかった。


「てめえ、弱すぎんだろ。所詮は魔法の才能の無い雑魚って事か?」

「っ……!」

「こいつ、中々使えるだろう? 伊達に巡礼でシエルを守ってきただけある。今やその力は、国の宝であるオレ様を守る為に存在している。回復しか能がないてめえの飼い主とは大違いだろう?」


 くそっ……俺にもっと力があれば……こんな障壁なんて一撃で破壊できる魔法の才能があれば……! 所詮魔法の才能がない人間が、努力だけで勝とうなんておこがましかったというのか?


 ……冗談じゃない。俺はベルモンド家を守る為、兄上の隣に立つため……そして、シエルを守る為に剣の腕を磨いてきたんだ。こんな所で……折れてたまるか!


「おーおー、思ったより頑張るじゃねえか。だが……これで終わりだ!」

「なっ……!?」


 俺の目の前でスッと手を上げたアンドレ。それと同時に、俺の周りには、無数の風の刃がフワフワと浮かび……俺に向かって飛んできた。

ここまで読んでいただきありがとうございました。


少しでも面白い!と思っていただけましたら、モチベーションに繋がりますので、ぜひ評価、ブクマ、レビューよろしくお願いします。


ブックマークは下側の【ブックマークに追加】から、評価はこのページの下側にある【★★★★★】から出来ますのでよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ